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 「殿下・・これはアイナさんのマジカルナイツではなくて・・私のマジカルナイツ選定なのですよ?」



 サーシェンはともかく、エディフォールがアイナに好意を抱いていることは皆の知る事実。



 ――なんで私のマジカルナイツになりたがるの??



 「――俺は聖女を助けるために努力してきたつもりだった・・だが、結局アイナを堕落させてしまった!

 ・・それでも俺はアイナが穢れた魔力とやらに魅了されているのなら助けなければならない!

 俺もルナセイラ嬢と共にアイナを救いたいんだ!!君と共に戦わせてほしい!!」



 苦し気に告げる彼の想いは、きっとアイナを想う気持ちだけではないのだろう。

 王族としての責務を全う出来なかった悔しさに向き合い、前を向こうとするエディフォールの決意も感じられる。



 「エディ、お前のスキルランクはSだったよね?ここの団員たちは、皆魔法・武術スキルはSSらしいよ。

 負け確定でもやるのかい?」



 「関係ありません!!参加させてください!!」



 ――殿下・・・・



 「わかりました。お二人の参加を認めます!模擬戦を見て私も判断したいです!」



 セイフィオスに『お前は無理だ』と遠回しに言われているのに、それでも食い下がるエディフォールにルナセイラは言葉だけで答えは出したくないと思った。



 ――彼等の本気を見てから判断しても遅くはないはずだわ!



 ルナセイラの言葉に皆納得し、広場に戻り模擬戦は再開された。





 聖女ローナ様のマジカルナイツは五名だったらしい。

 すでにルナセイラのマジカルナイツは二名決まっている。

 残り三名に対し、参加者は九名。


 レインとセイフィオスの戦いのときのような勝ち負けが基準ではなく、残りの三名はそれぞれの個性や強味を見ての選定となるだろう。

 その為、対戦相手となるセイフィオスとレインには、予め「負かすことではなく、十分間で能力を引き出すような戦いを見せてほしい」と、伝えてある。






 模擬戦はセイフィオスとレインが交互に相手をして順調に進んでいく。



 流石スキルSSの団員たちの戦いと言えるだろう。

 それぞれが自分の武器を用いて、鮮やかな技能力を魅せた。


 しかし、その中でひときわ目立つ者がいた。



 「次の対戦はヘラとセイフィオス!・・―――始め!!」



 フレキセンの合図と共に、攻撃を仕掛けたのはヘラだった。

 今回の模擬戦参加者で唯一の女性団員である彼女は、ルナセイラより少し背が高い位の女性だ。

 

 前髪が短く切り揃えられ、ポニーテールで結われた長いミルクティ色の髪の毛、ぱっちりとしたこげ茶色の瞳のアーモンドアイ。鍛え上げられたバランスの良いボディラインは健康的で美しい。


 何も持たずに走りだしたかと思うと、攻撃を仕掛ける前で彼女の影から双剣が現れ、しっかりとヘラは握りしめると鮮やかに剣撃を繰り出していく。


 闇属性の影を使ったスキルなのだろう。


 武器を出すのもしまうのも自由自在。

 出すタイミングも素晴らしく、相手の隙を作るのが上手い。そして、幾つもの種類の武器を使いこなす様も優雅であった。


 魔法を行使しながら攻撃を仕掛ける勢いは、セイフィオスにプレッシャーを強く与えることに成功した。身のこなしも素早く、相手の剣劇も華麗に躱す。


 ルナセイラはその美しい戦いに魅入られたのだった。






 そして、次はサーシェンとレインの対戦が始まる。


 開始と共にレインが魔法槍を創造したことに、サーシェンは瞠目した。



 「――!!ちょっと・・魔法剣の創造が出来ちゃうわけ?~~~なんか腹立つなぁ~」



 珍しく普段飄々と魔法を繰り出すサーシェンが機嫌の悪さを露にした。

 問答無用で突きにくるレインの攻撃を、小さな防御障壁で簡単に防いでしまう。

 防戦一方かと思いきや、魔法槍を振り下ろした瞬間レインの顔を何かが(かす)めた。

 


 「な・魔法弓?!」



 皆サーシェンの周りを飛び回る魔法弓を見て驚愕する。



 ――サーシェンまで魔法武器を創造できるなんて聞いてない!!



