第39話 大魔道士リッキーリードの帰還
リード・ブラッドフィールド。
リリアンは俺の娘だ。
正確には俺の養子だ。
今の彼女は俺の知っているリリアンのイメージとは随分と違う。
俺の記憶にある彼女はまだ幼い少女であった。
しかし、今の彼女は完全な大人の女になっていた
(身長も俺より20センチは高い…)。
まあ200年も経過しているのだから成長するのは当然だろう。
普通の人間なら既に墓の中で骨になっているぐらいの年月が経過しているのだから。
再開した中で変わってないのはアドリアーノぐらいだな…。
彼女は元々、魔族と人族の混血児だ。
それ故、忌み嫌われ、たらい回しにされた挙げ句、親にも捨てられ、孤児となっていた所を見るに見かねて俺が拾い養子とした過去がある。
5年ほど面倒を見ながら、魔族との混血であっても、この世界で自分の力で生きていけるように魔術や戦い方を教え込んだ後、驚く程の才能を開花させたリリアンを、俺の付き人なんかしてたら勿体ないと言う事で、当時内戦が続いていた魔族大陸の治安維持の為にアドリアーノに預けたのだ。
魔族大陸グランデネロはアドリアーノがいるが、決して一枚岩ではない。
今も尚、大陸の覇権を握ろうと敵勢力の出現が止まないらしい。
しかしそれは半分は建前で、実際には自分の養子ではあるが、この真面目過ぎる忠誠心の塊の様な彼女が俺は少し苦手だったので、その戦闘能力に興味を持ったアドリアーノが預かってくれると聞いて、俺はその話に飛びついたのが本音だ。
アドリアーノの話ではその後も、彼女は更にその才能を発揮し、魔族大陸グランデネロでも5本の指に入る戦士へと成長し、今では魔族大陸で最強の女戦士だそうだ。
「リッキーリード様…。
再びお会いできる事を待ちわびておりました!」
「リリアン大きくなったな…」
「我が主も変わらず御美しい御姿のままです。
またこうしてお会いできる日を。
200年もの間、心待ちにしておりました!」
「相変わらずの仰々しさだな…。
魔族大陸グランデネロでの生活はどうだい?」
「はい!
主とアドリアーノ殿との人間世界不可侵の公約を
無きものとしようとする輩を討伐する日々を
送っておりました!」
「そうか…。
長い間頑張っている様だな。
リリアンが無事でいてくれた事も嬉しいよ」
リリアンの表情に満面の笑みが浮かんだ。
「有難う御座います!
倒した者達には
リッキーリード様の偉大さを説き!
二度と我が偉大なる主の教えに逆らわぬ様
教育してまわっております!」
おい…。
それ、俺のところに仕返しとか来たりしない!?
俺、今すっごく弱いんだよ…。
「リリアンはまた、魔族大陸に戻るのか?」
「はい…。
すぐにでもまた主にお仕えしたいのですが。
我が主が私に与えられた最初の使命ですので…」
「そうか。
もしまた時間があったら。
休みがてら俺の家にでも来いよ。
食事ぐらい御馳走するよ」
「あ!有難き幸せに御座います!」
俺はリリアンに連絡用の通信マジックアイテムを手渡し彼女と別れる事にした。
『親は無くとも子は育つ』か…。
育ち過ぎな気もするが。
ごめんよ。
不甲斐ないコミュ障の養父で…。
その後も、首都ドロナックはアンデッド達との戦が続いていたが、連合軍やドロナック衛兵達の活躍もあり、半日ほどかかりアンデッドの討伐に成功した。
指揮については怪力のジェシカがドロナック国家騎士をまとめ上げ、自国が古代悪魔に操られていた事、それを知っていながら自分の地位を守るために黙認していた者達に代わって臨時司令部として国家統制が行われた。
王家不在により、国家統治機能が壊滅状態になっているドロナック王国の今後の統治についてだが。
今回、事実上戦勝国となったストラス王国、ラディ王国とドロナック王アンガスの侵略戦争に反対して幽閉されていたドロナック王室の生き残りを含め、暫くの間、東ラグレスタ連合王国として臨時政府を持ちながら今後の方針について会議をしていく事になった様だ。
こうして10年間にも及ぶ東ラグレスタ侵略戦争は終焉を迎える事となった。
「リッキー・リードよ。
行くのか?」
「ああ。
200年ぶりに外に出て来て色々あって疲れたからな。
一旦、自分の家にでも帰って休むことにするよ。
アドリアーノも今回は色々助かったよ
有難う!」
「そうか。
久しぶりに友に会えてよかった。
しかしお前はまた、
結界を張った穴蔵に閉じこもるつもりか?
あそこは俺達ですら魔力も場所も一切感知する事すら出来ん。
俺すら見た事が無いような強力な結界を張っている様だな」
「ああ。
俺は元世界一の引きこもりだからな。
セキュリティーは世界一完璧だよ。
あと今回帰るのはちょっと休むだけだ。
呪いも解かないといけないし
また、戻って来るつもりだ」
「そうか…それを聞いて安心した。
そうだ。
お前の呪いについてだが一つ良い事を教えてやろう」
「良い事?」
「俺はお前の呪いを直接解く事は出来んが、
西の大国、神聖ノーツ帝国の南端に
スティレス・ドーフという町がある。
そこに神聖術を使うモーズ一族がいる。
彼等ならお前の呪いを解く事が出来るかもしれん。
一度訪ねてみるといい」
「それは助かる!
