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カフェオレ  作者: ヤマト〆
第2章 共に
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花園は

最初の攻撃は黒魔女初号の攻撃だ。以下は原本が初号、右が一号、左が二号と略す。


初号の攻撃は単調で、ステラ目掛けて突進してくるのみだ。


これなら避けれるとタカを括ったステラだったが、完全にそれが罠だった。


「きゃ!!」


ステラが跳んで避けたその先に、一号が待ち構えていた。その後ろには二号が待ち構えており、ステラは挟み撃ちにされたのだ。


ステラは一号二号に舐められるように回りを旋回され、挙句、その黒い筒に絡み取られるように縛り上げられてしまった。


「う…!!」


黒い筒で締め上げられた体は、苦痛と閉塞感で満たされる。気を抜くと気絶してしまいそうだ。


「サァテイタダクゾ」


初号が若干言葉をうわずらせながら、舌で唇を舐め回す。その顔に、感情は見えてこない。


(死ぬ…のかな…)


ステラは迫り来る死に対して、泣き喚くことはしたくない。一度は死ぬと決めてしまった身だ。


ここで泣き叫んで命乞いは格好悪いにも程がある。


「…ほうよ」


「__!?」


また、何処からか声が聞こえた。薄れゆく意識で周りを見渡しても、何も見つけられない。


「魔法を放ちなさい」


「__!!」


今度はハッキリと聞こえた。そして、否応無しにステラは魔法を唱えようとした。


「__爆発…しろ!!」


手に力を込めて、ステラは途切れ途切れに叫んだ。


「ナニヲ…?」


その直後、ステラの手から熱い何かを感じた。だが、感じたのも束の間、それは激しい爆発を起こし、黒い筒を木っ端微塵に破壊した。


「きゃあ!!!」


爆発の衝撃と地面に強く叩きつけられた衝撃の二つに襲われ、ステラは地面にうつ伏せになりながら咳込んだ。


出来た。魔法という物を始めて使った。


無論、それは記憶を無くした後の話で、記憶を無くす前は使っていたのかもしれないが、それは置いておく。


「オ、オノレ…」


花と上半身を繋ぐ黒い筒を破壊され、黒魔女は動けなくなっていた。


「これで…終わりよ」


もう一度先程の力を込めて、今度は黒魔女の眼の前で、それを爆発させた。


先程よりも小規模であったが、そこには黒い灰しか残っておらず、それもフワリとした風に乗って消えていった。


「はぁ…はぁぁぁぁ〜」


途端に、体の力が全部抜けた。


倒したのだ、ステラはあの変な怪物を。人間ざる何かを。


これにすっかり安堵して、ステラはその場に座り込んだ。こんなにも全身の力が抜けるのは初めてだ。


ステラはそこで暫くボーッとした後、この花園を歩くことにした。


まだ、ステラは入って直ぐの所しか見ていない。それに、後ろの扉は未だ閉まりっぱなしだ。


前に進むしか策はない。


ステラが一歩一歩前へ踏み出していると、何やら異変を感じた。


「はぁ…はぁ…身体が重い…」


先程からヤケに体が重く感じる。何が原因なのだろうかと思考していると、直ぐに答えは出た。


魔法を使ったから、これしかない。


魔力を使うのがこんなにも力を使うなんて思ってもみなかったと、ステラは思う。


どうか、これは初回だったからこんなに体が重いのだと教えて欲しい。


これがもし普通だとしたなら、世の魔法使いは相当身体が強く出来てるに違いない。


そんな事を考えた後__視界が揺らいだ。


「え…!?」


ステラは立てなくなるほどの歪みを感じて、その場に一度立ち止まった。何かが変だ。


最初、体に来ていた疲労が頭に行き、視界を揺らがせたのかと思ったが、それは間違いだった。


ステラの視界を揺らがせた原因は、地面にある。


「な…!!」


ステラの足元から急に隆起してくる地面は、まるで生物かのように動いている。


ステラは慌ててそこから移動すると、その隆起はどんどん高くなり、次第に近くの薔薇を巻き込み、更に更に大きくなっていった。


「まさか…これ全部が黒魔女なの!?」


近くにある薔薇を巻き込みながらどんどん肥大化してくるそれは、明らかに自然的になるものではない。


どう考えてもこれは、人工的な事柄によって引き起こされてる超常現象だ。


