90話目 神に選ばれし勇ましき者たち
長い階段は終わり、やっと浮き島の上に足を踏み入れることとなった。
「これは、またすごいな」
空中庭園。そう呼ぶに相応しく、白の花畑が拡がっていた。
白の石板を敷き詰められた歩道と、大きな城壁。
下方は戦火が轟く戦場のはずなのに、爆音一つ聞こえない。
風は柔らかく、穏やかで、花は僅かに撫でられるのみ。
それはあまりに不自然すぎて、もはや不気味ささえ感じさせた。
「ようこそ、エルサレムへ」
光の粒子が結城たちの前に集まり、三つの姿を現した。
ユートピアの頂上に下りてきた布教者と同じ陣。しかし、両側にいるのは紛れもなく、純白の双翼を持つ天使。そして中央に立つのは、若い男であった。
中央の男には翼が無い。だから天使ではない。そのはずだ。
だが、結城はそれが人でないことを感じ取った。
「クリスト、あいつは……」
心の内から観察するクリストは首肯する。
「その通りだ結城。あれは人ではない」
人の姿をしていながら、人ではない者。それが意味することとは……
「この先、不浄なる者は通れません」
すると中央の男は指をさす。
「あなたと、あなたと、そちらのあなたは通せません」
指定されたのはケイオス、クロウデルの二人。そして朱。
なるほど納得のラインナップである。闇黒の徒と影の化物。まさしく神聖が嫌うであろうモノであった。
とはいえ、あからさまな戦力の分断である。相手のルールに従う必要は見当たらない。
「残りの方はお急ぎください。教皇様がお待ちです」
敵側のボスが待っている。
結城はますます混乱する。それともこの混乱すら誘っているのか。
迷っていると、ケイオスが横を通り過ぎた。
「行け、結城。ここは我ら闇黒の徒に任せるが良い」
「いやでも……」
「天使には神に類する者もいると聞く。つまり我らの本領を発揮できるところだ」
それもそうだ。ケイオスたちなら神に対して特効力がある。そして本人たちが望むなら申し分ない。
「じゃあケイオス、ここは任せる」
「ふふん、私とケイオスなら、この程度造作も無いわ」
結城たちはケイオスと朱にこの場を任せ、敵に警戒しつつ城内へと侵入する。
ケイオスとクロウデルはそれを確認する。
「どうして奴らに付いていかなかった」
「そりゃあ、私達とお前たちはチームだからな」
この場に残ったのは闇黒の徒と朱、だけではなかった。
MGシリーズの三人、フェイ、ルージュ、パティはケイオスの前と左右に配置する。
「それもあるが、私たちは兵器だ。室内より外の方が勝手が良い」
「天使って羽が多いほど強いんでしょ。じゃあ羽がたくさんある私はもっと強い」
パティのもっともに思える理屈と、ルージュの謎理論。
そしてフェイはケイオスの方を振り向く。
「それにお前には恩があるからな。恩返しと、あとは惚れた弱みって奴かな」
「は……なに?」
「お前を死なせたくないってことさ! ほら、さっさとお前の闇黒よこせ!」
「まったく……後悔するなよ」
三人の武装に闇が這う。しかし、闇は定着せず消え去った。
「あ、あれ? ケイオス、なんかおかしいぞ?」
「もはや必要がないようだ。お前たちはもう自分の理想のために戦えるだろう」
「えっ、そうなのか? うーん……まあお前がそう言うならやってみるか」
フェイはリヴェンジャーを三体に向けた。
「神の僕に矛を向けるなど……」
「問答無用! 撃てッ!」
フェイの大口径の機関砲がけたたましい音と共に火を噴いた。
それを待っていたかのように、パティが主砲の引き金を引いた。
白い花は弾丸によって土ごと抉られ、砲弾は地面を穿ち、花を天高く散らす。
「止めッ!」
