74話 互いに歩み寄る
お父様に事情を説明すると、お父様はすぐにフリシア国王へと掛け合ってくれた。そして、後日正式にフリシア城内で国王らによる会談が行われることになったのである。
⸺⸺会談当日。
この会談はお店が定休日の時に開催してくれることになっていたので、私とテオ、更にクウガとローラも参加させてもらえることになっていた。
まずは私がお父様と2人でフリシア城へ。
⸺⸺フリシア城、会議室⸺⸺
「おぉ、ローザン卿にシルフィ嬢よ、よく来てくれた。まさか、ローザン卿の行方不明だった娘が魔の森の向こう側で生活をしておったとは。いやはや驚かされることばかりだよ」
白髪に白いお髭のフリシア王。失礼だから直接は言えないけど、サンタさんみたいだ。
「あの、ご心配をおかけして、申し訳ございませんでした」
私がペコリと頭を下げると、フリシア王は「良いのだ、頭を上げなさい。そなたは代わりにこの国にとってとても大切なものを持ち帰ってくれた」とフォローをしてくれた。
「大切な、もの……?」
「うむ。それは、“真実を知る機会“だ。魔の森の向こうに大陸が広がっているなど、我々フリシア国民は知る由もない。だが、私も何も知らなかった訳ではないのだ。本日はその事を異種族の方々へ伝えたいと思っている。さて、シルフィ嬢。そなたが皆を一目につかぬようここに集めてくれると聞いておるのだが……」
「はい、良ければもうお呼びしますよ」
「うむ、是非にお願いしよう。一体どうやって……」
「それは……こうです!」
フリシア王が興味津々に見つめる中、私は自分の足元に転送魔法陣を出現させる。フリシア王は「なんと!」と目を真ん丸にさせ、お父様は「私も初めは驚きました」と呑気に笑っていた。
「では、ちょっと連れてきます」
私はそう言ってその場から消え、次に魔法陣を展開して会議室へ戻る時にはたくさんの異種族を転送させて戻ってきた。
「なっ、なんと……! あの光からたくさんの……我々とは違う容姿の人がこんなにもいるとは……」
フリシア王は転送されてきた様々な種族の人たちを順番に見渡す。エルフ族のオベロン王、ドワーフ族のデイヴィット王、魚人族のニコラス王、鳥人族のエドガー王とテオ、獣人族のローラ、そして鬼族のクウガ。本当に様々な種族がこの玉座の間へと集まってくれた。
そして、ファムを通して世界樹の意思であるティターニア様も出現する。
『初めましてフリシア王。私はティターニア。世界樹の意思です』
そのティターニア様の挨拶をきっかけにそれぞれ挨拶を交わし、一同は着席した。
そして、フリシア王が口を開く。
「実は我々フリシア王家は、魔の森の奥に別の世界が広がっている事を、知ってはいたのです」
『おや、確かあの時、当時の人間族の記憶から我々の記憶を消し去ったはずですが……』
と、ティターニア様。あの時と言うのは、きっと人間族が世界樹のエネルギーを独占しようと企んでいた時のことだろう。どうやって人間族を隔離したのだろうとは思ってはいたけれど、記憶を消していたのか。大精霊ってそんなことまでできるんだ……。
「それは私にはわかりかねますが……フリシア王家には代々この手記が受け継がれるのです」
フリシア王はそう言って一冊のボロボロの手記を取り出した。
「中身を拝見しても?」
と、オベロン王。フリシア王は「もちろんです」と言って彼に手記を渡し、自身の口から手記の中身を伝えてくれた。
「あの手記は私の先祖が記したものであり、内容は“弟殿下の世界樹への反乱“についての苦悩が書かれているのです」
『なんと、当時のフリシア国王には記憶の抹消が効いていなかったと……?』
「いえ、そうではないようです」
と、フリシア王。オベロン王が続く。
「ティターニアよ。記憶の抹消は確かに効いていたらしい。これは、この当時の国王の弟である公爵があなたに制裁を受ける前のことが記されている。どうやら当時の国王は公爵の企みに気付き、なんとか阻止しようと動いてはいたが上手くはいかなかったようだ」
『そうだったのですね……』
再びフリシア王が口を開く。
「その手記には事件後に記された内容もあり、その時点で当時のフリシア王はなぜ自分の筆跡でこのような不思議な事柄が書かれているのかすら覚えてはいなかったようです。ですが、弟殿下が行方不明になったことと、その手記の内容から状況を把握し、我々人間はとんでもない過ちを犯してしまったことに気づいたのです」
「なるほど、その悲劇を繰り返さないためにも、その手記は代々国王のみに引き継がれてきたと、そういう事ですな?」
と、ニコラス王。フリシア王は「仰るとおりで」と相槌を打った。
「私は心のどこかで、人間族以外の人々に会ってみたいという気持ちを常に抱えていました。ですので、このような日を迎えることができて光栄に思います」
そう言うフリシア王へ、エドガー王が口を開いた。
「当時の反省点は、国王が弟の反乱を止められなかったことではなく、我々が協力して対処をしなかったことにあるだろう。全ての処分を地の大精霊に委ね、全ての責任をフリシア国民へと負わせた。当時、ほんの少しでも我々が同盟関係にあれば、現在の人間族の在り方はもう少し違っていたのではないかと、私は思う」
「そうだな、それは、当時より生きている私にも責任はある。このように当時のフリシア王が奮闘していたのであれば、隣国の私が気付かなくてはならなかったであろう。それに、このような事を相談し合える間柄ではなかったのも事実だ。それは、私の反省すべき点であるな」
と、オベロン王。ティターニア様が続く。
『ええ、私も、もう少し人間族の意見にも耳を傾けるべきでした。きっとこのような大精霊の力を独占しようとする動きは、多かれ少なかれどこの国にも存在していたかもしれません。それが、国の公爵といういわゆる王族が引き起こしてしまったがために、大ごとになってしまいました。これからはこのような悲劇を起こさぬよう、横のつながりを大切にしていきたいと私は思っているのです。これらの点を反省した上で、フリシア王へ提案があります。魔の森の結界を解き、人間族も今一度我々と共に生活をしていきませんか?』
「ありがとうございます、是非ともよろしくお願い致します! 時間はかかるかもしれませんが、少しずつ国民の理解も得ていきます」
「国王陛下、私もお手伝いしますぞ」
「ありがとう、ローザン卿……!」
この日正式に、地の大精霊ティターニア様と人間族の国王フリシア王との間で“平和共存協定“が結ばれたのであった。




