ー朝焼けの章28- 弥助(やすけ)くんが燃えたぎっているんやで?
「いいんやで!いいんやで!まずは足の動きをちゃんとするところやで!」
「うっぷおっぷ!うっぷおっぷ!」
珍二郎くんが、今日も頑張って、川で泳げるように頑張っているんやで?ああ、珍二郎くんはほんまに真面目やなあ?わいもなんだか触発されそうなんやで?
「おっし。わいも、もうひと泳ぎさせてもらうんやで!珍二郎くん、頑張ってついてきてやで!」
「うっぷおっぷ!うっぷおっぷ!」
わいと珍二郎くんの水練の真似をしだしたひとらも増えてきたんやで?やっぱり、新人さんたちは普段、川で泳ぐことなんてないからなあ?みんな、どこからか拾ってきた鍋のふたや、木の板、丸太なんかに掴まって、水練を行っているんやで?
「皆さん、頑張っているみたい、ですね。信長さまが喜んでいま、したよ?こんな画期的な泳ぎの練習方法はいったい誰が考え付いたのですか?そのモノには褒賞を与えましょうか?って言って、ましたよ?」
「ほんまかいな、ひでよしくん!そんなら、わいの名前を信長さまに伝えておいてくれやで!?わい、その報奨金で、千歳ちゃんの晴れ着を買うさかい!」
「はいはい。わかって、いますよ?信長さまには四殿の名前を伝えておき、ました。近々、信長さまから褒賞をいただけると想うので、楽しみにしておくといいかも、ですね」
やったんやで!まさか、珍二郎くんの世話を買ってでたら、褒賞が転がりこんできそうなんやで!よっしゃ!こりゃ、今夜は飲みに行かなならんのやで!?
「オウ。四さん。羽振りがよさそうなので、弥助にもおすそわけしてほしいのデス!」
あっ。バイの弥助くんが近寄ってきたんやで?このひと、肌も黒けりゃ、腹も黒いと、なかなか厄介なお友達なんやで?
「オウ。なんデスカ?その胡散臭いモノを視るような目つきは。まるで弥助がゆすりたかりにでもきたかのように視るのはやめてほしいところなのデスヨ?」
語るに落ちるとはこのことやなあ。でも、あぶく銭はパッと使ってしまうのが良いとも言うもんなあ?
「わかったんやで?信長さまから、いくらもらえるか、今のところわからへんから、もらったあとに飲み屋にでも行くんやで?弥助くんはうわばみやさかい、ガバガバ飲まれて、赤字にされちゃたまらへんのやで?」
「ハイ。では、信長さまから報奨金を頂いたら、忘れずに弥助を飲み屋に連れていってクダサイネ?」
弥助くんがそれだけ言うと、また、訓練に戻っていくんやで?
「なんや。弥助くんはほんまにたかりに来ただけですかいな。しっかも、田中くんところの部隊を抜け出してまでやってくるとは想ってもいなかったんやで?」
「それだけではないと想うんです、けどね?多分、何か用事があったと想うのですが、弥助殿のことですから、お酒が飲めることに嬉しくなって、頭から飛んだだけではない、ですか?」
と、ひでよしくんがわいに言っているとやで?件の弥助くんがこちらに戻ってきたんやで?
「オウ、ノウ!弥助としたことが大事なことを忘れていたのデスヨ!四さん、1カ月ほど前に【神の家】デシタッケ?その怪しげな組織とトラブルになっているという話だったじゃないデスカ。あれから、いったいどうなったのか、弥助には一切、連絡がきてないのデスヨ?あれからどうなったのデスカ?」
「あっ。そう言えば、弥助くんには何も言ってなかったんやで?なんや、弥助くんは巻き込まれたかったんでやんすか?先に言っておきますけど、彦助くんも嫌がらせをされるようになったんやで?」
「オウ、マイ、ゴッド!弥助の彦助さんに嫌がらせをするとはいったい、どういうことデスカ!弥助の利かん坊で、【神の家】の連中を亡きモノにしてやるのデス!」
「落ち着くんやで?そりゃ、弥助くんが常々、彦助くんのお尻を狙っているのは皆の知るところやで?でも、掘ってもない男の尻を守るために弥助くんが火中の栗を拾いに行く必要はないんやで?」
「し、しかしデスネ?惚れた男が危害を加えられているというのであれば、弥助が助けねばならないのは当然の権利なのデスヨ!いや、権利などではありマセン。これは義務なのデス!」
あかんわ。こうなったら、弥助くんは彦助くんのお尻に一直線なんやで?彦助くん、上手く逃げてくれやで?このままやと、出会って5秒でお尻といちもつが合体なんやで?
「おっす。四さん。聞いてくれよ。今朝、俺が住んでる長屋の前に猫の死体が転がってたんだけどよ?これって、【神の家】の奴らの仕業だと想っていいのか?」
「あかん!彦助くん!今、ここに来たらダメやで!弥助くんが未だに彦助くんのお尻を狙っているんやで!」
「オウ!スイート・マイ・ハニー!弥助が今すぐにでも彦助さんの傷ついたハートを癒してみせるのデス!」
「待てえええ!なんで、ここに弥助が居るんだよおおお!弥助は裁判で俺から10メートル以内に入らないようにって判決が下されたじゃねえかよおおお!」