62話 神風の刃
⸺⸺ホークアイズ城、玉座の間⸺⸺
ニコラス王からの親書を受け取ったホークアイズ王は、ゲラゲラとお腹を抱えて笑っていた。
「だははははっ、クウガ、てめぇ、可哀想過ぎだろ……!」
それ、1ミリも可哀想と思っていない反応……!
「ひ、酷いっすよエドガー陛下〜。俺、やっと立ち直ったところなんすよ……?」
「あぁ、わりぃわりぃ。んだな、けなすより称えるべきだな。まずはクウガ、宣言通り海底のダンジョンの攻略おめでとう。海底のダンジョンは四大精霊のダンジョンの中でも一番難易度が低いと言われてはいるが、それでも制覇するなんて並大抵のことじゃねぇ。十分に誇っていい」
「あ、ありがとうございます……!」
「それからローラ。炎の大精霊の加護を授かって、ニコラス陛下も大絶賛をするほどの焼き菓子を作れるようになったとか。ぜひ、シルフィ嬢と一緒にこのホークアイズの街でもワゴン販売をしてくれ。頼む」
ホークアイズ王はそう言ってスッと頭を下げた。
「わわわっ、そんな、やめてくださいエドガー陛下! 私としても、ワゴン販売をさせてもらえるなんて、願ってもないことです……! ね、シル?」
「そうですよ、ではお言葉に甘えて、クウガとテオが天空のダンジョンを攻略している間、ホークアイズの街でカフェと魔導具屋さん、させてもらいますね」
「ありがとよ。これで街も活気付くな。んで、最後に我が息子テオバルト。水の大精霊の加護を授かり、海底のダンジョンを攻略した。俺は一国の王として、父親として、お前とお前のその魔力を誇りに思うぞ」
「父上……! ありがとうございます!」
「なぁ〜、テオ〜、だからよ、王位継承の辞退……取り消してくんねぇか?」
「あ、それは出来ません。すみません」
「だぁーっ、駄目かぁ……!」
そんな親子のやり取りに、私たちは思わず大笑いをしてしまった。
⸺⸺
「クウガ、事情は分かった。3つの大精霊がお前を推薦していることも考慮して、天空のダンジョンを攻略出来たらてめぇをエアリアル様に引き合わせてやる。俺にも実力を示してみろ」
「ま、マジっすか! ありがとうございます! 俺、頑張ります!」
クウガは希望に満ち溢れた表情で元気にそう返すと、テオを連れて早速天空のダンジョンを攻略しにいった。
その間、私とローラはホークアイズの街で2人でワゴン販売。ここでは既に魔導街灯が話題になっていたため、ここでも1日中列が絶えることはなかった。
⸺⸺5日後。
天空のダンジョンを制覇したクウガとテオが、天空のダンジョンの金の勲章を掲げて高らかに凱旋した。
そのため、私たち4人はホークアイズ王に連れられて、“風鳴きの谷底”というところへとやって来た。
⸺⸺ウェント山脈、風鳴きの谷底⸺⸺
ここのどこに、風の大精霊が……? 風の大精霊は大きな鳥、とかかな……?
そんなことを考えていると急に突風に襲われ、みんなで思わずクウガにしがみつく。ホークアイズ王だけは全く動じずに平然と笑っていた。
すると、世界樹や海竜の意思のように、緑に光る球が目の前へと浮かび上がった。
『驚かせてごめんなさい……! ちょっと加減を誤ってしまいました……!』
その球からは、幼い女の子の声が聞こえてきた。
「いやいや、こんなんでへこたれる奴らじゃねぇから、気にすんな」
と、ホークアイズ王。
『そうですか……。あの、私は神風の意思エアリアルと言います。ツキカゲの民クウガ、天空のダンジョンでの活躍、見てました。お見事です』
神風の意思……風の大精霊様は、風そのものなんだ……!
「俺の、事を……? ありがとうございます!」
『クウガ、あなたに問います。あなたは、どうして強さを求めているのですか?』
「ツキカゲの長になるためです。長になって、俺は……あなたにツキカゲの里の加護結界をお願いしたいんです! せっかく守ってくれるって言ってるのに、馬鹿長のせいですみません! もう少し時間をください! 俺が、ツキカゲの里を変えてみせます!」
クウガが熱を込めてそう宣言をすると、エアリアル様は黙ってしまった。あれ、クウガってもしかして大精霊を黙らせる特技でもあるの ?
どうしよう、と思っていると、エアリアル様は急に『ふわぁぁぁん!』と泣きだしてしまった。
『ぴえぇぇぇ、良かったです……! なんで私の加護領域だけ、そんな断られてしまうんだろうって、ずっと困っていたんですよ。クウガ、ありがとうございます。では、一足先にあなたに加護を贈らせてください。“神風の刃”です』
エアリアル様がそう言うと、クウガの身体が緑色の風で包み込まれた。
やがて風が収まると、鳥の翼を生やした猫の妖精ケットシーが彼の肩にチョンッと止まった。
「うおぉぉぉ! 俺にもケットシーがぁ! ありがとうございます、エアリアル様! 俺、絶対ツキカゲの長になりますから!」
『どういたしまして。神風の刃は、あなたの剣技に力を与え、あなたの身体に驚異的なスピードをもたらします。上手く使ってくださいねっ』
エアリアル様はそう言うと、そよ風のようにふわっと消えていった。
「剣技に力を与える……こうか?」
クウガが大剣をひと振りすると、巨大な真空刃がブンッと飛び出て谷底を大きくえぐった。「わぁっ!」と声を上げる一同。
「てめぇ、神聖な風鳴きの谷底をえぐってんじゃねぇぞ……!?」
と、ホークアイズ王。クウガは「すみません!」と平謝りしていた。
その側で、鳥猫妖精がシュンとうなだれる。
「わらわ、誰にもかまってもらえないのじゃ……」
まさかの姫口調……! クウガはその姫妖精にも平謝りしていた。
「ごめん、ごめんて! けど、俺もずっとケットシーの相棒が欲しかったんだよ! よろしくな、相棒!」
「ふむ、ならばさっさとわらわの名を付けてたもれ」
「“ストロング”! ケットシーを手に入れたらずっとこの名前を付けようと……」
クウガがそう言い終わらないうちに、姫妖精は「そんな可愛げのない名前嫌なのじゃぁ〜!」とクウガの頭をポコポコと叩いていた。
この組み合わせ、不安だ……! その場にいた誰もがそう思うのであった。




