64話 別れの握手
グレーテル城塞都市、冒険者ギルド会議室内。
ロキ達はナポレオン戦闘後から2日の時間が経っていた。
ロキがナポレオンを倒しノワールと一緒に倒れたドレインを介抱してると、冒険者ギルドの副ギルドマスターのレイカが部下達と共に駆け寄って来た。
助けを呼んでいないのに何故ここに来たのか質問すると、空に竜の首を見たとか、爆炎が見えたとかで、危険性が無いか確認するため調査に来たとのことだ。
爆炎は....まぁ、俺のせいだろう。ナポレオンを倒すために赤い粒子を爆発したものだと思う。空に竜の首は? たぶんノワールのせいだ。隣でドレインを介抱していたノワールの顔見ていたら申し訳なそうな表情と長耳が垂れ下がっていた。
レイカ達にここはムラカミ盗賊団の拠点で、頭領のナポレオンと手下達を倒したことを報告したら驚きの声を上げていた。レイカはロキの言葉を信じたが、他のギルド職員は疑いの声を上げた。レイカが直ぐに疑ったギルド職員を窘めたが納得はしておらず、ロキとギルド職員の間に険悪のムードが生まれた。
そこに隣で顔を俯いていたノワールが声を上げる。
『ロキは間違いなくナポレオンを倒した。わたくし”リディア・ウタ・ノワール”が証人よ』
声を上げたノワールを見て、レイカ以外のギルド職員が驚きの声を上げる。
どうやらギルド職員はノワールに気づいていなかったようだ。顔は土や砂で汚れ、服装はいつもの騎士の恰好ではなく、乞食や奴隷が着る汚れた服装だっため分からなかったらしい。
レイカは溜息を吐きながら呆れた視線で部下達を見て叱っていた。冒険者ギルドの職員が見た目だけで差別をするなと怒っていた。
ノワールの言葉を信じると、疑っていたギルド職員達は頭を下げて謝罪してきた。ロキは謝罪を受け入れ解決した。だが、その後が大変だった。
ノワールの薬物による身体能力の低下。それを聞いていたギルド職員の一人が奇声を上げて憤怒していた。たぶん..ノワールのファンの一人なのだろう。
それから、ムラカミ盗賊団の壊滅の報告と拠点の調査。
至急応援を呼ぶため。ギルド職員と護衛の冒険者達が早馬でグレーテル城塞都市に戻っていた。
ロキ達3人はまだ、体力が戻っていないのでレイカの指示でムラカミ盗賊団の拠点にテントを張り。テントの中でロキ達は休ませた。
ロキとノワールはギルド職員から提供された温かい食事を食べ身体を休めることにした。ドレインはまだ、目を覚まさなかった。
ノワールは休む前のレイカに相談していた。たぶん森の中で亡くなった部下達のことだろう。
次の日の朝にドレインが目を覚まし一緒に食事をしていた。
ドレインの様子を見るが案外元気そうだった。ナポレオンを倒すために戦技を獲得し、金剛の身体にダメージを与えた強力な一撃だったが。使用するには大量の血液が必要である。
ドレインが食事中に説明してくれると、戦技だけではなく関連したスキルも獲得したようで、そのおかげで失った血液を戻っているだそうだ。
朝日が昇りきった時間帯に応援の冒険者達やギルド職員が大勢来た。他にも騎士団の一団がノワールに駆け寄って来た。
ノワールは涙を流さず上官であろう騎士の男性に報告していた。男性が部下に指示すると、薬品が入った瓶を取り出し、それをノワールに渡して、ノワールは頭を下げて受け取ると薬品を飲み干す。ノワールの身体が淡く光ると自身の身体を調べていた。あれは、解毒薬かなんかなのだろう。
ノワールは身体能力の戻ると仲間の騎士に予備の騎士装備を借りていた。
ロキとドレインはレイカ達と一緒にグレーテル城塞都市に戻ることになっていた。後は騎士団の指示で拠点を調べるだそうだ。もしかしたら見られたくない物があるからかもしれない。
それでもレイカの部下のギルド職員と冒険者が数人残った。レイカがムラカミ盗賊団を討伐したのはロキとドレインであり、拠点にある物は全て討伐したロキ達の物であると主張した。
ノワールの上官である男性とノワールは当然だと納得していたが、他の騎士から数人文句が出たがノワールが睨みつけ黙らせた。
