最強の男
「そうか流石は昭和切っての侠客。不死身じゃのう」
「これで葛城の屋台骨も安泰じゃの」
「とにかく良かった」
同時に溢れ出す安堵の言葉。
「まったく文ちゃんは冷や冷やさせるのう」
「そうかそうか、文左衛門さえ息災なら貴神会から葛城の除名は有り得ぬ話じゃて」
旧友の帰還を心から喜ぶ会長と仙波。
『くそっ、あの死にぞこないが』ムカつき加減に歯を噛み締める佐渡。
「仙波この際だ。葛城の倅、卒業したら赤城の下で育てて見んか?」
不意に訊ねる会長。
因みに赤城は仙波組の若頭だ。葛城誠を赤城の配下に置くと言うことは、葛城組と仙波組が葛城誠の身柄を引き受けると言うこと。
そうなれば佐渡が葛城を追い込むのは容易ではなくなる。
「ワシは良いが、どうする京介?」
問い掛ける仙波。
赤城は黙ったままだった。その視線はただ真っ直ぐに佐渡を捕らえている。
「構いませんぜオヤジ。あのガキ、いっぱしの極道に育てて見せますよ」
そして不敵に笑った。
グッと睨みを利かす佐渡。『クソガキが、今回は仕方ねーが、いつかその覚めたツラ恐怖に歪ませてやるけぇな』その胸中、新たなる憎悪が渦巻いていた__
様々な思想、思惑、憎悪を内に秘める佐渡と赤城。
「……ワシじゃ。ヘヴンの件、どうなっとる?」
『ヘヴン? ……セブンス・ヘヴンなら兵藤雅也を介して着々と』
「早くことを進めるんじゃ」
『ですがあの男、マジで信頼出来るんすか? ヘヴンの能力も未知数、そんなモノがシノギになるとは……』
「構わん。間違いじゃったら赤城に押し付ければいい。ワシは痛くないけんのう」
この二人を中心に、街を壊滅まで追い込む争いが繰り広げられるのはまた別の話だ__
同日夕刻~市内ベイエリア高級マンション__
夕焼けで赤く染まる街並み。ルカを乗せた高級車がマンションの地下駐車場入り口に現れた。
「坊ちゃん。道の真ん中に人が立っておられますが」
榊枝が戸惑うように言い放った。
「そうか。……榊枝今日はここで良い。ご苦労だったな」
覚めたように投げ掛け、ルカが車から降り立った。
「なんの用だ? 俺様は忙しいのだがな」
そして言い放った。
その目の前に立ち尽くすは葛城。煙草をくわえて真っ直ぐにルカを睨んでいる。
「てめぇと話すのは初めてだったな」
葛城が振った。
「それがどうした? 悪いが俺様は貴様などと対等に話す気はないんでな」
ルカは葛城の姿さえ見ることはなかった。眼中にないように視線を落としている。
「呆れた奴だな。恐ろしい程のプライドを持ってやがる」
そして二人黙り込む。
「琴音の件で来てやった」
不意に言い放つ葛城。
「そうか。……だが礼を言いに来た訳ではなさそうだ」
見透かすように答えるルカ。
「まあな。何故か知らんが貴様はムカつく。その首、取りに赴いたってことよ」
「フッ、訳の判らぬ男だ。シュウのクソには怒りが込み上げんで、この俺様には怒りが込み上げるのか」
「問答無用だ。てめぇが言い出した学園対抗野球大会、始めようぜ」
ルカの言葉を無視するように、グルグルと包帯が巻かれた拳をかざす葛城。
「ハッハハハ! 潰した拳で更に気を吐くとは大した男!」
腹を抱え腰を曲げて失笑するルカ。
やがてその行為を止めると、視線を向け直す。
「面白い、その勝負、受けてやろうじゃないか」
その瞳が葛城の姿を捉えた__
オーク四天王・葛城誠。熱い青春は始まったばかりだ__
愛と修羅な人生外伝~修羅の荒野~
吉沢蒼汰&葛城誠 編
終わり
最終章(暴走族初代総長 夏樹大和編)はエブリスタで公開中です。