どんどん肥大化していくそれは、やがて人の形を成していった。


だが、その体躯はまるで影のように黒く、髪すらも黒く染め上げられていた。


これを一言で言うならば、亜人と言うべきだろう。顔も黒で覆われてはいるが、凹みによって顔のパーツの部分が薄っすら分かるようにはなっている。


「アァアアア!!」


声にすらならない叫びが一つ放たれ、それは一歩一歩歩き出す。


歩き出すとは言え、地面から離れてる訳ではなく、くっ付いたまま滑ると言った表現の方が正しいのかもしれない。


ステラは自分の五倍はあるであろう大きな体躯を見て、硬直した。


何をすれば良いのか、何をしなければならないのか、逃げればいいのか、戦えばいいのか。


思考が動いてるようで停止しているような感覚に陥り、ステラは頭が真っ白になった。


「たす…けて…」


思わず溢れたその吐息のような声に、誰かの反応はない。


その間にも、黒魔女は近づいてくる。しかと拳を握りしめながら。


「たすけて…」


鼓動が速くなる。もう、黒魔女は目の前だ。


手が振りかざされた。


「たすけて…!アレン!」


搾り取るように叫んだその声と同時に、無残にもその拳は振り下ろされる。


「____」


短いようで長い沈黙が続き、ステラはふと目を開けた。


目の前にいるのは、白く大きな翼が生えた黒髪の青年だった。この姿は、以前に見たことがある。


思わずステラは涙を溢した。


「アレン…!?アレンなの!?」


目の前にいるのはアレンで間違いない。それ以外の何物でもない。


「おう!ステラ!危なかったな!」


此方にくるりと首を向かせ、アレンは笑った。その手には、刀が握られている。そしてその近くに真っ黒い何かが落ちていた。


「オ…オオオォ!!!!!」


その叫びで、黒魔女の方を見ると、片方の腕が、半分から下が根こそぎ切断されていた。


「大丈夫かステラ!?体がボロボロだぞ!?」


「あ、うん大丈夫。自爆みたいなものだし…それよりどうしてここに…?」


「あ、あぁ。ちょっと色々な」


アレンは苦笑いして、斜め上に視線を向けた。


ステラもそれに乗じてその方角を向くと、そこには箒に跨った誰かがそこにいた。


きっとあの人に連れてきて貰ったのだろうが、どういう風な経緯でこうなったのか理解ができない。


「つーかそれよりあれなんだよ!?人間…な訳ねーだろうけど」


「多分、元人間だよ。正確にいうと、重罪を犯した魔女の行く末って感じかな」


その言葉に、アレンはあまり驚かなかった。逆に冷静になり、落ち着いたように見えた。


それがどうしてなのか、ステラは何故か聞けなかった。


「そうか…そういうことか。よーく分かった。反吐がでるなおい」


「一体どういう…」


「ステラ__あれはお前の母親だ」


嫌な風が吹いた。そして、嫌な汗が滲んでくる。この汗は、何の汗なのかステラ自身分からない。


聞きたいようで、聞きたくなかった。そんな言葉がいきなりステラに舞い降りたのだ。


「混乱するよなそりゃあ。だから俺が、取り戻してやるよ」


「え…?」


ステラが困惑している最中、アレンは刀を鞘に収め、無手となった。


「一体何をするの…?」


「まあ見てなって」


アレンはそう言って、一つ呟いた。


「来い、白弓(しらゆみ)


刹那__光と共にアレンの手に握られたのは、真っ白い弓だ。汚れ一つないそれは、白なのに輝きを放つ黄金のようにも見える。


「これって__」


「ヤァァァア!!!」


疑問を引き裂かれ、大人しかった黒魔女がまたもや暴れだした。


「ステラはそこで見てろ」


「え…でも…」


「必ず、ステラの母親は救ってみせるから」


「__うん。分かった」


言い返せない。だってアレンはそれを信じて疑わない、そんな瞳をしているから。


全部任せろと訴えかけてくるならば、全部投げ出す勇気が必要になる。


これはそう、信頼だ。


あの日を境に、ステラは彼を信じると決めていた。今がその時だ。


「任せたよ」


「あぁ」


一言頷いて、彼は宙を舞った。


その姿はまるで天からの遣いのようで、眩しく、彼女の瞳に焼き付くのだった。





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