第108話 敵討ち(後編)
遅れて申し訳ありません。
執筆する余裕のある日全部で頭痛くて寝込むとか予想できんねん……
ただでさえ難産なのに……
追記:あ~~~!!? 予約投稿ミスってた~~~!! どうりで静かなはずだよ!
『集いし光』を壊滅させた原因、それをヘルプで調べるのは当然だった。
ギルマス曰く、遺体が発見された時、周囲には魔物の気配が全くなく、異様なほど階層そのものが傷付けられているだけで回収作業中も何かが襲ってくることもなかったと。
もうこの時点で普通に強い魔物にやられた線は無くなってた。
そもそも遺体が見つからなかった人もたくさんいるというんだ。どこに消えたの? 何で遺体を見つけた冒険者たちは襲われなかったの? どうして誰も逃げることができなかったのか?
その答えをヘルプで知った時、まぁ激しく怒りましたとも。
魔王教団からも半ば捨てられた存在だから調べられたという皮肉つき。
遺体の大半、階層に済む魔物の大半は、奴の餌食になったんだ。
『集いし光』の対処でエネルギーを消費から、あとから来た冒険者たちのことを無視したんだ。
出入り口が塞がれたから、戦うしか道がなかったんだ。
私自身会ったことのない冒険者パーティー『集いし光』の人たち。
どんな気持ちで最期を向かえたのだろう。
1人でも生き残るために死にもの狂いで戦ったのか、ただただ目の前のことで精一杯だったのか。プリミラの言ってた優しいお母さんは、他のみんなの両親は、残される子供たちのことを心配したのかなぁ。
どうして魔王教団の奴らは、いつも誰かの“大事”を傷付けるんだろう。
エネルギーが溜まったら地面を、壁を、天井を伝って、上の階層を徐々に浸食することで移動できる化け物を何で作ったんだろう。
答えなんて分からないし、知りたくもない。
ただ悔しいんだ。私と違って、あの子たちは親の愛情を一身に受けていたはずじゃんか。それが理不尽に壊されるのなんてあんまりじゃんか。
だったらその壊した奴を……許せるはずないじゃんか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
戦いが始まってからすでに数十分は経った。
勝負はまだ、つかない。
『――――――――!!!』
無造作に振るわれるごちゃ混ぜゲル巨人の腕。
ただし、大きさも質量も異常なその攻撃を受けるわけにはいかない。いくら防御力が高いったって、バカ正直に当たる必用なんてない。
「『ギルティ・ソウ』×2」
対するは光系魔法LV.6相当の巨大丸鋸――それも2つ。
それがギュイィィィンッ!と音を立てながら、巨人の腕を切り裂いた。
いくらデカくても、外側は寄せ集めで中身もゲルだからな。一定以上の大きさと威力さえあれば、今の私なら簡単に破壊できる。
そのまま地面に落ちそうな腕目掛けて本体(?)からゲルみたいのが伸びて回収しようとするけど、そうはいかない。
「させるかよ、『アイテムボックス(大)』! 回収!!」
伸びてくるゲルに炎系魔法で牽制しながら切断したごちゃ混ぜ巨大腕を、その中身のゲルごと収納無制限のアイテムボックスへとしまう。
「これで28回目! ――うおっと!?」
一瞬の隙を突くように地面から生えた土塊の触手が私を捕らえようとするので、『ギルティ・ソウ』で切断しつつ一時離脱。
数百メートルの距離をハルバードのジャット噴射で飛び、ようやく息をつく。
「ふぃ~。こういう長期戦は古本屋の爺さんに貰った鬼畜ゲー以来だけど――初期に比べると随分スマートになったじゃねえかゲル野郎」
憎きゲルの化け物は数十分前に姿を現した時と比べると細く、小さくなっている。身に纏う大地や木々、遺跡の残骸も随分減った。
