4話ー昼休みの食堂
午前中の授業も終わり、ラピスとリィルは校舎内の食堂へ向かっていた。
食堂は昼になるととても混雑するため、早足で向かっていたのだが....
「ううっ、急いで来たのに…」
既に食堂は人であふれかえっていた。
それを見たリィルはがっくりと肩を落とし、ラピスはその人の多さに固まってしまう。周りからは視線が集まっているにもかかわらず、二人は全く気づかない。
「あーっ!キョウ」
ふいにリィルが大声を上げた。そして小走りで黒い短髪に黒い瞳の男子生徒のもとへ向かうと、勢いよく抱きつく。
リィルを見て、男子生徒は溜息をつく。
「おい、リィル。そろそろ離れろ、飯が食えない」
「久しぶりに会えたのに」
しぶしぶといった様子でリィルは腕を離す。
周りの生徒たちは呆然とした様子で二人を見ていた。
もちろんラピスもだ。リィルが行ってしまった為、一人で固まっている。
(……人、たくさん)
同年代の大勢いるところに一人でいる、という事実に固まってしまったのだ。
そして小さく震え、下を向く。
「ラピス?平気、気分悪いの?」
その声に顔を上げると、リィルがラピスの顔を覗き込んでいた。
ラピスは何も言わず、ただただ首を振る。
リィルは首をかしげると、ラピスの手を引き男子生徒のもとへ戻った。
「キョウ、この子はクラスメイトのラピスよ。ラピス、この人はキョウだよ。 私の幼馴染なの」
リィルが紹介すると、ラピスは軽く頭を下げる。
「…ラピス・レイン、です」
「キョウ・セツナだ」
そういうとキョウはラピスに右手を出す。
握手ということに気づき、ラピスも右手を差し出す。
「…!」
(この人……)
ラピスが僅かに肩を震わせると同時、キョウも同じ反応をしたのを、ラピスは見逃さなかった。
リィルは二人の様子に気づくこともなく、口を開く。
「じゃ、ご飯食べよ!」
いつ持ってきたのか、その手にはラピスと自分の分の昼食をのせたトレーを持っている。
ラピスは話している二人の横で特に話に参加するするわけでもなく、黙々と昼食を口に運ぶ。
「じゃあね、キョウ!」
「おう」
昼食を済ませ、リィルはキョウに手を振る。
「いこっか、ラピス」
「うん」