46話 7歳の少女の里帰り
ティターニア様に聞いたんだけど、私は世界樹の祝福を授かっているから人間の国との国境の結界を一人でもくぐり抜ける事が出来るんだって。
初めはオベロン王と一緒じゃないとくぐり抜けられなかったんだよね。
だからファムと2人で故郷に帰ろうとしたんだけど、オベロン王がどうしても一緒に行きたいと言うので、ファムと同じ猫妖精の姿に変身して付いて来てもらうことにした。
⸺⸺魔の森⸺⸺
ひとまず魔の森の出口まで転送魔法で送ってもらう。そしてファムとオベロン王には背負ってきたリュックの中に入ってもらい、魔の森の外へと出た。
⸺⸺フリシア王国、フリシア平原⸺⸺
「わぁ、懐かしい……」
私が世界樹の麓に移住してから半年以上経っている。あと数ヶ月で私も8歳だ。
「帰り道は分かるのか?」
と、オベロン王。
「うん、大丈夫。向こうに見える街道を進んでいけば私の住んでいた城下町に着くはず」
⸺⸺フリシア街道⸺⸺
街道に入るとちらほらと人とすれ違う。
「みんな、人間だ……」
この国では当たり前の事をボソッと呟いてみる。
頭に動物の耳や角もない、背中に翼もない、耳も尖ってない、小さくもない。私と同じ、人間族。
「シルフィ以外の人間族を見るのは初めてなのだ……」
ファムもリュックの中でボソッと呟くと、急に頭の中にオベロン王の声が聞こえてきた。
『ファム、ここでは“念話”を使え。世界樹で繋がっている私たちなら出来るはずだ。脳内で話そうとしてみるんだ』
念話……! 世界樹で繋がっている物同士が出来るもの!?
『あー、あー、聞こえるのだ?』
『うむ、それで良い』
『やったのだ。にゃぁはすごい特技を見つけたのだ』
リュックがもそもそと動く。ファムが小躍りしているんだ。
『すごい、私も出来るのかな……?』
なんとなく頭の中で話そうとしてみると、すぐに『出来ているぞ』『シルフィの念話も聞こえるのだ』と返事が返ってきた。
『うわぁ、こんなこと出来るなんて知らなかった……。独り言も怪しいし、こうやって話しながら行こう』
念話で他愛もない会話をしながら街道をてくてくと歩いていく。1時間ほど歩いたところでようやく城下町へと辿り着いた。
⸺⸺フリシア城下町⸺⸺
たくさんの人の行き交う賑やかな町。そうだそうだ、こんなんだった。私、7歳までここに住んでたよ。
本当なら貴族の子どもは8歳から学院に入るから、今頃予習とかの猛勉強をさせられている頃だろう。
学ぶことは嫌いじゃないけど、無理矢理押し付けられてするのは嫌だから、勉強が始まる前に国を出られて良かったかもしれない。
⸺⸺貴族街⸺⸺
街並みが“家”から“屋敷”へと変わったところで、実家へと辿り着く。ドアの近くにあるベルをチリンチリンと鳴らすと、中からメイドのジェシーが顔を出した。
「はい、どちらさ……えっ!? シルフィお嬢様!? 今までどちらに!?」
「あはは、急にいなくなってごめんね」
「と、とにかくご無事で何よりです。さぁさぁ、お入りください……!」
「うん、ありがとう」
ジェシーは私を屋敷の中へ入れると、「旦那様ー! シルフィお嬢様がお戻りになられました!」と、血相を変えて奥へと走っていった。
そして数分後、私のお父様が何もないところでつまずきながらすっ飛んできた。あれ、お父様、結構ふくよかだったけど、ガリガリに痩せてる……!?
「シルフィ! あぁ、シルフィ、良かった……生きていたのだな……!」
お父様はその場でボロボロと泣き崩れた。そっか、それなりに心配してくれていたんだ。
「心配かけてごめんなさい、お父様」
「良いんだ、無事ならそれで……! 私があんな悪魔と再婚したばかりにこんな事に……。“アイーダ”に酷いことをされたんじゃないのか……? アイーダからどうやって逃げ出してきたのだ?」
「あれ? なんであの人と一緒だって……?」
「とりあえず食堂へ行こう、お腹空いているだろう? 何か食べながら話そうか」
「あ、うん……そこまで空いてないけど、久々にお家のご飯、食べたい」
私はお父様に連れられて食堂へと向かった。
前にローラの家族から話を聞いて、ローラが仲直りをしたのを見て思ったの。私もお父様が歓迎ムードだったらちゃんと話を聞いて、私も話そうって、そう決めていたんだ。
食堂の席に着くと次々に料理が運ばれてきて、メイドさんたちは食堂の隅に並んだ。
うちは伯爵でも貧乏な方だったから、メイドさんは全部で5人だけ。その5人は私を見るなり「シルフィお嬢様、ご無事で良かった……!」と泣いてくれていた。
メイドさんたちにも後でお礼を言って、プレゼントをあげなくちゃ。
まずは、お父様とお話だ。




