第2話「パーティへのご招待・2」
クロエが率いる東北商人グループは、規模の大きい魔道具系の職人ギルドと提携を結ぶことになった。
その記念パーティーに、バネッサをゲストとして招待したい。
どうやら、そういう話らしい。
「なんで、私がそんなパーティに」
「それは、高名な『腹ペコ猫』バネッ――」
「その二つ名は大嫌いだって、何回も言いましたよね!」
「ああ、失礼。有名なあなたがゲストとなれば、皆さん喜びますので」
絶対にわざと言ってます、この人。
知ってるんですから、私は。
「喜びますかね。……もう私、引退して長いですし」
「前回もお名前をお借りしたじゃないですか。レポートを読んだ皆様は、直接やり取りをした私を、羨ましがっていましたよ」
アキラが、微笑みながらウインクする。
学園潜入のやつ。
いや、ギフトの少年のやつだろうか。
最近、クロエさん経由の面倒事が多すぎて、どれを指しているのか分からない。
確かに、報告書には私の名前を使うと聞いていたけれど。
「職人ギルドのギルドマスターが、バネッサさんのことを聞いて、ぜひ会いたいと仰っているんです」
「はあ」
「以前、お会いしたことがあるらしいのですよ。魔道具工房襲撃事件の際に、と仰っていました」
「……なんでしたっけ、その魔道具なんとか事件って」
魔道具工房襲撃事件。
約三十年前に発生したその事件で、バネッサは三代目ギルからの依頼を受け、現場調査に関わった。
「その工房の主であった職人さんが、今のギルドマスターなのです」
「思い出しました。まだ、ご存命でしたか。……マグナさんでしたっけ」
「はい。マグナさんです。足を悪くされていますが、お元気ですよ」
当時、五十歳くらいだったから、いまはもう八十歳か。
工房の設備を壊されて、ものすごく怒っていた顔を思いだす。
「あの出来事は、今ではそんな大層な名前で呼ばれているんですね」
「きっかけとなった事件自体は、そこまで大きなものではありませんでした。ですが、いろいろと波及した結果をひっくるめて、今ではそう呼ばれているのです」
「そうだったんですね」
「私も、その発端にバネッサさんが絡んでいたとは知りませんでした」
なんとなく、嫌な予感がする。
「で、古い知り合いのマグナさんが私に会いたがっているから、パーティに招待する。……というだけの話、なのですか? クロエさん」
「はい。……まあ、そうです」
「何だか歯切れが悪いですよ」
「ついでに、ちょっとお願いしたいこともあるかもですが」
「ついで? ちょっと? かも?」
「ああ、正確に言うと、私からではなく、マグナさんからのお願いになるのです」
クロエは、湯呑みを置いた。
「直接会って見てもらいたいものがあるそうです。ただ、マグナさんは持病の関係で遠出ができないそうで、来てもらいたいと」
「見てもらいたいものって、何ですか」
「私も内容までは詳しく聞いていません。ただ、……魔道具がらみの話だとか」
「……なんだか、面倒な話になる気がします」
「パーティのついでに、まずは話だけ聞いてみる。そういう形ではどうでしょうか」
「いやだなあ。何の話だろう」
ますます嫌な予感しかしない。
「交通費、宿泊費、その他必要なものについては、私たちが負担いたします。また、このお店については、今回もアキラが面倒を見ます」
クロエは、いつもの穏やかな声で言った。
「身ひとつで、東北まで足を運んではいただけないでしょうか」




