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第三話 商人の眼

 ——ベルフォード家の邸宅。


 広大な敷地には、各国から取り寄せた珍しい樹木が植えられていた。その奥には、三階建ての豪邸がそびえ立っている。


 男性の使用人が門を開ける。


「リリアお嬢様、お帰りなさいませ」


 使用人がレオンに目を向ける。


「リリアお嬢様、こちらの方は?」


「騎士のレオン様です。助けていただいたのでお父様に紹介しに、お連れしました」


「左様でしたか。レオン様、どうぞお通りください」


 レオンは会釈し、リリアの後に続いた。


 リリアは玄関のドアを開ける。


「レオン様、中へどうぞ」


「ああ」


 レオンは中に入り、右足を上げ、靴に手を伸ばす。リリアが小首を傾げた。


「レオン様、どうかされましたか?」


 レオンは足を下ろし、振り向いた。


「靴に小石が入っていた」


「大丈夫ですか?」


「ああ」


「お父様は一階の書斎にいると思います」


 レオンはリリアの後に続いた。リリアは書斎のドアをノックした。


「リリアです。お父様いらっしゃいますか」


 中からオスカーの声が返ってくる。


「入りなさい」


 ドアを開け、リリアは書斎に入る。彼女の後ろに続くレオンを見て、オスカーは机の上で手を組んだ。


「リリア、そちらの方は?」


「騎士のレオン様です」


 レオンは会釈した。


 リリアはオスカーに近寄り、笑顔で言った。


「お父様、物件と商品が決まりました」


「リリア、物件だが、南区画しか残っていない」


 リリアは頷いた。


「はい。南区画で上菓子を売ります」


 オスカーはレオンを一瞥した。


「わかった。商品を手配するとしよう」


「ご心配には及びません。口頭ですが、契約しました」


 オスカーは眉間に皺を寄せた。


「リリアが一人でやったのか?」


「レオン様が交渉してくださいました」


 オスカーは肘をつき、レオンを見据えた。


「レオン殿、契約内容を教えていただけますか?」


「ああ。リリアの店での売上の一割。上菓子を運んでもらうこと。そして、リリアの店のやり方に口を挟まないことを条件にしました」


「なるほど。悪くない条件だな」


 オスカーは机の上で手を組みなおし、笑顔を作った。


「リリア、少し席を外してくれるか。俺は彼に話がある」


「わかりました」


 リリアはドアの前に移動し、振り向いた。


「失礼します」


 ドアを開け、通路に出た。


 ドアが閉まる。


 沈黙が落ちた。


 やがてオスカーが口を開いた。


「リリアは商売に向いていないと思っていた。まずは、感謝する」


 咳払いを一つ挟む。


「レオン殿は王都に何をしに来られたのかな」


「視察をしに来た」


「見たところ、他国の装いだが、どの国に所属している騎士かね」


 レオンは押し黙った。


「俺はさまざまな国で商売をした。そのような装いをした騎士を見たことがない」


 一拍置いて、続けた。


「お前は——誰だ」

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


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