 「ふふ・・よく躱せたね~」



 「お前も魔法武器を創造できるのか!」



 サーシェンはレインの驚く顔を見て口角を少しだけ上げたが、それでも機嫌が悪そうなのは変わらない。



 「本当は僕だけしかできないと思ってたのに嫌になっちゃうよ!・・まるでこの僕が二番手みたいだろ?」



 サーシェンが機嫌が悪かったのは、魔法武器の創造できるスキルを先に出されたことが原因だったらしい。


 言い終えるとすぐに魔法弓を指で操りながらレインへ攻撃を仕掛けていく。

 追尾してくる弓は、躱すか受け止めるしかない。

 本人は悠々と弓を操るだけで、レインだけがプレッシャーをかけられる様は圧巻だ。


 しかし、それだけでは終わらない。



 「僕を二番手扱いしたんだからしっかり勝たせてもらうよ!」



 にやりと笑うと、サーシェンはなんと魔法弓を五本も同時に創造し、一斉に放つ。

 一本でも強烈な攻撃の威力がある五本の魔法弓を、同時に魔法壁で防ぐのは難しい。



 「――っくそっ!!」



 防御魔法はそこまで強くないレインはあたることを覚悟した。

 しかし、当たる直前でセイフィオスがレインに防御壁を張り助け舟を出す。



 「全く・・模擬戦だというのに、ちょっとやりすぎなんじゃないかい?」



 「そう?僕はまだまだ余力を残してたけど?」



 セイフィオスの言葉にサーシェンはいつものように飄々と答えて戦いは終わった。



 ――凄い!・・サーシェン様は魔法のスキルもセンスも凄いとしか言いようがないわ・・



 一方的な戦い方に、サーシェンの実力は示された。

 ルナセイラは模擬戦の最中、優雅に魔法を繰り出すサーシェンの姿にただただ感嘆した。






 最後のエディフォールとセイフィオスの闘い。



 セイフィオスの魔法剣に対し、全力で身体強化と防御魔法を行使したエディフォールは恐れず立ち向かう。

 魔法剣の威力の方が絶大であるが、それでも強化させた武器でエディフォールは食い下がる。


 まるでその戦いは、セイフィオスと戦うためだけに特訓されたかのようにも見えた。


 魔法・武術スキルがSである彼にとって、SSランクのセイフィオスは脅威でしかない。それにも拘わらず、しっかり食らいついていっているのだ。


 激しくぶつかり合う剣の衝突音。

 身体強化によって目で追うのが困難な程、素早く攻撃しながら魔法で隙を作る戦闘スキル。


 まさにエディフォールだからこそできた努力により生まれた戦い方だった。


 防御魔法と強化魔法の使い方が絶妙で、全く魔法剣に引けを取らない。

 かすり傷を負わせることは叶わなかったものの、最初諦めさせようと冷徹な眼差しでエディフォールを見つめていたセイフィオスはもういない。

 明らかに気色を浮かべ、エディフォールの可能性を確かに感じているようだった。


 勝ち負けは判定されなかったが、間違いなくセイフィオスはエディフォールを認めていた。



 「エディ、いつの間にか随分強くなったじゃないか・・正直これほどとは思わなかったよ」



 「当然ですよ・・兄上に追いつくため・・それなりに努力は重ねてきましたから!」



 観客の誰一人としてエディフォールがスキルランクSだからと納得しないようなものはいなかった。

 むしろセイフィオスに同調し、大きな歓声が上がったほどだ。

 




 九名全ての模擬戦後、ルナセイラの選定が終わり皆の前に立つ。



 「参加してくれた皆さん、素晴らしい戦いを見せて下さってありがとうございました!

 皆さんが本当に優秀なので選ぶのが非常に難しかったですが、私の一存で共に戦って欲しい方を決めさせていただきました!

 ――・・ですが、もう一度申し上げます!!

 私はマジカルナイツに聖女の加護を与えるからこそ、裏切るような方と行動は共にはできません!

 一生・・私と想いを共にしてくださる方だけしかいりません!

 もし・・気持ちが中途半端な方は、今辞退してください。事態希望する方はいませんか?」



 ルナセイラは自分の想いをまっすぐに伝える。

 参加者一人一人と目を合わせるが、誰一人として躊躇ったり目を逸らす者はいなかった。

 


 「――ありがとうございます!!

 では選んだマジカルナイツ三名を申し上げます!!」



 広場はしんと静まり返った。



 「私のマジカルナイツは・・・サーシェン・マジェスティ!・・・・ヘラ!!」



 わ――っ!!と、歓声が上がる。



 「――そして・・・・エディフォール・ブレド!

 以上三名です!」



 大きな歓声と共に、ルナセイラのマジカルナイツ五名が確定した。

 歓声冷めやらぬ中、ルナセイラは残りの六名にもそれぞれ感謝の気持ちを伝えた。

 この村の『聖魔団』の団員たちは、王国のマジカルナイツに十分匹敵する能力の持ち主ばかりなのだという事がわかり、嬉しくて堪らなかった。



 ――こんなに素晴らしい仲間がいるなんて・・私は本当に幸せだわ・・





  

 「聖女様、それではこれからどういたしましょうか?」

 


 模擬戦の感動で熱が冷めやらぬ中、フレキセンはルナセイラの側に寄り問う。



 「フレキセン様、私はもう少し魔力溜まりのこと、『魔信仰』のこと、聖女の力の事が知りたいです。

 マジカルナイツの皆と共に、話を聞かせてもらえますか?」



 「承知いたしました。では執務室にてお話ししましょう」



 「お願いします!」



 ルナセイラの言葉に了承すると、すぐに部屋を整えるよう数名の団員にフレキセンは指示を出すのだった。




 

 

 執務室は、いつの間にマジカルナイツも全員座れるだけのソファが用意されていた。

 当然のようにルナセイラの隣にはセイフィオスが腰かけている。

 レインとサーシェンは納得がいかないようで少々不服そうではあった。しかし、ひとまず全員ソファに腰かけてフレキセンの入室を待つ。



 「――お待たせいたしました。

 ・・・・それで、何からお話し致しましょうか?」



 フレキセンは小箱をもって部屋に入りソファに腰かけると、にこりと微笑みレナセイラを見つめたのだった。

 




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