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恭弥様の春2

 私の名前は保月瀞。

今日も今日とて恭弥様の恋するお相手を……と言いたいところですが、今はまだ中等部の身。まだ情報収集の段階でございます。

 しかし、なんと先日恭弥様に初めてのお相手ができたということで、舞い上がって……いないなぁ。ここで恭弥様の好みを押さえるべきなのでしょうか。


 明智詠美さま。


 黒髪ストレートを腰まで伸ばし、中等部の校則である「長い髪は括ること」をきっちり守り、目鼻立ちははっきりと整い、立ち振舞いはしゃんとしてらっしゃる……つまりは真面目なお嬢様といったところでしょうか。

ちなみに髪を結ぶ校則は中等部までで、高等部は自由です。つまりは、自己責任で身だしなみを整える年齢ですよってことですね。その辺は内部生わかっております。

 高等部に入ったら、髪を染めるのも解禁になるのです。パーマは一律オーケーですよ。

その代わり、中等部まではしっかり身だしなみのチェックが入ります。

パーマがとれかかってたり、セットが崩れてたりすると「それでも天翔の生徒かみっともない」と言われます。

 ええ。私は中等部に入ってから今まで「女子たるものが男子の制服を着て男子と変わらぬ髪型をするのはなんたることか」と言われ続けております。

事実その通りですので、恭弥様と毎度ありがたく拝聴しております。直す気はさらさらございませんが。恭弥様にいたっては「家の権力で女子に男装させてどうする」と言われておりますがちゃんとお聞きいただいてるようです。


 ただし、直す気はありませんが。


 その注意が気に入らなかったのは、恭弥様の周りの方々でした。学校側が許可したのだから男装でもいいだろうといい、それをたしなめられたのが明智さまでございました。


「なぜ先生方が責められる必要があって?保月さんが男装しているのは事実で、それを相澤くんのお家がそれを強行させたというのも周知の事実であったと思うのだけど。そもそも、相澤くんも保月さんも言われるのが当然と甘んじて受けてらっしゃるのだから私たちが言うことではないでしょう」


 ハッキリと物怖じしない明智さまに好感を抱きました。確かに、このかたでしたら親衛隊の隊長していただいたらいいなとか思ってました。


が。


まさか、明智様が恭弥様のお相手になるとは思いもよりませんでした。しかし、よく考えたら明智様のご実家は旧華族という由緒正しいお家柄。内面も誠実で上品な方でございますし、これは逃してはならないお相手なのかもしれません。

この保月瀞。恭弥様のために今日も今日とて恋のお相手を探しましょう。



※※※※



本日は土曜日。

恭弥様と明智様の記念すべきデート1日目でございます。

一番最初から水族館を選ぶとか恭弥様張り切りすぎです。ハードル高すぎです。その後どうなさるおつもりですか。最初はちょっとした買い物から初めて距離を縮めるのがベストじゃないでしょうか。やはり、デートスケジュールを聞いておいてダメ出ししておくべきでした。

明智様は、恭弥様と腕を軽く組んで微笑みながらイルカの水槽をご覧になっていました。

白を基調に小さい花柄の可愛らしいワンピースに黄色のカーディガン、薄いベージュの小さな肩掛けバッグ。とても女の子らしくて可愛らしい。髪は下ろして両サイドの髪を編み込み、後ろで一つに結んでいらっしゃいます。学校とはまた違う雰囲気で愛らしいことでございます。当然、そこら辺のショップで購入した服ではありません、念の為。

対する恭弥様は本日も麗しい。……とだけ申し上げておきましょう、恭弥様のために。

恭弥様、よかったでしょう?最初に着てこられたジャケットパンツにしなくて。ネクタイまで締めてこられたときには、今日はなにかのパーティかと思いましたよ。

さらっと服を変えさせていただいた時のあのキョトンとした表情はこの保月、心のアルバムに保存させていただきました。ええ。黒いアルバムに保存にならなくて本当にようございました。デートはパーティじゃありません。断じてありません。


私は、お二人から少しだけ距離を置いてお二人を観察しつつちらちらと魚が泳いでいるのを見る。が。ぶっちゃけた話しをすると、水族館に興味はありません。お優しいお二人は、私の方を向いて可愛いね、と気を遣ってくださるのでええ、と返事をしますが、正直なところお二人の方が見応えがあってほとんど魚なんて見ていません。

というか、前世で何度も水族館に連れて行かれた(行った、ではない。連れて行かれたである)私は、珍しくともなんともないのでどうでもいいのです。

可愛くなくて結構。可愛いのは明智様みたいな方でよろしいのです。


「保月さん、ご覧になって!クラゲよクラゲ。綺麗ですわね」


気がつけば、明智様が振り返って私を呼んでいらっしゃいました。……やはり、外で待つべきでしたか。気を遣っていらっしゃる。

恭弥様もこっちを振り返ってニコニコ微笑んでいらっしゃいました。


「明智様はクラゲがお好きですか?」

「水槽越しでなければ嫌いよ」


確かにこんなものがうようよ浮いていたら私も嫌だ。綺麗とか思うまでもなく嫌だ。


「ふむ、それはそうですね。私も水槽ごしでないと難しいですね」

「よく言うよ、去年、海水浴に行った時クラゲ持って麻人追いかけてたじゃないか」


溜息とともに恭弥様に言われて、そういえばそんなことがあったかなと思い直しました。

あの時も父に拳骨で殴られましたね。たしかにそんなことがありました。

ですが、恭弥様?そんなことを明智様の前で言わないでください。


「保月さんって本当に凛々しいのね」

「明智さん、そういう時はお転婆って言うんだよ。褒めたらダメ」


まあ。とコロコロ笑う明智様は本当に可愛らしい。そう思うと、この出歯亀デートも来て良かったのかなと思う1日でございました。


ただ次の学校の日、明智様から「楽しくなかったかしら?」と悲しそうに言われた時は、何が悲しくて人のデートについていかないといけないんだ!って思いましたが。

考えてみれば役得なんですよね。恭弥様の笑顔が3割り増しで見れましたから。

……それはそれで癪ですね。


それでも明智様とのお付き合い。原作と違って続いてくれれば、と思ったのは事実でございました。

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