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心を自然解凍  作者: あまやま 想
第3章 七隈家のその後
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① 七隈家のその後−1

「七隈君、今さら、正社員になりたいと言っても、遅過ぎるから…。せめて、六月までに言ってもらえたら、どうにかできたのに…」


「そうですよね…」


「婚約相手さんが、不慮の事故で亡くなられたのは、本当に残念としか言いようがない。しかし、会社組織はそのような事態に柔軟な対応ができるようにはなってないんだ。本当に申し訳ない」


「小笹課長、こちらこそ急に変なことを言って申し訳ありません」


「七隈君、こちらとしても、君にはコールセンターで長くやってもらっているし、優秀だから本当は残ってもらえるなら、どうにかして残って欲しいんだ。しかし、君が来年の三月で仕事を辞めると言っていたため、すでに本社から来年一月に正社員が来て、その人を課長補佐に充てる人事が内定している。本当に申し訳ない」


 小笹が席を立って、ななみに頭を下げたので、ななみはさすがに恐縮した。課長に頭を下げさせるなんて…。


 ななみは何も言えずに頭を小笹より低く下げながら、コールセンター課長室を後にした。そのどさぐさに紛れて、なぜか小笹はななみにお笑いのライブCDを押し付けた。


「余計なお世話かもしれないが、こんな時に聞くと少しは気も紛れるだろう」と言って…。


 九月に入り、ななみは志恩が不慮の事故で亡くなったことを会社に伝えた。あわよくば、正社員の話が生きていればと思ったが、最初に話を受けてから、すでに一年以上経っている。


 今さら、こんな話を持ち出したにも関わらず、小笹は実に丁寧に応対してくれた。


 もし志恩が生きていれば、結婚に向けて、志恩とスカイプで相談をしたり、百道家の両親と話をしたりしながら、結婚式の準備に取りかかっていただろうに…。


 それもすっかり無くなってしまった。もし、志恩が生きていれば、約束されていた幸せな世界…。幸せな花嫁になって、幸せな家族を築くはずだったのに…。ななみの幸せ家族計画は、婚約者の不慮の事故により全てが水の泡になってしまった。


 これからは、いつまで続くか分からないが、一人で生きていかないといけない。実家暮らしができるとは言え、三十路の独り身になろうとは思ってもいなかった。


 課長曰く、コールセンターは来年の三月までに何人かコールオペレーターが辞めていくだろうから、契約社員としての契約は何度でもできるとのことだった。


 まあ、それだけ必要としてくれることはありがたいが、できることならどうにかして正社員の枠にねじ込んで欲しい。もし続けるとしたら、来年一月からは新しい補佐の元で働くことになるらしい…。


 ななみは、急に白紙になった人生プランをどのように埋めたらいいか、時折考えながら、コールセンターにかかってくるクレームや質問をさばいていく。

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