フェイは自らの号令と同時にリヴェンジャーを止め、あわせてパティも砲撃を止めた。
「意外と呆気なく終わったな」
「ふふん、門番程度なら我々が相手する必要もなかったということか」
あまりの早期決着に肩透かしを食らったフェイと、クロウデル。
聖人も天使も、何もかもが土埃で見えなくなっていた。
その先を、ケイオスと朱は睨み続けていた。
「いや……」
「素人が。さっさと構えろ。来るぞッ!」
充満する土埃が、一瞬にして霧散し、閃光がフェイを捉える。
しかし重い撃鉄と火薬の音が響き、閃光は軌道を逸らされた。
「な、なんだ!?」
「チッ、世話の焼ける」
まるで手品師のマジックのように、三体には傷どころか、汚れ一つなかった。
「哀れな子羊たちよ……汝らの闇黒は神の火にて焼き尽くされるであろう」
中央の男は、再び光に包まれた。
それは両端の天使を遥かに凌駕する双翼を生やす。この庭園を包み込めるほどの双翼を、三対も。
「我は神の代理人にして、天使を遍く統べる王なり」
巨大な三対の光の翼が水面のように波紋を浮かび上がらせ、そこから別の天使が姿を現す。
そのどれもが下界で群れている天使とは比較にならない力を内包しているのが伝わってくる。
脅威の勢力を前に、さすがのフェイたちもたじろぐ。
「こ、これ大丈夫か?」
「右方に並ぶは破壊の天使、左方に控えるは死の天使、下方に伏せるは懲罰の天使。悪魔を滅すための神の軍勢。人には決して打ち破れない。己の罪深さを悔いながら、滅びなさい」
城の内部はがらんどう。天使の一柱もいなかった。
ただし内装は煌びやかで、純白の壁、黄金の柱とシャンデリア、彩色のステンドグラスが飾られている。
長い通路を進み続けると、やがて開けた場所にでた。
ドーム状の屋根と、太く円い支柱が円形に配置された部屋。
クロードは咄嗟に結城の前に出た。
「クロード?」
「結城、ここは僕の出番みたいだ」
部屋の向こうに続く通路から足音が響いてくる。
見れば向こうから歩いてくる人影が四つ。
一人は、ブラウンの髪の隙間から真っ直ぐな瞳でこちらを睨む、誠実そうな青年。
その腰にある剣は綺麗な直線を描く見事な代物。剣身には文字のようなものが刻まれている。着込んでいる瑠璃色の鎧からは不思議な力が感じられ、穢れを一切感じさせない。その立ち居振る舞いから、見る者に彼がいわゆる「神に選ばれし勇者」であることを悟らせる
勇者の右側には烈火色の兜を被る金髪の女。
黒いインナーに見える服の上には、急所を護るための最低限の鎧しか存在しない。ゆえに、引き締まった肢体が浮き出て、女性としての魅力と戦士としての力強さをかもし出している。そして女体には不釣合いの大剣を軽々と扱っている。
左側には、純白の生地にささやかな金の装飾が施されたドレスを着た、銀髪の乙女。
その胸元にある十字架と右手にある宝玉を乗せた豪奢な杖を見て、彼女が「神に祝福された乙女」であることが容易に想像できる。言うなれば聖女。その神聖さは、見る者の穢れさえ打ち払い、敬服させるほどに清く美しい。
そして戦士の右側には白いローブに身を包む存在。
顔まで隠しているために性別は定かではない。しかし、これまでのラインナップを考えれば、残りがどういう役割であるかを考えるのは容易い。とはいえローブに身を包むその様は、まさに神秘の体現と言えるほどに清らかで心惹かれる。
まさに勇者ご一行を絵に描いたようであった。
結城は彼らの後にクロードを見る。
お供は鴉天狗と魔女。どちらが勇者らしいかと問われれば、申し訳ないが向こうの方が王道だ。
「結城、君たちは先へ。此処は僕が引き受けるよ」
「いいのかクロード。メンバーが足りないじゃないか。」
本来ならクロードの仲間はあと二人いるはずだ。
