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第七話 私にもできること

 ——リリアの駄菓子屋、開店四日目。


 午前中にオスカーが来店し、リリアに尋ねた。


「リリア、調子はどうだ?」


「お父様、初日とは違い、お客様が減っているのです」


「だろうな。ヴィクトリアとセシリアも同じことを言っていた。レオンはどう思う?」


「はい。まだ店の認知度が低く、客の心も十分に掴めていないと思います」


 オスカーは口元を緩めた。


「何か策はあるのか?」


「はい。開店前に依頼は済ませてあります」


 オスカーは振り返り、開け放たれた入口を見た。


「明日、入口を改築しようと思う。壁際に置いてある駄菓子を動かしておいてくれるか」


「はい。お父様」


 オスカーはその場を立ち去った。


 リリアはレオンに聞いた。


「レオン、お客様が減っているのはなぜですか?」


「開店初日は物珍しさもあって来店する者がいた。客足が伸び悩んでいるのは、客の心を掴めなかったからかもしれない」


 レオンは変わらぬ口調で続けた。


「もっとも、リリアの駄菓子屋の客層は子どもだから、彼らが足を運びたくなるものがあれば、流れは変わると思う」


「レオンは何を依頼されたのですか?」


「僕たちは駄菓子で商売をしている。だから、子どもが遊んで食べられる駄菓子をエルザに依頼した」


 リリアは小首を傾げた。


「子どもが遊んで食べられる駄菓子ですか」


 ため息をついた。


「レオンはすごいですね。私よりも商売の才能があります」


「一つ勘違いしないでほしい。何を売るかで迷っていたリリアに、僕は駄菓子屋を勧めた。これは僕の責任でもある」


「レオンのことは信頼しています」


 リリアは膝の上で指先を握り締めた。


「私も何かお役に立てればと思ったのです」


 レオンは猫背になったリリアの背中を見つめた。


「ああ。その時が来れば、リリアの力が必要になる。今日は早めに店を閉めて、駄菓子を移動させよう」


 リリアは浮かない表情のまま返事をした。


「……はい」


 *


 ——リリアの駄菓子屋、開店五日目。


 本日は店の出入口を改築するため、定休日となった。


 元上菓子屋の会議室で、リリア、レオン、グスタフ、エルザの四人が集まっていた。


 グスタフが会釈する。


「騎士様、ご注文の品が完成しました」


「それで試したのか?」


「はい。何度か失敗を重ねましたが、ご覧ください」


 グスタフは一枚の駄菓子をテーブルに置き、爪楊枝を片手に持った。


 それは、薄い長方形の板状の菓子で、表面には動物の絵柄が溝になって刻まれている。


 彼は型抜きを始めた。


 やがて型抜きが終わり、笑みを浮かべた。


「騎士様、如何でしょうか?」


「リリア、見ていたな。キミにも型抜きをしてもらう」


「はい」


 リリアは型抜きと爪楊枝を手に持ち、型抜きを始めた。


「あっ」


「難しいだろう?」


「はい。割れてしまいました」


「成功するまでやってもらう。役に立ちたいんだろう?」


「はい。わかりました」


 リリアは真剣な表情で型抜きを再開する。


 三人は固唾を吞んで見守った。


 *


 ——昼頃になり、ついにリリアは型抜きを成功させた。


 リリアは柔らかく微笑んだ。


「レオン、できました」


「ああ。型抜きは銅貨一枚で売る。この型抜きに成功した者は、絵柄に応じた駄菓子一つと交換する権利が得られる」


「これが、子どもが遊んで食べられる駄菓子の正体だったのですね」


「ああ。誤って食べてしまっても健康に問題はない」


 レオンは口元を緩めた。


「リリアには子どもの前で型抜きをしてもらう」


「えっ!? 私がやるんですか?」


 レオンは肩を竦めた。


「役に立ちたい——あれは僕の聞き間違いだったのかな」


「少し恥ずかしいですが、やります」


「ああ。リリアには期待している」

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


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