「元々有利ではあったけど、事前に考えて良かったぜ作戦」
そもそも、このランドなんちゃらゲル。
先にある程度弱らせてからじゃないと、メッチャ倒しにくい魔物だった。
私がほとんど流れ作業のように弱らせることが出来ているのは、単純に相性がいいから。一般の冒険者じゃ足手纏いにしかならない。
まずこの階層――森と遺跡の混合エリアと一体化しているから、地面に足を着いている時点で奴の手の平の上同然となる。
少し前に攻撃を躱すため地面スレスレを飛行していたけど、その地面から土槍や土塊の手がどんどん生えてきて貫こうと、または捕らえようとしてくるんだ。飛べないとまともに戦えねえよ。
さらに本体が流体で、“核”を攻撃しなきゃ意味ない。
開戦の切っ掛けになった私の魔法は確かに“核”に直撃したけど、破壊にまではいたらなかった。ヘルプで場所を確認してからのコレだ。嫌になっちまう。
流体の体は切断したところでお互いにくっつこうとし、魔法に耐性があるから炎で蒸発させられるのは微々たるもの。その流体の中を動き回る“核”を潰すには、せめて流体の量を減らしたい。さらに言えば、階層そのものである分厚い“鎧”も何とかせねばならん・
こんな相手をどうやって倒すか?
この1ヶ月近い修行で賢くなった雪菜ちゃんは考えた。
そして、ふと思いついたアイデアをスライムで試して確信した。
切断した流体部分は無機物扱いになるから、アイテムボックスの中に入れちまえば結果としてその分の質量を消滅させたのと同じじゃね?と。
「んで実践したら、私の考えは当たってたっていうね……」
ここまでのことを考えている間も手を止めない。
切断し、収納。えぐり取って、収納。
森を破壊し、岩を破壊し、遺跡を破壊し、収納。
とにかく、手で触れたものは全てアイテムボックスへ収納した。
そうして戦闘開始から1時間、ついに……
「見えたぞ“核”ぅ!!」
本体と融合するあらゆる物質が枯渇し始めた結果、逐一ヘルプでその位置を確認していた“核”をついに目視できた。
てか、ここまでくるの長ぇよ!
見ろ! この階層の無機物を1時間アイテムボックスの中へ入れまくった結果を! ゲル巨人を除いて岩肌しか見えねえよ!
“鎧”として取り込める材料なんてどこにも見当たらねえよ!
「『シューティング・アロー』!」
即座に“核”に向け光の矢を放つ――が、
「……そう簡単にはいかねーよなー」
開戦の攻撃でヒビが入ったゲル野郎の“核”、その某使徒みたいな赤い球体は流体の中を即座に移動し、私の魔法を避けてみせた。
(想像していたよりずっと早い。普通に狙ったんじゃ回避速度に追いつけない。やっぱ今以上に本体を削るか、もしくは――)
私が具体的なチェックメイトについて作戦を選んでいる時だ。
ゲル野郎の行動が今までと変わった。
『――――――――!!!』
スマートになったとはいえ、未だ巨大さは健在なその体を大きく広げ、まるでハグをするかのように私目掛け向かって来た。
それもさっきまでの巨大な腕2本ではなく、8本の細い腕に変えて。私の進路を少しでも塞ぐように。
「破れかぶれの突撃――じゃねーよな!? ヘルプ、回避先提示!」
悪いけど、ここで捨て身の攻撃だと判断するようなバカじゃないんでね。嫌な予感がすればヘルプに頼りますよもちろん!
でも、
『〈回避先の提示〉……後方へ全力退避以外無し』
範囲攻撃は普通にズルくありませんかね?
ドバッッッ!!と、ゲル巨人の中央が裂けて、中から大量のゲルが噴出した。それも傘の内側のような広がり方で。
「う、お、おぉ、おおおおおおおおおぉっっ!!?」
ハルバードの向きを変えて全力で後方へジェット退避!
だがしかし、大量のゲルを噴出したままアホみたいなスピードで迫ってくる!