それですらエルフとアマゾネス。勇者のメンバーとしてはややズレているが。
「大丈夫。彼女達なら来るよ。僕には分かる。彼女たちは、もう僕達のもとへ向かってきてる」
「それも安全無欠の能力なのかな?」
「あはは……意地悪だなぁ」
苦笑するクロード。自分もブラックな冗談が言えるようになったものだと、結城は自分を感慨に浸る。
クロードは白銀の剣を顕現させた。
「さあ、早く」
「しつこいようだが、最後に確認だ。勝算はあるな?」
「ふふっ、僕の理想がその答えだよ」
クロードは結城にウィンクを送る。
「っ……そうかい」
思わぬ茶目っ気に少し驚かされる。
なるほど、と結城は進み始める。
「……なら心配いらないな。レイラン、新月、ゾーイ。俺に続け」
応えるまでも無く、三人が結城に続く。
「そう簡単に通すと思ったか!」
女戦士が駆け、斬りかかる。
それにあわせる様にローブの人間も動く。
瞬間、妖の風と魔の光が二人を襲った。
「っ!」
魔の光がローブが白い輝きを放ち、紫の光弾は破裂して消失する。
女戦士も即座にそれを叩き落し、結城の方に斬りかかる。
袈裟懸けに斬り下ろすその太刀筋、結城の身に触れる寸前に弾かれた。
「なっ、いつの間に近づいた!?」
「失礼、ご友人」
「いや、お見事」
結城と雅はわずかに視線を交わす。
なるほどそれは単純で、ただ安全無欠を飾る演出であった。
「まったく、優秀な仲間だな」
呟いて、結城はレイランたちを引き連れて大部屋を後にする。
女戦士は天狗と刃を重ねたまま睨みあい、ローブも隙間から魔耶を睨みつけている。
それを見た相手側の勇者が呟いた。
「闇の勇者……異名どおりの仲間を連れているんですね」
「闇の勇者? どうしてそんな異名が……」
本来なら呑気におしゃべりなどするはずもない。
しかし、仲間の名誉のためにクロードは問う。
「魔女という邪な存在と天狗という悪魔をつれている。どちらも人間に危害を与える邪悪な存在です。しかしあなたは勇者を騙り、名声に溺れている。私の使命は、貴方の理想を打ち砕き、神の御許へと正しく導くこと」
「僕を導く……?」
「そう。あなたは間違った理想に誑かされている。安全無欠という言葉に踊らされている」
「それはどういう……」
問おうとするクロードだが、魔耶が前に出て遮る。
「魔女が邪なのは認めますが、だからってただ狩られるってわけにもいかないわ」
黒の外套を翻し、杖を構える。
「私は森羅魔性の魔女。安全無欠を不条理から護る、不浄の魔性よ」
「そう、貴方こそが、安全無欠を誑かす原因」
「人聞きの悪い。先に私に手を差し出してくれたのは、クロードの方よ?」
「あなたが弱者の振りをしたからでしょう。勇者の良心に漬け込んで、魅了し、誘惑した」
魔耶の弁明に対し、相手の勇者は言いがかりで捻じ伏せる。
魔女、天狗、エルフからアマゾネスまで、彼らはことごとく邪悪と見做す。
鴉天狗と女戦士も、刃と言葉を交わり合わせていた。
「お前たちが人間を誑かす度に、神は私達を見放す!」
「私達のせいにするな。これはクロード殿が自分からやったことだ」
戦士の力強い切り上げを、翼で空気を打って回避する。
雅も鴉天狗ながらハヤブサのような素早い太刀を見舞うが、戦士は頑強な大剣を軽々と扱って盾の様に構えて防ぐ。
それどころか、高速の連続斬撃にも関わらず、合間を縫って恐るべき剣速で突き出してくるので、迂闊に接近も出来ない。
「そして、感謝もしている。彼は私達に共存という新たな可能性を示してくれたぞ。神より偉大だ」
「そうやって勇者を堕落させようという魂胆なのだろう。お前ら魔物は」
「天狗は一応は神でもあるんだがな」
