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馬車の護衛での稼ぎ方~【起】承転結~

「馬車の護衛での稼ぎ方」は、主人公である冒険者と主人公を取り巻く環境をご紹介するためのお話です。

オヤジが言った。


「ツケを払え」


突然過ぎて、オレは頭が回らなかった。

そこにオヤジは続ける。


「ツケだよ、ツケ。溜まったツケを払ってもらおうか」


「待て、オヤジ。前回の報酬で、ツケは返したはずだ」


オレは堂々と反論する。

前回の仕事は実入りが良かったし、それでツケ(借金)は返したはずだ。

どうした、オヤジ。とうとうボケt(ry


「いつの話をしとる! あれから、どれだけ経ったと思っとる!」


「5日ぐらいか?」


「すっとぼけるな! たまに働いたと思ったら、ぐーたらしおって!

 溜まったツケ、耳を揃えて払ってもらおうか!」


どうやらボケてたのは、オレのほうらしい。

オヤジ曰く、あれから今日で16回目の日の昇りになるそうだ。

時が経つのは、全く早い。


「いつまでなら待てる?」


「蓄えもないのか、全く。3日なら待とう。」


「恩に着る」


と、言うことだ。すぐには追い出されないらしい。

とは言え、何もしなければ追い出されてしまう。

真面目に考えよう。まずは依頼探しだ。


 ◇


ここは冒険者の宿。

1階が酒場、2階が泊まり部屋の希望とロマンに()()()()宿屋だ。

先程からツケの催促をしているのが、この宿のオヤジ。

そして、オヤジには娘さんが居る。

飛び抜けた美人ではないが、いわゆる看板娘というやつだ。

この宿はオヤジと娘さんで切り盛りしている。


オレは、もちろん冒険者。

ドブさらいから薬草探し、妖魔退治と何でもござれだ。

要するに何でも屋だな。先立つものがなければ、夢も追えない。

世界を救うなんてことは、立派な騎士様の役目。

こちとら、命あっての物種が信条だ。


仕事の依頼は、酒場に貼ってある。

オヤジが冒険者と依頼者の仲介人。

依頼者から依頼内容を聞き、その難易度と報酬を判断する。

その条件に依頼者が納得すれば、晴れて冒険者への依頼となるわけだ。


と言うわけで、仕事を探すか。


「楽で実入りの良い依頼は・・・と」


「そんな都合のいい依頼、あるわけがないだろう。

 それに少しは自分の置かれた状況(ツケの額)を考えろ」


「これは手厳しい」


そう言った、そのとき――宿屋のドアが乱暴に開いた。


「すまない!冒険者に至急依頼をしたいのだが!」


「いらっしゃい。急ぎの依頼ですか?」


突然の訪問者に、宿屋の主であるオヤジが落ち着いた対応をする。

どうやら急を要する依頼らしい。急ぎの依頼は、報酬が高め。

今日はツイてるかも・・・しれないな。


 ◇


「どうぞ」


娘さんが、テーブルに座った訪問者に水を出す。

オヤジが飲むように勧め、それから話を切り出した。


「急ぎのことと思いますが、まずは依頼の内容を話していただけますか」


訪問者は水を飲み、幾分は落ち着いたようだ。


「ああ、すまない。馬車の護衛の依頼だ。西の村までお願いしたい」


厄介だな。

カウンターに座り、娘さん手作りの飯を食べながら、そう思った。

西の村は、さほど遠くはない。

道中、なだらかな山はあるのだが、厄介だと思ったワケは・・・。


「――野盗が出るようになったのは、ご存知ですよね?」


オヤジが訪問者に、念のための確認を取った。

そう、厄介なのは山ではない。野盗なのだ。


この街と西の村には、人の行き来がある。

そのため、山には馬車が通れるだけの道が整備されている。

行き交う人と荷を狙う不届きな輩が、最近になって現れたのだ。

薬の材料を積んだ馬車が襲われたと、昨晩オヤジから聞いたばかりだ。

ちなみに自警団は懸賞金を懸けただけで、まだ動けないようだ。

どこの世界も人手不足。物事には優先順位がある。


「知っている。だが、山を越えてもらいたい」


やはり、か。

迂回もできるが、急ぎなら当然のご要望(無茶振り)だろう。

だからこそ冒険者を頼ってきた。


「分かりました。では、報酬などの条件を決めたいと思います。

 冒険者にも今日と明日を生きる権利があります。

 依頼の内容に見合った条件でなければ・・・」


オヤジが報酬の交渉に入った。

冒険者に伝えられるのは、遂行すべき依頼の内容と報酬だけだ。

今回で言えば、


 ・なぜ急ぐのか

 ・馬車で何を運ぶのか

 ・西の村の誰に荷を渡すのか


などの依頼の遂行に必要ない情報は、何も教えられない。


もし荷物が高級品だったら?

  欲にくらみ、良からぬことを考えるかもしれない。


もし依頼人が不遇だったら?

  情に流され、引くべきときを見誤るかもしれない。


前者のような冒険者はこの宿に居ないが、後者は居ないとも限らない。

引き際を誤る・・・それは死に繋がりかねないことだ。

そう考えて、オヤジは必要な情報だけを渡してくれる。


「では、その条件でお受けします。

 ちょうど空いている冒険者がおりますので」


オヤジと訪問者・・・いや、依頼者の話はまとまったようだ。

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