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バレーコード  作者: 8823sp
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其の弐

俺と裕香は、繁華街でしばらくぶらぶらしていたが、雨が降ってきたので来たとき同様、俺の車に乗って帰ることにした。

「あ〜あ。せっかくの服がびしょびしょ」

「その程度ですんだからよしと思えよ。この雲行きだとこれからもっとひどくなるぞ」

アクセルを踏んで、俺は車を発進させた。

「くそ。見にくいな」

立ちこめる水しぶきと、空を埋め尽くす暗雲で、視界は最悪だった。

時間がたつにつれ、雨の勢いは増していった。

遠くの空が黄色く光った。

「やだ、かみなり?」

どうやらそのようだ。

暗くて見にくい上に、突然の閃光。

いつ事故ってもおかしくないような状況だ。


目を凝らしながら運転していると、突然目の前に赤い光が現れた。

発煙筒だ。

急ブレーキ。

「ったーい。なによ、急に」

「何か、事故があったらしい。ちょっと見てくる。お前はここにいろ」

俺は車を停めて、外にでる。

「何かあったんですか?」

俺は発煙筒を持っている男性に尋ねた。

中年の、人の良さそうな小太りの男性だ。

発煙筒を濡らさないように、傘で発煙筒を覆っている。

「ああ、急にこの人が飛び出してきて、それで、俺がぶつけちまって。今、救急車を呼んだんだが。……えれえことしちまった」

車のかげで見えなかったのだが、人が倒れているようだった。

俺は倒れている人が見える位置に移動した。

そして、その人の顔を見たとき、俺は自分の目を疑った。

そこに倒れていたのは……。

「沙代子……」

まさか。そんな……。

なんで、沙代子が……。

「あんた、この人の知り合いなのかい?」

「え?い、いや……」

「違います。そんな人は全然知りません」

突然、背後から裕香の声がした。

「裕香、中にいろって……」

「私も彼も、その人を見たこともありません。じゃあ、私たちはこれで。行きましょ、宏志」

それだけ言って、裕香は俺を車の中に無理やり連れ戻した。

「おい、裕香……」

「出して」

「裕香」

「早く車を出して!!」

「裕香……」

俺は裕香に言われるがままに車を出した。出してしまった。

しばらくして、一台の救急車とすれ違った。


「どういうつもりだよ、裕香」

「別にいいじゃない。あの女が死んでも。いいえ、死んだ方がいいのよ。私たちのためにも」

「本気で言ってるのか?」

「本気よ。私は本気でそう思ってる。そしてあなたもそう思ってる。だから車を出したんじゃないの?」

「お前……」

「停めて」

「なに?」

「ここで停めて。今、あなたと話したくない」

「…………」

俺は車を停めて、傘を渡して裕香を降ろした。

俺はそのまま、無言でアパートまで帰った。

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