『ロキ、ドレイン君。わたくしはここに残って調査に加わる。あぁ~心配しなくっていい、身体能力は戻ったから万全だ。貴重な品があったら、わたくしが預かって持ってくる。では、グレーテル城塞都市でまた会おう』
そこでノワールと別れ、夕方にはグレーテル城塞都市に戻った。ロキとドレインは冒険者ギルドが手配した高級宿で泊まることになった。
次の日の朝にムラカミ盗賊団の報告を聞きたいとのことで警護付きの宿で泊まることになった。
高級宿には個室に風呂が付いており、当然ロキは汚れた身体を洗い流すため、即風呂に入った。
風呂に入った後でドレインの部屋に行くと、ヘイロスとドランがドレインと談笑していた。ヘイロス達に聞くと店で店じまいをしてたらギルド職員が連絡に来て、急ぎ足で向かって来たそうだ。
その後は4人で一緒に高級宿の食事を食べながら、ボブオークのことやムラカミ盗賊団のことを話した。ドレインが戦技を獲得してムラカミ盗賊団の頭領のナポレオンにダメージを与えたことを話したら、冒険者であるドランはムラカミ盗賊団の脅威を知っているため、最初は驚き、息子の成長を喜んで騒ぎ飲んでいた。
ドランが酔い潰れと、その日は早めにお開きになった。
そして次の日。
ロキとドレインは冒険者ギルドに行くと、会議室に案内され椅子に座って待機していた。
しばらく待っていると、コンコンとドアを叩く音が聞こえドアを開ける音が聞こえる。視線を向けるとレイカが一礼して部屋に入って来た。その後ろには他のギルド職員が追随していた。
レイカ達が椅子に座ると、レイカが笑顔で話してきた。
「おはよう二人共。身体は休めましたか」
「はい。宿の手配ありがとうございます。いい風呂でした」
「親父とヘイロスさんに連絡ありがとうございます。レイカさん」
「いえいえ、冒険者ギルドとして当然のことをしたまでです」
3人は簡単な挨拶を済ませると、レイカが本題の話しに切り替える。
「では、ムラカミ盗賊団の壊滅、冒険者ギルドとしてお礼を申し上げます。ギルドとして特別報酬金として白金貨1枚になります」
「えっ! 白金貨」
「....白金貨」
「二人共落ち着いて下さい。話しを最後まで聞いて下さい。それと領主様から感謝の言葉と報酬金の白金貨1枚があります。それと..二人の冒険者ランクを特例としてCランクに上げます。ロキ君は1ランク上がり、ドレイン君は4ランク上げになります」
ロキとドレインはレイカの説明を聞いて驚き、考えをまとめようと思考を巡っていた。
ロキは質問するため小さく手を挙げる。
「レイカさん質問いいですか」
「はい、どうぞ」
「報酬金は領主様と冒険者ギルドと合わせて白金貨2枚でいいですか?」
「はい、その通りです」
「冒険者ランクは何で上がったんですか? ムラカミ盗賊団を壊滅はさせましたけど....」
「それが一番の理由です。Dランク冒険者がゴブリンやオーク等低ランクの魔物討伐を完遂出来る者としてます。Cランク冒険者は魔物もそうですが、特に人に対して対処出来る者達、盗賊等の犯罪者を討伐出来るベテラン冒険者になります。本来はギルドで試験を行いランクが上がります」
ロキはもう一度手を挙げて答える。
「もしかして..ムラカミ盗賊団を壊滅の壊滅が、ランク試験の代わりなたんですか」
「はい。ロキ君もドレイン君も、これからはCランクとなりベテラン冒険者になります。そして、依頼を受注できる量、質も上がります。中には責任も重大な依頼もありますので頑張って下さい」
レイカは真剣な表情でロキ達の目を見て説明する。
ロキ達はその期待に応えるように声を重ねる。
「「はい」」
その後ロキ達は報酬金の分配になった。特に揉めることも無く白金貨を1枚ずつに分けた。そして、もう一つナポレオンの拠点にある略奪品をどうするかだ、ロキは即決で辞退した。
理由は簡単だ元日本人として、同じ日本人が犯罪を犯して手に入れた物を受け入れられなかった。それにドレインが必要ない物はアカマツ村の復興費用に使ってみたらどうだと提案したら、受け取るのを渋っていたドレインが少し考えると、それならと心地よく同意した。
