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妖精王の愛し子、世界樹のふもとで魔導具屋さん始めます!  作者: るあか
第四章 家族

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41話 すっきり収納術

⸺⸺ある日の安らぎ亭の寮の庭。


 クウガとテオに素材集めを依頼するようになって、魔物からのドロップ素材も集められる彼らは、私よりも遥かに効率よく素材を集めてきてくれた。


「もうこれ以上木箱を部屋に置けないので、ここに積んでいってください……」

 クウガが屋根付きの洗濯場に素材がパンパンに詰まった木箱を積んでいってくれる隣で、私はそう懺悔(ざんげ)をした。

「ははは、俺らも張り切って集めすぎたか?」

「いえ、大変助かっております……」


「魔導具は完成した在庫もどこかに保存しておかなくちゃだから、そこがネックなのだ。今シルフィの部屋、木箱だらけで大変なことになっているのだ」

 と、ファム。

「カーネの集落も(かがり)の周りが鉱石だらけで久々に里帰りをしたら軽く衝撃だったわ……」

 ローラはそう言ってふふっと笑う。

「はい、日々素材に囲まれた生活を送っております……」


「シルフィの“想いの力のレシピ開発”で、この状況を解決するような魔導具を開発してみたらどう?」

 と、テオ。

「そうか、魔導具でなんとかする……か」

 うーんと考え込んでみる。


 日本ではどうだったか。部屋が物で溢れたら……断捨離? それかトランクルームを借りる? 大きい家に引っ越す……?

 うーん……ルシールさんにお願いして倉庫を作らせてもらおうか……。


「なんかこう……キュッて小さくなったら良いのにね」

 ローラはそう言って握りこぶしを作っていた。

「キュッて小さく……」

 そう言われて私が想像したのは、布団の圧縮袋やフリーズドライのスープだった。

 確かにキュッて小さくなるけど、圧力で押しつぶしているだけだから鉱石や魔石には通用しない。少なくとも前世の知識では解決しなさそうだ。


「キュッて小さくか……」

 私が再びそう呟くと、ローラは「たとえだからそこに囚われなくていいのよ!?」と慌てていた。

「ううん、違うの、キュッて小さくで、なんかいけそうな気がするんだけど、前世の知識じゃ無理そうなんだよね」

「シルフィの前世の世界でも、んな都合のいい物はなかったっつーことか」

 と、クウガ。


 でも、ここは魔法のある世界。魔法は想いの力。物理的な法則や常識なんかを無視することを考えてみよう。


「あっ、そっか!」

「なになに!?」

 と、一同。


「ねぇねぇ、テオ。空間自体をキューッて縮める魔法あったよね? 時空魔法にさ……」

 私の知っている時空魔法は転送魔法だけだけど、『魔力の全て』にそんなような事が書いてあったような気がする。


「空間圧縮の魔法のことかな? とても高度な魔法で、その空間内の物の状態を崩すことなくそのまま小さな世界に閉じ込めちゃう魔法なんだ……って!」

「それだぁ!」

 と、一同。


「例えばこの木箱、木箱の中をその空間圧縮の魔法で作り出した小さな世界にすれば、素材をたくさん入れられるようになるよね。でも自分の手も小さくなっちゃうのは害がなくても怖いから、素材にだけ反応する物が作りたいなぁ……」

 私は木箱に物を入れたらキュッて小さくなるのを想像しながらそう言った。


「理屈は分かったけど、時空魔法自体が高度な魔法なのに、更にその影響を限定的にするなんて、そんなこと……オベロン陛下くらいしか出来ないんじゃ……」

 と、テオ。

「そうだね、オベロン陛下ならきっと出来るよね、よし、ファム、オベロン陛下に聞いてみよう」

「聞いてみるのだ」


 ファムにオベロン王との通信を繋いでもらい、事情を説明する。


⸺⸺


『空間圧縮を入れ物に活かす魔導具か……確かに興味深いな』

 と、オベロン王。

「でしょでしょ? だから、もっと具体的に想像出来るように、目の前でその魔法を見せてほしいんだけど……」

『……仕方ない。良いだろう』

「やったー!」


 オベロン王との通信が切れると、2分くらいで本人が庭へと到着した。

「……すごい木箱の山だな……」

 オベロン王の第一声はそれだった。

「鉱石だけで3箱くらいあるんすよ」

 クウガはそう言って苦笑する。


「これは今後商品が増えたり大きな物を扱うようになると解決が必須になってくる課題だな。倉庫を建てたところですぐにいっぱいになるだろう。試しにこの木箱の中の空間を圧縮してみるか?」

「お願いします!」

 ペコリと頭を下げる。オベロン王は軽く頷いて「よく見ていなさい」と言って木箱に手をかざした。


 木箱の中が光ると中の物がグングンと縮んでいき、木箱の隅っこの方でちょこんとしていた。

「すごっ!」

「すげぇ!」

「これはすごい!」

「これなら1つの木箱だけで軽く20箱分くらいは収められそうだね……」


「シルフィの要望通り、人の身体には影響を与えないようにしたぞ」

 オベロン王がそう言って手を木箱の中へ突っ込むが、手は小さくはならなかった。

「おぉ! じゃぁ、新たにここに魔石を入れると……」

 別の木箱に入っていた魔石を手で持って入れてみると、木箱に入った瞬間魔石のみがキュッと小さくなり、豆粒のような大きさになってコツンと箱の底へと落ちていった。

「おぉぉぉ!」

 と、歓声が上がる。


「これだ! まさにこれを作りたい!」

 私は急いでクラフトレシピブックを開いて木箱のレシピを見る。

 今回やるレシピの変化は、普通の雑貨から魔導具への変換だ。

 さっきオベロン王が見せてくれた一部始終をしっかりと想像をし、木箱のレシピへ魔力を送り込んだ。


 すると、レシピがほわっと光り『魔導圧縮(生物を除く)』という特性が追加された。この特性を付与するためには通常の木材の素材に追加で魔石を2個消費するらしい。

「できたぁぁぁ!」

 高らかにそう宣言をすると、みんなはわーっと拍手をしてくれた。


 

 そしてこの特性付きの木箱をクラフトしてみると、オベロン王がかけてくれた空間圧縮の魔法のように、素材だけがキュッと小さくなった。

「あっ、しかも軽い!」

 鉱石がたんまり入った木箱でも私一人で軽々と持ち上げることができた。


「これは……またしても革命の予感だな」

 と、オベロン王。

「ふっふっふ、革命起こしちゃうもんね♪」

 私はニヤッと笑うと、山積みになっていた素材を全て一つの木箱に収めて、残りの木箱も全て“魔導圧縮木箱”へと変化させた。


 更に麻袋にも魔導圧縮の特性を付けた物を開発すると、木箱と合わせてみんなが1つずつ買っていってくれた。


 これで私の部屋の中だけで在庫も素材も管理出来るようになり、庭はスッキリと片付いたのであった。


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