「異端の邪神なら尚更だ」
雅は上昇する。
「呆れた頑なさだな。お互いにッ!」
翼を力強く羽ばたかせ、超高速の斬撃を放つ。それらは暴風とカマイタチのセットとなって戦士に襲い掛かる。
巨木をなぎ倒し、巨獣を吹き飛ばす嵐。
対し女戦士は剣を後ろに下げて構える。
「神剣無双・聖槍剣閃!」
踏み込みはズンと響き揺らし、奔る横薙ぎは実体のないはずの風さえも切り裂いた。
「風を、斬るとは……」
「邪神と一緒にするな」
その妙技に、さすがの鴉天狗のプライドも揺らぐ。
妄信。道理ではなく、神の意思を尊ぶ彼らに対し、しかしクロードはなおも弁明を続けようとする。
すると相手の勇者の側から、クロード自身に言及する。
「安全無欠の勇者、貴方には決定的な大罪が一つあります」
「僕の、大罪?」
クロードは身に覚えが無いため首を傾げた。
しかし魔耶はそれだけでは収まらない。言いがかりに対し、魔耶は魔力を込める。
向こうのローブも合わせるように魔力を身に集中させる。
「私はともかく、クロードの尊厳まで傷つけるような物言いは許せないわね」
「待って、魔耶」
杖に魔力を込める魔耶を止め、クロードは問う。
「教えてくれないかな。僕が犯した大罪を」
「貴方は、人間を餌として提供するという悪魔の提案を受け入れた。あの最悪にして災厄の魔女王・ローレライ・アンジュの悪魔の囁きを」
なるほど、とクロードは納得してしまった。
ローレライにその提案をされたとき、クロードとはいえさすがに慄いた。
食用の人間を養殖する。
人間を捕食する知能生物ならともかく、同じ人間同士でその発想が出来るのは、クロードから見ても異常と思ってしまう。
しかし、人間を捕食する魔物も確かにいる。
知性よりも蛮性が長ける魔物は殺しあうしかないが、知性ある魔物には交渉の余地がある。
その交渉材料として、人間の養殖が提案されたのだ。
ローラ曰く、人間の善性を突き詰めていけば、ここが一番落としどころだという。
魔物を相手にしたならば、牛や豚や鳥はよくて、人間は駄目、とはいかない。
それが許されるならば、人間という種族は立ちどころに魔物たちの標的となり、コレまでどおり絶える事のない争いの日々が続く。
しかし、人間の養殖技術を用いることで、争いをほぼ0にまで減少させることが出来る。
その提案に、クロードは応じた。
アルカディアの国民からの反発も多かったが、どうにか説得し、魔物たちの援助や価値観の多様性、共存の手段としては最善に近いことを説き、なんとか今の形に落ち着いた。
だが、それはやはりこれまでの常識を踏まえた人間の目には、異常に映るのだ。
それもまた、一つの価値観なのだから。蔑ろには出来ない。
「人間を魔物餌にするなんて、間違っているとは思わないのですか?」
「でもこれ以上、魔物たちと無益な争いを続けるわけにはいかない」
「同じ人間を餌にしてでも?」
「それは……」
それはまるで、人間を軽んじることを肯定してしまうような気がした。
クロードには、それを善か悪かを判断することが出来なかった。
「……それ以外は、どうしようもなかった」
「人間のために剣を振るえない勇者が、本当に勇者と呼び得るのですか? あなたにとっての勇者は、養殖として育てられたものなら、人間を殺せるのですか」
仲間を護り、失わせない安全無欠の力。それこそがクロードという勇者の本質であった。
しかし、人間を軽んじれば、必ず仲間を失うことになるだろう。多くの敵を生むことになる。
「勇者クロード。私も同じ勇者として、あなたの葛藤は分からなくもない。しかし、私たちは人間だ。人間は神の導くまま、人間らしくあるべきだ。人間ならば、人間を護るべきだ」
