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妖精王の愛し子、世界樹のふもとで魔導具屋さん始めます!  作者: るあか
第五章 強さを示して

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53話 一人前を示して

 トーナメント第1回戦は、テオバルト第7王子とエトムント第6王子の戦い。

 エトムント王子はテオの3つ上で15歳だ。ガッチリと引き締まった筋肉に、立派なタカの翼。鋭利な槍なんか装備しちゃって、テオが怪我しないか心配だ。


 一方でテオは、長い棍(こん)のように見える魔法杖を装備。実はあれ、普段ダンジョンとかで浮かないように作れないかってお願いされて作った、私の特注品なんだよね。

 司会による両者の紹介が終わり、わーっと歓声が上がる。

 そして辺りが闘いの始まりを待つかのようにしんと静まり返ると、エトムント王子が口を開いた。


「てめぇが戻って来るのは想定外だったわ。“飛べるようになった”くらいで戻って来ちまって大丈夫か? まぁ、てめぇが戻って来てくれたおかげで俺は1回戦突破を約束されたようなもんだからな、感謝してるぜ?」

 中学生の不良のような話し方でいやみったらしく笑うエトムント王子。とても一国の王子とは思えない。いや、実際ここの国王様もあんなだったし、王子だからと言って礼儀正しいのを想像するのは違うかもしれない。


「御託(ごたく)はいいので始めましょうか、エトムント兄様」

 テオは不敵に微笑んで魔法杖を構えた。なんだかテオが頼もしく見える。ううん、見えるんじゃない、テオは実際頼もしいのを、私は知っている。


「んだと、てめぇ! ガキん頃に散々痛い思いをしたのを忘れたようだな!? いいぜ、思い出させてやる!」

 エトムント王子はそう言って審判の試合開始の合図を待たずしてテオに向かって飛んでいった。

 なるほど、小さい頃にテオはこの人にイジメられていたんだ。それは……容赦しなくていいからテオもさぞやりやすいことだろう。


 エトムント王子がテオに槍を突きつけるが、テオはその場からパッと消えてエトムント王子の背後へと回った。

「はっ!? てめぇ……今どうやって移動しやがった……?」

 目をぱちくりとさせながら振り返るエトムント王子。しかし、テオはその質問には答えずに審判へこう尋ねた。


「審判、もう、試合開始で良いのでしょうか?」

「は、はい! 試合開始!」

 慌てて試合開始の宣言をする審判。不良王子のせいでグダグダだ。


 テオは審判からの試合開始の合図を聞くと、魔法杖を少しだけクイッと動かした。


⸺⸺その瞬間、エトムント王子の足元からザバーンと音を立てて巨大な水柱が立ち昇り、なすすべ無く飲み込まれたエトムント王子は呆気なく気絶した。


「エ、エトムント王子、戦闘不能! 勝者、テオバルト王子!」

 一瞬で勝負がついてしまい、再び審判が慌ててそう宣言をすると、観衆からはわーっと熱のこもった歓声が沸き起こり、あっという間に第1回戦が幕を閉じた。


「やったー! テオー!」

「テオ、“詠唱破棄”ももう完ぺきにマスターしたのだ」

 私とファムは両手を繋いでやった、やったと小躍りする。

「う、嘘……今あの子が使ったのって……!?」

 口をあんぐりと開けて固まるベアトリクス王妃に、魚人王が「魔法だ。やはりあの武器は棍(こん)ではなく魔法杖だったのだ」と答えた。


 担架でせっせと運ばれて退場するエトムント王子と、みんなの声援に丁寧なお辞儀で答えるテオ。そして彼が退場していく途中でホークアイズ王を見上げると、ホークアイズ王は大きな拍手で頷いてくれていた。


⸺⸺


 その後の第2回戦の第4王子との戦いにも圧勝し、決勝の第1王子との戦いには惜しくも負けてしまった。

 そして優勝者の第1王子とホークアイズ王の王位継承をかけた試合の準備中、役目を終えたテオが私たちのいた観客席へと合流した。


「テオ! お疲れ様、すごかったよ!」

「ありがとう、シルフィ。でも、さすがにクラウス兄様には勝てなかったよ」

 ははは、と涼しい顔で笑うテオ。その第1王子であるクラウス王子との戦いでは怪我をしていたけど、回復魔法で治療してもらったのか怪我はすっかり治っているようだった。


「テオ……! あんなに立派になって……!」

 ベアトリクス王妃はテオを抱き締めておいおいと泣いていた。その脇から、魚人王であるニコラス王が「テオバルト殿下、良きものを見せてもらった。ありがとう」と労(ねぎら)いの言葉をかけていた。


「ニコラス陛下! 勿体なきお言葉です」

「貴殿には我々魚人族の魔力が流れているそうだな。今回の初戦で水属性の魔法を選択したのは、我々同胞にその事を伝えようとしてくれていたのか?」

「はい、そうです。私は、この魚人族の魔力を誇りに思っています。ですので、それが魚人族の皆様に伝わっていれば幸いです」


「もちろん伝わったとも。今後もホークアイズとは良き関係を築いていきたいものだ。そして、その事に気付いてくださりテオバルト殿下に魔道を極める機会をくださったオベロン陛下とも、良き関係を築いていきたいものです」

「ありがとうございます、ニコラス陛下!」

「それはこちらとしても、ぜひともお願い致します」

 オベロン王とニコラス王は固い握手を交わして、交友を深めた。


 一方でクラウス第1王子とホークアイズ王の王位継承戦はホークアイズ王の圧勝で終わり、今年のタカの集いはお開きとなった。


⸺⸺翌日。


 ホークアイズ城で1泊させてもらった私は、テオに呼び出されて彼と共に玉座の間へと向かうのであった。


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