① 2年後の世界ー3
伸一はそう言うと、そそくさと志恩の墓から去って行った。そして、一足先に墓地を後にした茶山とななみの二人に追いつくために歩調をひたすら早めた。残された百道一家の人々も帰り支度を始めた。
「なんか、かわいそうな人々…」
ふと、健芯の嫁・美鈴がつぶやいた。それを隣で聞いていた健芯は黙って首をふる。美鈴の声は静寂な墓地では思ったよりも響くようで、伸一と桃子の耳にも入ってしまった。
「美鈴さん、そんなことを言わないの。もしかしたら、あなたの義理の姉になっていたかもしれない人ですよ」
「お義母さん、すみませんでした…」
「美鈴さんが分かってくれたいいのよ…」
美鈴は、亡き義兄を中心に回っていく百道家が時々怖く思える事がある。確かに死者に対して、それなりの敬意を払わないといけないことは分かる。
しかし、この家ではそれが行き過ぎていて、何も知らない美鈴にはただ息苦しい。未だに未練たらしく出入りする七隈家の人々にも辟易していた。
なにを思ったか知らないけど、急に泣き出すなんて不気味過ぎる…。未だに親戚ごっこを続ける七隈家の父親。それに付き合う健芯の両親。全く理解できない…。
美鈴は夫の健芯に頼んで、なるべく早いうちに実家近くのマンションか、一軒家を買ってもらおう。そして、一刻も早く、この家とおさらばしよう…。そう、決心を新たにする。