レイカ達にノワールとナポレオンのことを略説で説明した。具体的な事は当事者であるノワールに話しを聞くことで終わった。ロキ達は新しいギルドカードを受け取り、報酬金も分けるとレイカ達に挨拶して会議室を出る。
ロキ達は冒険者ギルドでの用事を終え並んで一緒にスライドドアを通る。外に出るとギルドの前でヘイロスとドランが馬車の前でロキ達を待っていた。
ドランがロキ達に気付く手を挙げる。
「二人共こっちだ。もう用は終わったのか?」
「はい、全部終わりました」
「そうか..ロキ世話になったな、礼を言うよ」
「そんな....俺は何もやっていないです」
「昨日の夜たくさん話しを聞いた。息子にとっては大事な経験になったはずだ。親として心配した部分もあるが、男としては胸を張って自慢出来ることだ」
ロキはドレインに視線を向けると。
「俺も....たくさんドレインに教わりました。そして、命を助けられました。感謝しかありません」
「親父..ロキ..」
ドレインは恥ずかしそうに顔を俯ける。
ドランの隣にいたヘイロスが声を上げる。
「本当に世話になったロキ少年。アカマツ村にいつでも遊びに来てくれ。ドラン、ドレイン、そろそろ出発するぞ! ドレイン..別れの挨拶があるんならしっかりやれ。では、またなロキ少年」
ヘイロスはロキに手を振って先頭の馬車に向かう。ドランもヘイロスに追随して行く。
「ロキ....息子の事....ありがとな。いつでも村に来てくれ」
「はい、ヘイロスさんとドランさんも..また会いましょう」
ドレインが一歩前に出る――ロキが渡した短剣を持って。
「ロキ..短い間だったけど一緒にパーティーを組めて良かったよ。死ぬ思いを何回もしたけど....俺の人生の中で濃密な経験だった。ありがとな....ロキはこれからどうするんだ? このままグレーテル城塞都市で冒険者をやってるのか?」
ロキは横に顔を振る。
「当分の間はいると思うけど..拠点を変えるつもりだ。近い場所なら王都か迷宮都市だな。ドレインはアカマツ村に戻ったら冒険者はどうするんだ....続けるのか?」
ドレインは頷く。
「村に戻って復興が終わったら..冒険者になるよ。俺も迷宮都市ラクスを目指すよ」
「そうか..そうしたら、また、一緒に冒険出来るな」
「どうするかな....ロキと一緒にいると死ぬ思いするからな....」
「友達だろ酷いぞ」
「冗談だよ。いつか..一緒に冒険しよう。二人でダンジョンを攻略しよう」
「あぁ、約束だ」
「約束だロキ。それと..短剣とマントありがとな....」
ロキとドレインが未来のことを話してると、ドランさんが。
「ドレイン! 出発するぞ!!」
ロキとドレインは同時に――手を出すが。
二人は苦笑いする。
ロキがドレインを見て。
「これじゃ握手出来ないな。手を変えるよ」
二人は握手して、しっかり握る。
「またな、ドレイン」
「ロキ....またな....」
握手した手を放し、ドレインは馬車に向かう。
ロキはドレイン達は見えなくなるまで見届ける。
そして、最後に呟く。
「......また..一緒に冒険しような....」
ドレインは短い時間だったが信頼できる友達であり、仲間だった。
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マリデン商会、執務室。
「どうなっている! ナポレオンから、まだ連絡はきていないのか!! クルーズ」
「ノドス様申し訳ございません。連絡は来ておりません」
マリデン商会の商会長のノドスは荒れていた。ムラカミ盗賊団に青い妖精――ノワールを捕まえることを依頼した。ノワール達はムラカミ盗賊団を調査するため古き新緑の森に入ったことは報告で知っていた。
だが、それからの連絡が一切無く心情に余裕が持てなくなった。
「くそ! 盗賊がーー! もしや..ノワールを手放すのを惜しんでいるわけではないだろうな、ナポレオン目が! くそ、客からの催促が来てるというのにどうしたらいい。マリデン商会のお得意様だ、信用を失う訳には行かない」