戻ってきたら次の目的地はそこにするよ!」
「検討を祈る」
「ああ。
じゃあなアドリアーノ。
お前がいなかったらヤバかったところだ」
「構わん。
ではな…」
俺達はアドリアーノを見送ると彼は迎えに来た従者と共に去って行った。
何だかんだで、あいつは心配してくれていたのだな…。
あいつだけはこの人生で最初にできた親友と言っていいかもしてない。
アドリアーノを見送っているとクリス達も帰ってきた。
「師匠こっちのアンデッドは大体倒せました!
あれ?
あの人、師匠のお友達の方ですよね!
もう帰っちゃうんですか?
助けてもらったお礼を言いたかったんですが…」
そして俺達は帰りの荷支度を済ませて首都ドロナックの入り口に来た。
そして収納用マジックアイテムで馬車を収納した。
「あれ?
師匠何で馬車をしまうんですか?
これから帰る為に馬車で移動するんだと思ってました」
「ふふふ…クリスさん。
ここからは転移スクロールを使うんだよ」
「え!そんな事できるんですか」
「主要な場所の何ヵ所かに魔法陣を書いてきたから
その魔法陣を書いた場所なら、
好きな場所に移動できるのさ」
「凄い…。
師匠の造る魔道具はいつも想像の遥か上を行ってますね…」
その時、褐色の肌に派手ないでたちの3人が声をかけて来た。
「おいクリス!
クリスじゃないか!
メイさんもいるな」
何か派手なリア充っぽい奴らが来たな…。
苦手なタイプかも知れない…。
その後ろからヴィクター達も歩いてきた。
ヴィクター達とも知り合いなのか?
「ジェイさん達じゃないですか!
もしかして、あなた達も戦ってたんですか!?」
「ああ。
成り行きでな」
「そうだったんですね!
無事で良かったですよ!」
どうやらクリスの友達みたいだな。
俺と離れてる間に知り合ったのかな…?
うーん。
気まずい…。
また人見知りが出て来たよ…。
「いやあ。
さすがの俺達も今回の化け物の大軍には
ちょっとやばいかと思ったよ。
でも、魔族ハーフの姉ちゃんに助けてもらって何とかな」
そうか、リリアン達はヴィクター達にも加勢してくれてたのか。
「ところでクリスの隣にいるのは
クリスの弟か何かか?」
「この人は僕の師匠です」
「は…はじめまして。
魔道士のリッキー・リードです…」
「まじか!!
こんな小さい子供が本当に
リッキーリードなのか!?」
うん…。
何かそう言われるんじゃないかと思ってたよ。
「こう見えても今年243歳なんだよ」
「まじかよ!
信じられん…。
俺ガキの頃からアンタのファンなんだが…。
話したいことは山程あったが
今は頭の整理が追い付かねえよ…」
そして、俺はクリスとメイさんに、このキングジェイ傭兵団に出会った話や命の危機を救って貰った話を聞いた。
その上、ヴィクター達も助けて貰ったんだから今度お礼の一つでもしないとな。
「ジェイさん。
俺達パーティーは今回の戦いで
今は体力的にもボロボロだから
少し家に戻って休んで来ようと思うんだ。
でも、2週間後に南のクロスローズ町で
酒でも飲んで今回のお礼と話もまた聞かせてくれよ」
「それはありがてぇ!
実を言うと俺達も魔力切れで
そろそろ、ぶっ倒れそうなとこなんだ。
伝説の有名人に酒の席に招待されるなんて光栄だぜ!」
俺たちは約束をして、手を振って彼らと一度別れることにした。
「いやあレオナ!
まさか本物のリッキーリードに
会えるなんて驚きだぜ。
傷が癒えたら今度ゆっくり話してえな。
ん…おいどうしたレオナ?」
「クリスのあの後ろ姿…。
いえ…でも」
◇
俺たちは転移を誰かに荷支度を完了した。
「じゃあクリス。メイさん。
帰ろうか。
お…俺の家に案内するよ」
「師匠の家にですか!?
是非行ってみたいです」
「あらやだ!
ワタシ達みたいな美女を2人も
家に呼ぶなんてリッキーちゃんたら
大胆ね!」
「そうっすね…」
俺は2人を家に招待する事にした。
はっきり言って少し抵抗があったが。
俺は久しぶりの転移スクロールを使って3人でリッキー島に帰還する事となった。
「あれクリスその本は?」
「以前師匠に貰った本ですよ。
師匠過去の事を知ろうと思ってまして。
この本が一番詳しく書かれていたんで。
それにこの本は、師匠御本人のサイン入りですからね!」
本の表紙には
『リッキーリードの旧世界開放叙事詩』
と書かれている。
そして裏表紙には俺の書いたサインがあった。
◇◇◇
バルバトスとリッキーとの戦いやアンデッドの襲撃で破壊された城塞都市ドロナックだったが住民たちが早くも復旧に向けて動き始めていた。
そんな中、ジェイ達も旅に向けて準備をすすめていた。
「レオナどうした?
さっきから様子が変だぞ」
「大丈夫。
ちょっとさっきの戦いで疲れた
だけよ」
レオナの手にしている本。
『リッキーリードの旧世界開放叙事詩』
裏表紙にはリッキー・リードのサインが書かれていた。
【リッキーリードの新世界開放叙事詩】
第一部完。




