40話 先輩
―Minol Side―
ある日の放課後、まー君と一緒に帰っていたときだった。
「せ~んぱい!」
「ん?」
「は?」
後ろから声が聞こえたと思ったら、1人の女生徒がまー君の両肩をパンっと叩き掴んできたようだった。
「って、彩梅ちゃん?」
「はい! ……と」
「……」
私と彩梅の目が合い、互いの一瞥の間に、無言が流れる。
「はぁ……コホン。『あなたの』後輩、松前 彩梅です! 」
なんだその目。なんだその溜め息。なんだその咳払いは。
少なくとも私はまー君のことを「意識してはいる」けど、別に好きとか……こう……絶対的に譲れないと思うほどの思いは無いはず……きっと……多分……。
もともと仲が良かった訳じゃないけど、バレンタインでの一件以来、とんでもない緊張が2人の間に張り詰められているように感じてしまう。
「別に俺のって、俺だけの後輩じゃないでしょ。……で、なんでここに?」
「なんでって、先輩が委員会を放っぽり出してるからじゃないですか!」
「別に放っぽり出してなんかないって。俺は俺のやることやったから今は特に残る必要もないから。体育祭の分は自分で練習する他ないし、大会に出す作品も、もう修正点はほぼないくらいに仕上がってるからなぁ……。個人の部は初戦敗退したから俺が何か言うことはないよ」
「でもっ! 後輩の面倒を見るのも先輩の役目じゃないですかっ!?」
「さっきも言ったけど、俺は別に他人にどうこう言えるような技能はないから」
「経験はあるじゃないですかっ!」
「経験に伴うものがねぇ……ハハハ」
2人はどうやら所属しているらしい委員会についての話題を話しているらしい。
「って、2人は同じ委員会に入ってたの?」
「そうだけど……、彩梅ちゃんはそういうこと実に言ってないの?」
「姉とは……そこまで喋るほど仲が良いって訳でも、ないので……」
「アハハハハ……まあ、そうだね」
「なんか……ゴメン?」
「「謝ることじゃないよっ!」ですよっ!」
「「あ」」
偶然にも妹とハモってしまって気まずい……。それも2度も……。
「本当、別に気にするようなことでもないから……」
「……」
なんとかこの空気感をどうにかしようとするも、どうやら彩梅はどうもしようとしないらしい。
本当にどういうことなんだろう。
「ところでさ、実たちはどの委員会に所属してるんだっけ?」
「……言ってなかったっけ?」
「言ってなかったよ?」
そういや気になっていた。いつもはぐらかされ……てはいなかったかな? でも、その委員会が何かは聞いてなかった気がする。
「あー……それはゴメン。俺たちが所属してるのは放送委員会だよ」
……なるほど。




