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モブに転生したと思ったのに私もヒロインって本当ですか?  作者: 芹屋碧
五章 マジカルナイツと聖女の力
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 レインの言葉に、ルナセイラは目を丸くする。



 「レイン様は石の加工が出来るのですか?」



 「そこそこはできますよ!もしよければ、ルナセイラ様の短剣のガードの所にはめ込むのはどうでしょう?」



 「素敵ですね!お願いしても良いのですか?」



 「勿論です。お任せください!」



 レインの自信満々な言葉にルナセイラはホッと安堵した。






 「聖女様・・ところで、聖女の加護はどのようにされるおつもりですかな?」



 すっと話を切り替え告げるフレキセンは、もしかしたらこれが本題だったのかもしれない。



 「今日、夕食後にでも聖女の加護を付与したいと思っています。

 ただできれば私の泊っている部屋ではなくて、どこかお部屋をお借りしたいのですがお借りできる部屋はありませんか?」



 「左様でございましたか、でしたら是非この部屋をお使いください。」



 「よろしいのですか?」



 「むしろ私も聖女の加護を与える様子を拝見したいので、願ったり叶ったりですな」



 ほっほっほ・・と笑うフレキセンは、陽気なおじいちゃんのようにも見えた。






 フレキセンの邸で皆で夕食を共にした後、再びルナセイラとマジカルナイツの五人、そしてフレキセンは執務室に集まった。



 「――すでにセイには聖女の加護を付与していますので、残りの四名の方々に付与させいただきますね」



 部屋に集まったマジカルナイツの四名は興味津々であると同時に、緊張の面持ちを隠せなかったらしい。

 ルナセイラは一人立ち上がり「それでは始めますね」と告げて始めようとした。



 「――ちょっといいかい?」



 始めようとしたルナセイラを止めたのはセイフィオスだった。



 「セイ?・・・・どうしたの?」



 「選ばれた四人は聖女の加護がどんなものかわからないだろう?先に体験者である私が教えてあげようと思ってね」



 意味深な言葉を告げるセイフィオスをルナセイラは「是非!!」と笑顔で微笑み了承する。



 「聖女様の加護は、治癒を施された時のように暖かくて気持ちよい感覚に包まれる。

 しかし、聖女様の加護はそれ以上の快楽が発生するんだよ。各々自制心で己の欲望に勝つように!

 万が一にもルナに手を出そうものなら、命はないと思っておいてね!」



 にこやかに注意事項圧して告げたセイフィオスの目は全く笑ってはいなかった。


 明らかな牽制だ。


 皆それぞれに「わ・・わかりました・・」と、声を震わせ了承する。



 ――快楽?ど・・どういうことだろう・・・



 付与する側のルナセイラは、暖かいという程度にしか思っていなかったのでセイフィオスの言うことは驚きでしかなかった。


 実際聖女の加護の付与は、額への口づけであっても相当省益的なものだったらしい。



 ――皆前かがみになっているのはなぜ?



 マジカルナイツの男たちは、先ほどまではピンと背筋意を伸ばしていたはずなのに、何故か頬を朱に染めて前かがみになっていた。

 唯一女性のヘラは前かがみにはなっていなかったが、明らかに放心状態に陥っている。



 「耐えたことは褒めてあげるよ。これからも余計なことは考えずに自分の役目を全うしてね」



 セイフィオスは最後まで釘を刺し続けた。

 フレキセンは納得したように微笑みながら、ルナセイラの下へ歩み寄ると箱を手渡す。

 その箱は、マジカルナイツ選定後にこの執務室にフレキセンが入室するとき持ってきた箱であった。



 「――フレキセン様?・・・これは何ですか?」



 「これは聖女ローナ様が次の治癒の聖女様の為に残されたもの。

 それをジェイキンス王子が聖女ローナ様から託されたそうです。

『開けたい』と、治癒の聖女様が願えば開くようになっているようですので、後程ご覧くださいますかな」



 「ありがとうございます!後で拝見させていただきますね!!」




 


