75話 繋がった世界
⸺⸺3ヶ月後。
今日はキャットシルフィもワンカフェも定休日なので、それを利用してみんなでお出かけをしていた。メンバーはシェアハウスの4人とホノカちゃん、そしてダブル警備員のアンネさんとラウルさんだ。
実はお店の定休日になると、この7人で大陸のあちこちに観光をしに行っている。ずっと里に缶詰だったホノカちゃんをあちこちに連れて行きたい一心でクウガと共に計画をして、今まで私たちの行ったことのあるヴォルカノ王国などを順に旅していた。
そして、今日の行き先は人間族の国であるフリシア王国の城下町。そう、私の故郷だ。転送魔法で一瞬で行っても良いのだけれど、せっかくなので世界樹の麓から直通で出ている馬車で行くことにした。
⸺⸺妖精の森、シルフィ街道⸺⸺
ここは元“魔の森“。今ではティターニア様の結界が解かれて普通の森になっている。更に森の中心にフリシア城下町と繋がる街道が敷かれ、なぜか私の名前から“シルフィ街道“と名付けられた。
私たちの馬車だけではなくたくさんの馬車や旅人が行き来をしており、以前のような人気のない不気味な森というイメージは全くなくなっていた。
妖精の森という名前からも、森の中には“世界樹の精“がたくさん飛び交っていた。まるでホタルのように光を放ちながら自由に飛び回る妖精もいれば、ファムたちと同じケットシーなどの小動物の容姿をしている妖精もいて、街道を通る人々を楽しませてくれていた。
⸺⸺フリシア城下町⸺⸺
「わぁ、ここがシルフィちゃんの故郷!」
ホノカちゃんは嬉しそうに馬車から降りて、大通りを見渡した。冒険者だらけの世界樹の麓とは違って、ここの城下町は元々綺麗に着飾った町人や貴族の人間族しかいなかった。今ではいろんな種族の冒険者も行き来をしており、格段に賑やかになっていた。
「やっぱ人間族が多いけど、私たちみたいに色んな種族が遊びに来ているのね」
と、ローラ。私はうんと頷く。
「あの平和共存協定が結ばれて国王陛下から“他種族“や“大陸“のことが伝えられてね、最初はこの国のみんなも戸惑ったみたい。でも少しずつみんな受け入れていってくれて、城下町もここまで賑やかになったの」
これはお父様から聞いた話。私の実家であるローザン邸のメイドの話では、お父様が他種族の良さを必死に説いて回ったおかげだそうだ。お父様はそんなこと一言も言わなかったけれど、人間族が大陸に馴染むために必死に努力をしてくれたんだね。
「あっ、ドワーフの大道芸人がいる! 私、近くで見たい!」
「お供しますよ、ホノカ」
「ありがとう、アンネさん!」
ホノカちゃんとアンネさんはドワーフのピエロが大道芸を披露している中央広場へと向かった。
「ホノカちゃん、楽しんでくれているみたいで良かった」
「あいつ、こうやってみんなであちこちに観光するの、毎回すげぇ楽しみにしてるんだよ。本当にありがとな、シルフィ」
と、クウガ。
「私? そもそも、いつかクウガの妹も一緒にって最初に言ったのはテオだよ」
「もちろんテオにも感謝してるぞ」
「僕はただそうやって言っただけで、こうして実行できるようになったのはみんなの頑張りのおかげだよね」
私たち3人は談笑しながら大通りを歩く。ここで、ローラとラウルさんがいないことに気付いた。
「あれ、ローラとラウルさんもどっか行った?」
私がそう言って辺りをキョロキョロ見渡すと、クウガが「あっちの装飾屋にいるぞ」と指を差す。クウガの指の先には、ワゴン販売のアクセサリー屋を見ている2人の姿があった。あれ、ヤバい、ちょっと良い雰囲気かもしれない……! 私の推しはクウガ×ローラなのに……!
そんな呑気なことを考えていると、ローラとラウルさんは大通りから小道へと入っていってしまった。そのタイミングでホノカちゃんとアンネさんも戻ってくる。
「シルフィちゃん、ドワーフの人すごかったんだよ……って、シルフィちゃん、どうしたの?」
いち早く私の異変に気づいたホノカちゃんが私の顔を覗き込む。
「ヤバいよ、あの2人を追いかけないと……!」
その私の一言で、私たちも全員その小道へと入っていくのであった。