人間。その枠組み。勇者と呼ぶ者も、呼ばれえるものも、やはり人間だけなのか。
人間であるべきなのか。
分からない。自分が今、どちらを向いているのか分からない。
目の前の、神に選ばれし勇者は言う。
「クロード、貴方は誑かされたのです。あのローレライという魔女に。だから神は貴方をお許しになられる」
「ぼ、僕は、仲間を」
すると、勇者の隣にいる聖女もまた口を揃える。
「クロード、あなたは騙されたのです。彼らは仲間ではない。彼らは化物です。人間を殺す者たちです」
「仲間じゃ、ない?」
「大丈夫です。勇者クロード。神は貴方を許される。だから、その魔女と天狗を倒すのです」
仲間ではない。だから倒す。倒していい。人間じゃないから倒していい。
「人間を護るのです、クロード。貴方が護るべきは人間。魔物や化物ではないのです」
「クロード、気をしっかり持って。クロード!」
傍らの魔女が振り返る。
「彼女は魔女。人間を魔法の実験材料にした罪深い魔女です。正しき処罰をくださねばなりません」
「クロード、私は貴方によって救われたわ! もう二度と人間を実験材料にしないと誓った!」
「失われた命は元には戻りません。命には命をもって購わねばならないのです」
大丈夫。貴方は勇者として神の代行を務めるだけに過ぎません。
裁かれた魂は不浄を洗い流し、いずれ来る千年王国で貴方が望めばきっと再開できることでしょう。
だから今は、人間として、勇者としての務めを果たすのです。
「勇者としての、務め……」
違う。それは違う。それは僕の理想じゃない。僕が想い描いた理想の勇者は……
貴方が神に許しを請えば、貴方の仲間もきっと許されるでしょう。貴方は最後に必ず仲間を再会できる。
このまま理想のままに神の敵となり、魂を滅ぼされる前に、貴方の手で、彼女たちを理想の世界へと誘うのです。
そうすれば、貴方は仲間を護れるのです。
分からない。何が正しいのか。自分の理想を叶えるために、なにをすればいいのか。
まるで闇夜の道を彷徨っているようだ。
信じるべきはなんなのか。何もかもが頼りなく見える。
あまりに心細く、導がほしい。希望の光、輝きが……
神を信じるのです。貴方の信仰は、必ず神に届くことでしょう。
神。そう、神だ。偉大なる神が、神様が救ってくださる。
神を信じなければ。神を信じ、神に従い、神に救われよう。そして、仲間もきっと救われる。
クロードの異変に気付いた魔耶であったが、もはや手遅れだった。
「クロー……っ!?」
咄嗟に身を引いたものの、白銀の刃が魔耶の外套を切り裂いた。
避けなければ、確実に深手を負っていたであろう、本気の一閃だった。
「クロード、なぜ……」
「彼は、私達の説得に応じてくれました。さすがは勇者を志していただけのことはありますね」
「どういうことなの……ッ!」
魔力のようなものは感じられなかった。言葉だけで人を惑わすなど、そちらのほうが魔物じみている。
「このままじゃ……雅!」
「ぐっ、悪いがこちらも手一杯だ!」
鴉天狗の得意な戦法は先手必勝、死角からの急襲だ。
室内ということもあり、雅には不利な状況だった。
「それにしたって、人間が天狗の速さについてこれるだなんて……」
「私の剣は神の加護がついている。魔性を打ち砕く神聖なる力だ!」
雅も劣勢。このままでは全滅は必至。
「どうしたら……」
「すまない魔耶、きっと後で出会えるから」
正気を失ったクロードは、白銀の剣を振り上げた。
「くっ……」
もう打つ手が無い。せめてクロードの言葉通り、いつかきっと出会えれば……
そしてその理想のブレこそが、この理想の世界では致命的であることを、魔耶でさえ忘れていたのだった。




