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妖精王の愛し子、世界樹のふもとで魔導具屋さん始めます!  作者: るあか
第四章 家族

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44話 女将の提案

「あんたたちのおかげでウチの宿屋も随分と懐があったかくなってねぇ、思い切って宿屋を1回建て直そうと思っているのさ」

 と、ルシールさん。みんなは「おぉ!」と感嘆の声を上げる。


「良いと思うわ! 今も十分の大きさだけど、今よりももっと大きくすればもっとたくさんの人が泊まれるようになるし」

「そしたら僕、後輩の従業員出来るかなぁ?」

「今のお前なら後輩の指導も任せられそうだな、うん」

 盛り上がる3人。


 そうか、建て直そうとしているんだ。それなら私も、丁度いい機会かもしれない。

「あの、それなら私も……宿屋の売店をやめて、ちゃんと自分のお店を持とうと思うの」

「えっ!?」

 と、驚く3人。しかし、ルシールさんもダグラスさんも私がそう言うと分かっていたかのように、うんうんと頷いた。


「そう言うんじゃないかと思ってね、そこであんたたちに相談なのさ。安らぎ亭の隣の寮……あの部分の土地を買わないかい? シルフィちゃん」

「え〜っ!?」

 と、今度は3人と一緒に私も驚く。そう来るとは思わなかった。でも……。


「500万でどうだい?」

 と、ルシールさん。

「え、500万!? 安すぎない……!?」

「まさかこんな小さな子から『500万が安すぎる』という言葉を聞くことになるとは……」

 ダグラスさんはそう言ってクスクスと笑っていた。

 確かに私も500万C(クレド)が安いと思えるほど自分が貯金を持つなんて全く予想もしていなかったから、笑ってしまう気持ちは分かる。


「アタシらが売るのは“土地だけ”さ。後は自分で何とかしなくちゃいけないんだよ? どうする?」

「あ、そっか、なるほど……」

 寮を取り壊したりとか、新しいお店を建てたりとか、そう言うのはもうルシールさんは関係なくなるから、ちゃんと私がやらなくちゃいけない。

 でも、お店を建てたいのであれば、そう言ったことも出来なくちゃ、だよね。


「私、あの土地買いたい! 安らぎ亭の隣で魔導具屋さんしたい!」

「よし、決まりだね。ならその方向でアタシらも動くよ。それで、あんたたち3人、この宿屋を改装するタイミングで、宿屋の仕事を続けていくのかを一旦よく考えてほしいんだ。追い出そうとしているんじゃないよ。言っている意味は分かるね?」

 ルシールさんがそう言うと、ローラ、クウガ、テオの3人は大きく頷いた。


「私も、安らぎ亭の売店は卒業するわ。でも、建物を建てられるくらいのお金は、正直ないの……シル、魔導具屋さんと一緒にカフェも建てて! 家賃を払うから大家さんになって!」

「俺も、宿屋の仕事は卒業して冒険者業に専念する。だからシルフィ、俺も家賃払うから魔導具屋の上に住ませてくれ!」

「僕も、クウガと同じ。なんならシェアハウスとかでも良い、家賃払うから、お願い!」


 3人にグイグイと迫られる私。そんなの、私だってそうなれば良いなって思ってた。

 だけど、7歳の子どもから「家建ててあげるから住まない?」なんて言われるのはちょっとどうなんだろうって思って、遠慮してしまっていた。

 でも、みんなからそうやって言ってくれた。それに、“シェアハウス”! テオが素敵な提案をしてくれた。


「私も、みんなと一緒に1つ屋根の下でこれからもお仕事したい。私からもお願い。寮を建て直すから、これからも一緒にお仕事をして、一緒に住もうよ、シェアハウスで!」

「良いな! すげぇ楽しそう!」

「僕のシェアハウス案が、採用された!?」

「元からあの庭が私たちのリビングみたいなものだったしね。どんなのか想像出来るし、すごく楽しそうだわ」

「リビングにはにゃぁの昼寝スペースも設置して欲しいのだ」


 私たちがそう言ってワイワイと盛り上がっているのを、ドワーフ夫妻にオベロン王、そしてティターニア様も微笑ましそうに見守っていてくれた。


⸺⸺


 その事が決まってからの立食パーティーは、もはや寮建て替え計画の話一色になった。

 安らぎ亭は寮のスペースがなくなった分、奥の土地をオベロン王から買って建物の敷地を広げるそう。更に、新しい従業員の寮も宿屋の中に併設をするため、私たちは私たちのことだけを考えれば良いと、ルシールさんは言ってくれた。


 建て替えの間は宿屋は完全に休みになり、ルシールさんとダグラスさんは一旦お兄さんの顔を見にヴォルカノ王国へ帰国。

 私たちは建て替えの間、家なき子になってしまうので、どこかアパートを借りようかと模索をしていた。

 すると、オベロン王が『城の前でワゴン販売を続けて(ふもと)の観光業を盛り上げ続けてくれるのなら』と言う名目でお店兼シェアハウスが完成するまでお城に住ませてくれることになった。


 まだ話がまとまっただけだけど、私は始終ワクワクしていたのであった。


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