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37話 認知・情緒・社会的発達ごっこ

「は~……パフェ美味し」


「服は……後で買った方が良かったな」


「今になって言うことじゃないでしょ」


 後悔先に立たずの言葉を頭に浮かべながら、デザートを食べる実を眺めていた。


「……」


「……何?」


「いや別に……何もないけどすることないし」


「見られてると少し恥ずかしいんだけど」


「俺は楽しいから見とくわ」


「鬼か」


 正午頃まで服を見て回り、区切りの良い感じの時間になって飲食店に入って昼食を摂っていた。と言っても、実がデザートを食べていることから、それも終わろうとしているのだが。


「食べ終わったらどうする?」


「そうだなー……取り敢えずゲーセン行って……あとは街を見て回って気になったところに行ってみるとかでいいんじゃない?」


「さんせー」


「じゃ、それ食べ終わるまでずっと見とくわ」


「……すぐ食べる」


「喉は詰まらせるなよ」


「うん」


 その後実は黙々とパフェを食べ続け、さっさと会計へと移った。


「意外と安かったな」


「去年と比べて今の自分にとっての『まともな量』を頼んだからね。そりゃ多少は安くなるよ、前回よりちょっと高いところ行ったくらいじゃ」


「そういうもんかな?」


 そしてショッピングモールの中にあるゲーセンへ。


「服持ってるとこう言う筐体のタイプしかできなくて残念だな」


「流石にエアホッケーとかだとずっと袋を手放してしまうから危ないもんね」


「治安が良いとはいえゲームセンターはねぇ。ごちゃごちゃしてるから分かりにくいし」


「ふぅー……勝ったー……」


「対戦も良いけど、協力も案外良いな」


「協力ゲームはゲーセンではやって来なかったか、少し新鮮な感じしたね」


「そうだな。……次は何する?」


「うーんと……そうだ、前々から考えてたところ、行っていい?」


「ああ、いいぞ」


 そして歩くこと十数秒。



「プリントシール機?」


「その名前で言ってるヤツ初めて見た……」


「プリとかプリ機とか何かこう……違和感あるし」


「その名前じゃない方でいいじゃん……プリク――」


「そっちの名前は商標だから、それはそれで使いたくないんだよねー」


「別にいいじゃん、使っても……。誰も怒りやしないって……」


「いや、いざというときに口走っちゃうと拙いから」


「なんで……? ……まあいいや、やってみよ?」


 そう言われて中に入ってみる。


「何か色々あるな」


「よく分からない機能とかもあるね……」


 操作パネルに表示されている者の中には目を大きくさせる効果のあるものから照明輝度の上昇、枠のデザインや星やハートのマークのエフェクト、更に見ても良く分からないものが多くあった。


「取り敢えず1枚撮ってみるか」


「そだね」


 まずは撮影。


「じゃあ編集っと」


 そしてパネルの表示が変わり、編集の画面となる。


「う~ん……どういうのが良いんだろう?」


「光のエフェクトとかで良いんじゃない? 顔をイジるヤツは……実には合わないんじゃないかな?」


「え? どうして……?」


「目を大きくするヤツとかは、その効果を発揮する感じの目とかあるからなぁ……。実の目は大きいし、他の要素も既に整ってるから、無理やり引き上げてもネタにしか見えない感じになると思う。……ほら、顔の肌色を明るくする感じの機能もあるけど、実の今の肌は色白だから、その機能を使っても、白すぎて顔が見えなくなりそうだ」


「ふーん……」


「いや、ネタとしてやりたいなら別に良いと思うけど……」


「……1回試してみても良い?」


「プレビューがあるからそれ見てそれで印刷するかどうか決めたら?」


「それもそうだね」


 実はその指でエフェクトボタンを押した。


「うーん……どちらにしてもネタみたいになった感じがする……」


「確かに……」


 プレビューで出てきた画像は実は元が良すぎるので顔を良くするエフェクトは寧ろ「過ぎたるは猶及ばざるが如し」という言葉がある様に、極端な物へと変貌させていた。


 俺は言わずもがな、この手のエフェクトは男に合うようにはあまりなってないこともあるようで、そして俺の顔もそのエフェクトらとは相性が悪いようだった。


 その後、そのエフェクト以外のエフェクトやフィルタなどを使って編集していった。


 そして、プリントアウト。


「こういうので良かったのか?」


「いや~……この身体だし、感性とかも変わってるのかなって思って、やったら楽しいのか、楽しめるのか試してみたくって」


「ほーん」


 その後は色々と遊んだりしたが、やはり荷物があって動きにくいこともあり、すぐに帰ることとなった。


「まー君さ」


 その帰り道、実が声を掛けてきた。


「ん、何?」


「腕……絡めてみて良い?」


「さっき撮った時みたいに?」


 先ほどのプリントシール機で撮った時、腕を絡めてみるような構図で撮ったポーズもあった。


「そう」


「別に、いいけど」


 実はその形で帰路に着くことをご所望らしかった。


「いいけど、またなんで?」


「なんとなく……?」


 そんな日もあるのか?


 実が男の時だったら即拒否だったが、今の実はプリントシール機の編集機能で不自然になってしまうほどの美少女だ。


 認めてしまう自分は多分に単純だなと思った。


「ほら、どうぞ」


「遠慮なく……」


 西日を浴びる実の顔は、飄々としているように見えた。


 あまりに綺麗な顔でこちらはそれなりに緊張していたが、実は特に感じてないのに対して少し悔しさみたいな感情が湧いてしまったな。

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