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51話 ワイルドホーク

⸺⸺待ちに待った3日後の朝。


 私たちはオベロン王の転送魔法陣でウェント山脈の手前の町までひとっ飛びした。

 どうやら転送魔法陣はどこでも行ける訳ではなく、オベロン王の行ったことのある地にしか移動出来ないらしい。きっとそれは私の転送魔法もそうなんだろうな。

 そのためその町からは馬車で山脈に入り、綺麗に整備されている山道を登っていった。


⸺⸺ウェント山脈、ホーク渓谷、都市国家ホークアイズ⸺⸺


 ホークアイズの国は、渓谷の途中に築かれており、高低差の激しい上下に広がった国だった。この都市だけで一つの王国。だから“都市国家”と言うらしい。

 それだけ小さな国と言うことだけど、渓谷を吹き抜ける心地の良い風や高いところから見渡す絶景は唯一無二で素敵な国だと思った。


 みんなで観光といきたいところだったけど、私はベアトリクス王妃とテオ、そしてオベロン王と共にホークアイズ王のところへ謁見することになった。

 連絡手段としてファムをクウガとローラに同行させることに。あれ? でも待って。クウガとローラ、2人で観光しに行ったんだよね。それって“デート”って事だよね?

 ファム……あんまり邪魔しないでね……。


 2人の内心などお構いなしにそんな妄想をして独りで楽しんでいると、ホークアイズ城へと到着した。キュッと気を引き締めて妖精の羽を出し、入城する。


⸺⸺ホークアイズ城、玉座の間⸺⸺


 そこで出迎えてくれたのは、立派なタカの翼を持ったワイルドなイケオジのホークアイズ王だった。


「テオ、戻ったか! なんだてめぇ、雰囲気男らしくなったんじゃねぇか!?」

 ホークアイズ王はそう言ってガッハッハと豪快に笑う。 

「父上! あの……今まで留守にしてしまって申し訳ございませんでした……」


「その件は問題ねぇ。王子らの中にはてめぇが逃げただとか言う奴もいるが、俺はそうは思わなかった。案の定、てめぇは良い面構えになって戻って来た。うちの末っ子が世話になったようで、感謝します、オベロン陛下。それにこんなちっぽけな国まではるばるよくお越しくださった、歓迎致します。ホークアイズ国王、エドガー・ホークアイズにございます」

 ホークアイズ王は豪快にザッとお辞儀をして、すぐに顔を上げて私たちを見渡した。

 なんて気持ちの良い人なんだろう。どこまでも付いていきたい頼れるアニキ、そんな感じだ。


「いえ、こちらこそ、急に押し掛けたにも関わらず寛大なご配慮、痛み入ります」

 オベロン王も丁寧にお辞儀をして厚い握手を交わす。急にと言っても一応親書で状況は伝えてから来たらしいけど……。


 うわぁ、私も“妖精伯”としてきちっと挨拶しなきゃなんだろうか……どうしよう、そう言うのまだ、あんまり分かんない……。


 そう思ってモジモジしていると、ホークアイズ王は私をロックオンしてグワッと詰め寄ってきた。

「貴殿が噂の“妖精伯”か! テオと一緒に仕事してんだって? すげぇな、ただならぬオーラがビンビンじゃねぇの! どうよ、うちのテオ、将来の夫にさ」

「ええっ!? お、夫……!?」

 頭が真っ白になってパニックになる。

「父上……! シルフィがせっかく挨拶しようとしていたんだから、変なこと言ってからかわないでくださいよ!」

 テオが顔を真っ赤にしながらそう反論すると、ホークアイズ王はまたしても豪快にガッハッハと笑った。


「おぉ、こりゃすまんすまん。じゃ、挨拶どうぞ」

 スッと引いてしゃがんだまま私をガン見するホークアイズ王。えっ、ここから挨拶!? 私の脳内はパニックを通り越して沸騰し切っていた。

「あっ、あの……! シルフィ・ラベンダーです……! テオ……じゃなかった、テオバルト王子殿下とは、これから一緒に住む予定で……」

「マジか! てめぇら同棲(どうせい)すんのか!?」

 あからさまに嬉しそうな表情を浮かべるホークアイズ王に、ブッと思いっ切り吹き出すオベロン王。あれ、私、今何言っちゃったんだろう……!?


「ちょ、シルフィ! 言い方、言い方! って言うか結婚の挨拶じゃないんだから、そんなこと言わなくていいよ!」

「テ、テオ……! 私今何言った!?」

「一緒に住むって……」

「ぇえっ!? わーん、それくらい仲良くしてるっていうのが言いたかっただけなのにぃ……」


「あれ、同棲、嘘なの……?」

 ショボンとするホークアイズ王。テオが「いや、嘘ではないんですけど……同棲では……」と言い掛ける。

「嘘じゃねぇなら同棲じゃねぇか! おい、宴だ! 宴の準備しろ! テオが嫁を連れて帰ってきた!」

「「ぎゃぁぁぁぁ〜!」」

 テオまで一緒にパニックになってしまう。そんな私たちを黙って見守っていたオベロン王はお腹を抱えて笑い転げており、ベアトリクス王妃もクスクスと嬉しそうに笑っていた。


 結局その騒ぎのおかげか、ホークアイズ王とオベロン王は秒でマブダチのように仲良くなっていた。


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