 ***






 宿に戻ったルナセイラは、セイフィオスが入浴している間に箱を開けてみることにした。


 箱は両掌に収まる大きさ。

 繊細な細工と宝石をあしらったデザインは、聖女ローナが可愛らしい小物が好きだったのだろうかと思わせるものだった。


 箱を開けたいと願うと、カチッと音が鳴り蓋はあっさりと開ける事が出来た。

 入っていたのは一通の手紙。




 **********


 親愛なる治癒の聖女となった私の子孫へ


 これを見ている貴女は、ジェイキンス王子殿下の子孫がしっかりと役目を果たしてくれたのでしょう。


 貴方は聖女の加護を授ける前に、ジェイキンス王子殿下の子孫から私の聖女の加護の内容を聞いて驚いたでしょうね。

 きっと、さぞかし困惑したことと思います。

 清い心の持ち主であるはずの聖女が、二人の男性に好意をもつだなんてなんてふしだらな・・と思ったはずです。

 その通りなので弁解の余地もないのです。

 しかし、もし私が聖女の加護を私欲で二人に授けたならば、きっと私も魔女となっていたはず。


 私が穢れを浄化できたということは、女神様が私の選択が間違いではなかったと判断してくれたのだと信じています。

 可能であれば、私も一人の人だけを永遠に愛し抜ければどれほどよかったでしょう。

 ですが、私は婚約者であり恋人であったジェイキンス王子殿下ではなく、ジェイキンス王子殿下の弟君であるロウェイン王子を心から愛してしまったのです。


 言い訳に聞こえるでしょうけれど、結論を出すまでに私も長い時間をかけて悩みました。ジェイキンス王子殿下にも、ロウェイン王子にも向き合いました。そして、私はロウェイン王子を伴侶に選んだのです。


 私の移り変わった気持ちを、ジェイキンス王子殿下が受け止めてくれたこと。そして、私の子孫である貴女をジェイキンス王子殿下の子孫が受け入れてくれたことも心から感謝しています。


 貴女はこれから加護を与える五人のマジカルナイツと共に、苦難を乗り越えていくのでしょう。私が恐れたことが現実となり、今貴女がもう一人の聖女と向き合わないとならないのであれば、手を尽くせなかった自分の不甲斐なさを申し訳なく思うわ。


 魔女化してしまった聖女も、普通の女の子。

 少し欲が強かったけれど、魔女化するほどの穢れた心を持っているとは思わなかったわ。けれど、彼女は魔女化してしまったの。


 浄化した後、なぜか彼女も彼女のマジカルナイツたちも王都を去ってしまったわ。

 彼女たちが何も告げずに去ってしまったことが、穢れた魔力を増やすキッカケにならないことを願うばかりよ。


 本当であれば、心が穢れた魔力に染まらないよう見守る出来だったのでしょう。それが出来なかった私の責任だと思っているわ。


 どうかこの世界を見捨てないで欲しいの。


 人は欲に呑まれやすいわ。けれど、それでも私は愛を信じる人々を守りたいと思ったの。

 私の代わりに仕事を引き継がせるのは心苦しい。

 でも、きっと貴女ならばこの世界を守ってくれると信じているわ。


 どうか一つ一つの事と向き合いながら、穢れに染まってしまった人たちを救ってあげて欲しい。

 貴女の強い志がきっと明るい未来を照らしてくれると願っています。



 心から愛を込めて

 ローナ・オレイヌ


 **********




 読み終えた手紙を持ったまま、ルナセイラはため息を吐いた。


 聖女ローナは元々の婚約者と旅を始めたのだろう。

 そして聖女の加護を婚約者であるジェイキンスに与えた。しかし、旅をするうちにロウェインを本気で好きになってしまったのだ。

 

 恋する気持ちは誰にも止めることはできない。

 ただ、聖女ローナが悩みながらも最後に一人の人を選んだのだという事にホッと安心した。



 「――聖女ローナ様がアイナさんみたいな方じゃなくて良かったわ・・・・」



 握っていた便箋を封筒にしまうと、再び箱の中にしまう。


 『閉まって』と願うと、カチッと音が鳴り箱は施錠されたのだった。

 





 夜は昨日と同じくセイフィオスと同じ部屋。


 午前のセイフィオスとのキスが思い出されて気まずかったが、彼は全く気にする素振りを見せない。

 ルナセイラが入浴を終えて戻ると、慈愛の籠った眼差しで彼の膝の上に座らせた。



 「セイ?」



 「今日はいっぱい加護を与えたでしょう?ちゃんと消毒しておこうね」



 「――!!」



 動揺するルナセイラを愛おしげに見つめてくる彼の色香が強くて、ついついされるがままになってしまう。

 きっとセイフィオスは我慢ならなかっただろう。それでも、ルナセイラの気持ちを汲み、世界の平和のために我慢してくれているのだ。

 まだ恥ずかしい気持ちに慣れそうもなかったが、彼の深い愛情に包まれる幸せをルナセイラは感じていた。



 呼吸が乱れて力が抜けて、セイフィオスに身を委ねながら夜は更けてゆくのだった。



 


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