「提案がありますノドス様」
「何だ?」
「私がノワール様を迎えに行きます」
ノドスはクルーズを見て安心した表情をする。
「ふっふっ、そうか儂にはお前がいた。元Bランク冒険者だったお前がな!」
「はい、お任せください。ノワール様を必ず手に入れてきます。それで..盗賊達はどうしますか....」
ノドスは不敵の笑って答える。
「クルーズ..お前の好きにしろ。ノワール以外はいらん..お前の趣味にしろ。組織には儂が説明する」
クルーズ口角を裂けるぐらい上げる。
「ありがとうございます。今晩は....酒が旨く飲めそうです」
クルーズは40代後半の男性で元Bランク冒険者の強者だ。白髪で執事服を着ている。そして、趣味は自分の手で殺した死体を見ながら酒を飲むこと。
「では、行ってまいります飲むノドス様」
「頼むぞクルーズ」
クルーズはその場で一礼して、部屋を出るため後ろを振り向くと、そこには。
「ん! 誰だ貴様は!」
「全身真っ黒とは気持ち悪い奴だ! いつの間に部屋に入って来た。警護を呼べクルーズ!」
「ノドス様....ここはお任せください」
クルーズはノドスを守るように前に出る。そして、改めて目の前の存在を見る。
全身真っ黒な恰好で顔は見えず能面のような仮面であり、後ろ頭は尻尾のように伸びていた。着ている服装は執事服だが炎のように揺らめいてた。炎は竜の鱗のようになっており炎の鱗が執事服を型取っていた。両手と両足は竜の顔の形になっていた。
ノドスは目の前にいる存在を見て魂から恐怖を感じていた。
クルーズもまた恐怖を感じていたが、それ以上に好奇心が増さっていた。一目で人間ではないと感じ魔物の類だと思っていた。
「化け物目....鳥肌が立って居るわ。くっくっくっくっくっくっ、行行くぞ! がはっ!」
クルーズは一瞬で首を掴まれ、身体を持ち上げられる。そして、力と水分吸い取られ――。
「ががががががががが.....」
――みるみるうちに干からびて、最後に魂を吸い取られる。
ノドスはクルーズが一瞬で殺されのを見て。
「ひぃぃぃぃぃぃぃいぃぃぃぃぃ」
謎の者はクルーズだった者を手放すと、机の角に首が当たると、干からびて脆かった首がもげる。
「ひぃぃぃぃぃぃぃいぃぃぃぃぃ」
首がコロコロと転がり、ノドスの前で正面を向くが、顔には目がなく苦悶な表情をしていた。
「ひぃぃぃぃぃぃぃいぃぃぃぃぃ!?」
そして、クルーズの口は開く、そこには舌が見当たらない。
「ひぃぃぃぃぃぃぃいぃぃぃぃぃ!?」
ノドスは何度も悲鳴を上げ、下半身部分が濡れていた。
謎の存在は近づいて来る。
ノドスは生き残るため必死な声を上げる。
「き、貴様は....あなた様は誰なんだ。だ、誰かに儂の暗殺を頼まれたのか? 倍、いや、10倍出す。どうだ......頼む」
謎の存在は片手を前に出す。
ノドスは交渉に成功したと思い喜色な声を上げる。
「おぉ、儂に雇われるか。あなた様と儂が協力すれば..裏の世界で一番を狙えますぞ」
ノドスは握手を求められていると思い片手を前に出し。
謎の存在とノドスは握手をするが――。
「い! 申し訳ないが手が痛いのだ。弱めてくれないか....がっ! 何を..力が吸い取られ....嫌だ..死にたくない....たすてててて.....」
――ノドスの力と全て吸い取り、最後に魂を吸い取られる。
干からびて死んだノドスは床に倒れる。顔は天井を見るが苦悶な表情で目と下が無くなっていた。
謎の存在は少しだけノドスの顔を見下ろして。
「”悪食悪童”」
誰もいない部屋で悪食悪童は自らの名を語る。どうして名を語ったかは悪食悪童しか知らない。
悪食悪童はその場から姿を消し、マリデン商会にいる肥えた魂を残らず吸い取っていた。マリデン商会の七割の人間が全て干からびて死んでいた。
騎士団と冒険者ギルドで調査されたが犯人も殺害方法も分からず解決に至らなかった。この事件はグレーテル城塞都市の未解決事件として残り続けた。




