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終末配達ロボット、君の町へ  作者: 非常口
case.1 オジイチャン
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16/16

No.15 少年

終末世界でロボットは、新たな記憶を辿る

 後ろから、規則的な金属音が聞こえてくる。


 少女が振り返ると、地下倉庫からマイルズが出てきていた。

 オレンジ色の目を静かに光らせながら、神社の境内を見渡す。


 視線は、真っ二つになったコウモリ型ロボットへ向けられた。

 そして次に、その近くに立つマゼランへ。


 数秒。

 マイルズは動かなかった。


 やがて、状況を把握したのか、何も言わずにそのまま地下倉庫へ戻っていく。


 少女はマゼランを見上げる。

 マゼランもまた無言だった。


 少女は少しだけ困ったように笑い、

 「……戻ろっか」

 と呟く。


 そして、少女とマゼランもマイルズの後について階段を降りていった。


     ◇


 夜が明ける。


 地下倉庫の白い照明は変わらず冷たいままだったが、入り口の階段から差し込む朝の光だけが、わずかに空気を柔らかくしていた。


 少女は毛布代わりにしていた布の上でゆっくり目を覚ます。

 ぼんやりした視界の中、まず見えたのは倉庫の入り口だった。


 マゼランが、そこにいた。


 入り口を背にして静かに座り込み、外を監視している。緑色の目が薄暗い室内で静かに光っていた。


 少女が身体を起こすと、その少し奥で、マイルズの目にも光が戻る。


 「スリープモードを終了します。」


 いつもの無機質な声。

 マイルズはゆっくり立ち上がると、そのまま外へ向かった。


 少女もすぐ後を追う。


 昨晩、少女は倉庫の棚を漁っている途中で、新しい記憶集積ポータルを見つけていた。小型で、表面には細かな傷が無数についている。だが内部の光はまだ死んでいなかった。


 少女はそれを両手で持ちながら、外へ出たマイルズへ見せる。


 マイルズは無言でポータルを受け取った。

 そのまま胸部装甲の一部が開き、内部から伸びた細い接続端子がポータルへ接続される。


 数秒後。


 「……情報のコピーを完了。」


 短くそう告げると、マイルズはポータルを少女へ返した。


 少女はそれを受け取りながら、何も言わないマイルズを見る。

 けれど、互いにどこへ向かうのかは、もう言葉にしなくても分かっていた。


 朝の空気は澄んでいた。

 崩れた都会の向こうへ、柔らかな光が差し込んでいる。


 マイルズが先頭を歩き出す。

 その後ろを少女が追い、さらにマゼランが静かに続く。


 一行は神社の地下に眠っていた倉庫を後にした。


  記憶地点は、意外なほど近くだった。


 少女たちは神社の鳥居の前まで戻ってきていた。

 朝の光が木々の隙間から差し込み、石畳の上にまだらな影を落としている。風が吹くたびに葉が揺れ、静かな音が境内に広がった。


 マイルズが立ち止まる。


 そして、頭頂部から淡い光を周囲へ放射した。


 空間に粒子のような光が広がり、やがて立体映像が形を成していく。

 三人の少年だった。


 年齢は十代前半ほど。

 ぼやけた半透明の姿で、神社の前に立っている。


 「この神社、どっかに宝物あるらしいぜ!」


 ひとりの少年が楽しそうに言った。

 他の二人も目を輝かせながら境内を見回す。


 そして三人は、神社のあちこちを探し始めた。

 賽銭箱の下を覗き込み、床板を叩き、石灯籠の裏を確認する。


 だが、不思議なことに、誰ひとり本殿の内部へ入ろうとはしなかった。

 まるで最初から、探す場所を外に限定しているかのようだった。


 少女は映像をじっと見つめる。

 すると、一人の少年が本殿裏の木製手すりへ近づいた。


 「あれ?」


 少年が何気なくそこへ手をつく。


 カチリ。


 少女が見つけた時と同じ音が鳴った。

 直後、石畳が重々しい音を立てて左右へ開き、地下への階段が姿を現す。


 三人の少年は同時に目を丸くした。


 「うおっ!?」

 「なにこれ!?」

 「やべぇ!! 本当に宝あるじゃん!!」


 少年は興奮した様子で他の二人を呼ぶ。

 三人は顔を見合わせながら階段を覗き込んだ。


 少女もその映像を追うように、ゆっくり階段へ視線を向ける。


 そして気づいた。


 地下の巨大な門は、すでに開いていた。映像の中では、最初から門が開放されていたようだった。


 マイルズも無言で倉庫の中へ入っていく。


 少年たちも、その後ろを恐る恐る追った。


 そして、地下倉庫の内部へ入った瞬間。


 三人の少年は息を呑んだ。


 そこには――大量のロボットがいた。


 整列するように並ぶ機械の群れ。

 黒い装甲。

 オレンジ色のセンサー。

 無機質な身体。


 どれも、マイルズと同じ型だった。


 数十。

 いや、それ以上。


 倉庫の奥まで、無数の“マイルズ”が静かに並んでいた。

読んでいただき、ありがとうございます。評価やブックマーク、感想等をいただけると更新の励みになります。1日1話更新を目指しています。気分でもっと高い頻度で更新するかも。(感想、評価待ってます!!)

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