「おまっ! HPがレッドゾーンに入ったら急に強攻撃出すボスかよ!!」
というか、そんなに早く動けたの!?
あ! 私が本体の流体も“鎧”も根こそぎ奪って軽くなったせいですね! 余計なものの無い土砂ばかりの体になったから動かしやすいと!
んなもん、予測できるかボケッ!!
(どうしよどうしよどうしよ、どうしよう???)
思考を加速させるも最善の策が思い浮ばず。
流体には魔法に対する耐性があるし、中途半端だとすぐくっつくし、そこそこ粘度も高くて、酸性もおまけで付いてくる始末。
大魔法で隙を作って強引に突破するか? 貫通力のある戦技で流体を突き破って。自分自身も魔法で防御すれば被害は最小限で済みそうだし、突破した瞬間にステラを救った時の禁じ手スキルも使って一気に畳み掛けるか……
(考えてる余裕はもう無さそうだなぁ!)
後ろには向き出しになった岩肌が見えてきている。さすがに完全に追い込まれたらできることもできなくなっちまう。
「えぇい! 女は度胸ぉおおおおおおおおおおおっ!!」
魔法耐性&酸性ゲルなんぞで私を止められると思うな!
たぶん大丈夫だけど、服が溶けて素っ裸になっても戦うからな!
覚悟を決めて魔法を構築しようとした――その時、
「節制の逆位置『コスト・スローモーション』」
ゲル巨人の動きが突然止まった。
いや、動いてはいる。ただその速さがさっきまでに比べて遅すぎるんだ。
巨人の体だけじゃなく、本体まで異様に遅くなっているようだった。
(何が!?)
いや、そんな疑問はあとだ。やるなら今しかない。
「出でよ! 『アース・シリンダー』!!」
アイテムボックスから出したのは、この日のために土系魔法で作り上げた棒付きの巨大な筒。長さが100メートル近くあるソレを――力任せに突き刺す! 狙いはゲル野郎の“核”周辺!
「どっせい!!」
筒が土砂ばかりで防御の薄い“鎧”、物理耐性の低い本体のゲルを貫き、ゲル巨人の背中まで筒が突き抜けたのを見計らって、その筒にピッタリと合うサイズの棒を――これまた力任せに押し込む!!
「これが本当の『心太衝撃』!!」
力を貸してください黄色いアフロの人ぉおおおおおおおおっ!
押し込むを通り越して殴りつけるように、筒に合わせた巨大な棒に拳を突きつける。すると押し込まれた棒は貫かれた際、筒の中に残っていた土砂やゲルを巨人の背面へと勢いよく吐き出した――弱点である“核”ごと。
『――――――――――――――!!!??』
耳障りな悲鳴を上げるゲル野郎の“核”。
巨人を操作したくてもできないだろ? 本体の一部ごと完全に空中に放り出されて、巨人と一体化している本体と接続が切れてるんだから。
「や~~~っと、お目に掛かれたなぁ?」
筒をしまい、巨人にできた穴を通り抜け、ついに“核”と対面する。
『―――――――――!!』
残った少ない本体に、これまた少ない土砂を纏わせて私に襲い掛かってくるけど……それは、もう本当に、無駄な足掻きでしかなかった。
「チャージ」
足場にしていたハルバードを構え、ありったけの魔力を溜め込み、
「『獄炎斬』!!」
“核”へ向け、振り下ろした。
『――――――――――――――!!!??』
灰と、または蒸発するゲル状だったもの。
切り裂かれた“核”。
私が地面に降り立つのと同時、それは爆炎に呑まれた。
次回、帝国編(前編)のエピローグです。
>『心太衝撃』
>力を貸してください黄色いアフロの人ぉおおおおおおおおっ!
学生時代、作者の大好きだった『ボーボボ』からのパロディ。
アニメでは表現がマイルドになっていましたけど、原作だと普通に吐血しているんですよね……ところてんなのに。




