6話 色んな正解があって色んな不正解がある
その夜僕はベッドの中でメッセージを打っていた。
一件は社長に対しての今までのお礼と不躾ではあるが山口さんの今後についてのお願いだ。
徹平の話が本当なのであれば、きっとあのハゲ社長とテキトーオーナーのことだ。多分まだバーの運営スタッフは決まっていないはず。僕からの推薦など全くもって価値はないが、それでも送らずにいられない。彼は僕以上に今すぐ仕事が必要なはずだ
。
そしてもう一件は
美和ちゃんからきていたお礼のメッセージの返信だ。
もう長々と話すつもりはない。とにかくシンプルにお礼とお別れを言うだけ。
彼女はもう自分の力で道を決められる。
愛理さんの否定していた他力本願だっていいんだ。
ただ、プロダクションの助けが欲しいならもっと演劇業界に強いパイプとしっかりとした教育カリキュラムを持っているようなどこよりも成功が近い事務所に入らなくてはならない。入れてもらえないなら、入れてもらえる努力をすればいい。例えそれが他力本願であろうと、少なくとも努力をした上で勝ち取った他力本願だ。
劇団の門を叩いて一から演劇を学び、凌ぎを削りながら、上に上り詰めて行く道を選んだっていい。
泥水を啜る思いで皆、日々自分の技術に磨きをかけている。そういったところから這い上がってきた人だってたくさんいる。これも勝ち取ったものだ。誰もがその努力を賞賛してくれるだろう。
アウトローだが、業界で幅を利かせている権力者と知り合って可愛がってもらう方法だってある。
青山、赤坂、代官山、その他にも業界人がいる場所で働けば、絶対に今より上に上がれる可能性が高い出会いがある。そういう媚びたやり方も他力本願ではあるが、結果的に成功を手にすればそれは自ら勝ち取ったものだ。
この世界には体を売る奴だっている。
だけどそれも体で支払った代価だ。胸を張ればいい。ただ、実力が見合ってなければ簡単に振り落とされる。最終的に努力は欠かせない。
どれが綺麗な道かなんてそんな見てくれはどうでもいい。どの道を選んだって必ず苦悩はついてくる。そして、どの道を選んだって必ず成功する訳ではない。結局は視聴者、オーディエンスが選ぶのだから。彼らに認めてもらわなければその先に残るのは失敗という二文字だけだ。
それこそが芸能界。
いや、この世界そのものだ。
色んな正解があって色んな不正解がある。
だからこそ社会というものは面白い。
そして
美和ちゃんにも是非この世界を楽しんで欲しい。
夢を追う事の素晴らしさを感じて欲しい。
そして知って欲しい。
徹平達や愛理さんのように
今日は昨日より
明日は今日より
確実に一歩前に踏み出せる喜びを。




