表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/53

馬車の護衛での稼ぎ方~起承【転】結~

オレは言った。


「道を開けてもらうか」


馬車から降りて、野盗共を睨みつけた。


「へへへ。有り金と荷車だけ置いていきな。

 そうすれば命だけは見逃してやるよ」


「そいつは嬉しいな。だが、こちらも仕事でな」


山を登りきる手前、野盗が道を塞いでいた。

もちろん見逃してくれる様子はない。

見える範囲では前方に3人。馬車の後方に気配はない。


「念のため、こちらも言っておく。

 黙って道を開ければ、まだ廃業せずに済むぞ」


「そいつは嬉しいな。だが、こちらも仕事でな」


嫌な笑いをしながら、同じセリフを返してきた。

先を急ぐ身だ。時間は無駄にできない。

となれば。


「先手必勝!」


オレは叫び、左の野盗にナイフを投げた。

すぐさま剣を抜き、そいつに突進する。


「うわっ、危ねえ!」


ナイフは当たらなかったが、野盗は怯んだ。

一気に距離を詰めたオレは、すかさず剣を大きく薙いだ。

避けた野盗共は、上手く道の端に固まった。


「今です!馬車を走らせて!」


二頭の馬はけたたましく鳴いて、一気に走り出した。


 ◇


「さっさと歩きやがれっ」


・・・オレは野盗に捕まっていた。


「ざまぁねえなぁ、冒険者さんよぉ」


「オレも、そう思うよ」


オレは後ろ手に縛られ、洞穴に連れてこられた。

野盗の根城のようで、略奪品と思しき樽が置いてある。

飯の残りも見えるな。山で採れた()()()の鍋か?


「ツイてると思ったのは間違いだったか」


「ツイてるヤツが、すっ転ぶわけねぇだろぉ」


野盗共は声を上げて笑った。全く以って仰る通り。


あのとき――オレは走り出した馬車に飛び乗ろうとした。

だが事もあろうか、足元の石に躓き、すってんころりん。

馬車はそのまま走り去り、残されたのはズッコケた冒険者。


一体、何の冗談だ。オヤジに話せば、大ウケ間違いなしだ。

いっそ吟遊詩人になって、一儲けしてやろうか。

それが良い。命がけの冒険者稼業なんてオサラバだ。


「ここに座ってろ!大人しくしておけよ、冒険者さんよぉ」


大金持ちになった(現実逃避)ところで、乱暴に背中を押された。

略奪品が置いてある一角に、押し込められてしまったのだ。

今は大人しく言うことを聞くしかない。


依頼者は西の村に着いてる頃だろうか。

オレの人生最後であろう依頼は果たせたわけだ。

報酬はオヤジに払われて、ツケも返済できる。

真人間の仲間入りだ。オヤジも喜ぶことだろう。


ひょっとすると感動のあまり、泣きむせぶかもな。

冒険者の鑑として、街に銅像を建ててくれるかもしれない。

そうなればオレの名は未来永劫、後世に語り継がれるだろう。


「さて、冒険者さんよぉ。覚悟はできてんだろうなぁ?

 こちとらアンタのおかげで、いい迷惑したんだよぉ」


歴史書に名が出た(現実逃避)ところで、イチャモンをつけられた。

せっかくの良いところを邪魔され、オレはむかっ腹が立った。

冒険者としての覚悟はできてる。こうなりゃヤケだ。


「いい迷惑? そいつは気分爽快だな」


「テメェ!」


野盗はオレの胸ぐらを掴み、強引に立たせた。


「覚悟はできてんだろうなぁ?」


「それは先程も聞いたぞ。他に言葉を知らないのか?」


そう言った瞬間、オレは殴り飛ばされ略奪品の樽に突っ込んだ。

その衝撃で樽が壊れ、中の()()()や見覚えのある草が落ちる。

鍋の飯は山で採れたのではなく、略奪品だったのか。

そんなことを朦朧と考えていると・・・。


「もうテメェはお終いだよぉ」


ここまでか。

野盗の抜いた剣に自分の顔が写るのを見て、そう思った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