40 今後の方向性
この世界に来てから話したことがあるのは目の前にいる二人しかいない。
その二人に「変な奴」と思われるということは…他の人にもそう思われる可能性は高い。
しばらくの間、この世界の常識というか、生活についてもっと知る必要がある。
そう考えた私は、意を決して二人に頭を下げた。
「私がこの世界についてもう少し学ぶべきと言うことはわかった。…だから、しばらくの間で良いから色々教えてくれないかな?」
私の言葉に対してクロは真剣な表情でこちらを見ていた。
「……お前の話は本当なんだな? ……だとしたら、異世界人なんてことは他の人には言わない方が良い。下手したら何かと良い様に利用されるのがオチだ。」
ルドも、同感だと言わんばかりに何度も頷いている。
「それに、その……非常識な魔法も……人前で使うのもどうかと思うぞ」
「そんなに?」
「「そんなにだ」な」
二人の言葉が見事に重なる。
「まぁ……大きな葉法を使わなければ大丈夫じゃない?」
「……まず、一般的な魔法がどの程度なのか学んだ方が良いんじゃねぇか?」
ルドが呆れたように言う。
確かに、他の人が使う魔法なんて見た事無いから威力だって私基準とは違いがありそうである。
「……確かに…そうかも知れない」
「今のところ、お前の考え自体が心配な要素しか見当たらない。まともになるまでは色々教えてやる」
有難いけれど、クロ……言い方…
だけど、しばらくは一緒にいてくれるみたいなので、私はほっと胸を撫で下ろした。
「……よろしくお願いします」
「とりあえず、魔法を使う前に必ず相談しろ」
強めの口調で言ってくるクロに少しだけ拗ねる。
そんなに?なのだろうか。まぁ、経験や知識が少ない分素直に聞いておこう。
そう考えていると申し訳なさそうにルドが尋ねる。
「なぁ、俺も着替えたいんだが?」
「ダメだ。しばらくはそのままでいろ……俺の気が済むまでな」
「おい!そんなこと言うなよ。 ちょっと笑っただけじゃねぇか!」
「……しばらくはそのままだ」
「そんなぁ……」
しょぼくれるルド犬。可哀そうな気もするが、ここは口を挟まないでおこう。
下手に口出せば、私にも飛び火しそう……そんな予感がしたので、私は静かに視線を逸らせた。
「それより、俺達は元に戻れた。今後の行動について話をしよう」
「それよりって……まぁ、そうなんだが……すぐにでも国に戻るよな?」
「俺はそのつもりだが……お前はそれでいいのか?」
クロはそう言って、こちらに視線を向ける。
一応、私の意見も聞いてくれるらしい。
「私は人里に出れればどこでもいいよ?」
そう答えたが、ふと気になったことを口にする。
「もしかして、獣人は、人族に偏見持っているの?」
二人は一瞬顔を見合わせ、何とも言えない表情を浮かべた。
――あ、察し。
人族はあまりよく思われていない感じかな?
「人族は……正直言って俺たち獣人は余り良く思っていない連中が多いではあるが、全てではない。理由は、獣人を蔑んだり奴隷として扱ったりする奴が多くいる。」
「人族は弱いくせに俺らの事を『獣、野蛮人、人間の成り損ない』と呼ぶ奴らがいる。俺達は弱い奴らには興味は無い。勝手に人族が突っ掛かってくる。まぁ、人族最高主義者が国の中枢に多いからな。そんな教えが広まってんだろ」
二人はそう話してくれるが、私の人種は人族だし、変えることは出来ないしね。
「獣人国へ行ってみない事にはどうなるか分からないし、行ってみてから改めて今後について考えてみるよ」
今はそれが一番良いよ気がした。
私の言葉に。二人は顔を見合わせると小さく頷き合う。
何だかんだで、色々と話し込んでしまったので、かなりの時間が経っていた。
そんな時、
「ギュオォォォォォォー」
ん? 音のした方を見るとルド犬が耳をペタンとして申し訳なさそうな表情をしていた。
「……お腹空いた。正直言って……さっきからあの、かれー?ってヤツの匂いが気になってな…」
「ルド……確かい気になる匂いではあるが…」
「じゃぁ、ご飯にしようか?口に合うかは分からないけどね」
私はキッチンへ行きカレーの準備をすることにした。
じっくり煮込んだカレーはとても美味しそうに仕上がっていた。
二人は気に入ったようで「ウマい!」 「スパイスが利いてて美味しい」と大絶賛である。
多めに作ったつもりだが、全て食べ尽くされてしまった。
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