↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

# 灰の誓い



森は闇に包まれ、ジロウはその中を歩いていた。悲しみが彼の胸を満たしていたが、後悔の念はなかった。むしろ、その瞳には奇妙なまでの決意の光が宿っていた。彼が成したことは避けられぬことだったが、この先、答えの出ない問いの数々が彼を追い続けるであろうことも、彼自身よくわかっていた。彼はオズミとアラシの行方を休みなく探し求めたが、二人の痕跡はどこにも見当たらなかった。隅から隅へ、部屋から部屋へと丹念に捜し回ったが、何も見つからなかった。


そのとき、疑念が彼の心にじわりと忍び込んできた。「もしや、ナシが別の場所に隠したのかもしれない……」そう思うと、事態はいっそう深刻な様相を帯びていくように思われた。彼は松明を手に、家を出る決心をした。そして静かに、その松明を家に投げ入れた。程なくして木の壁に火が走り、炎はゆっくりと、しかし確実に家を舐め尽くしていった。ジロウは燃え上がる炎を見つめた。その瞳には、まだ弾けきらぬ悲しみが満ちていた。そして彼は、声もなくその場を後にした。


同じ頃、地下室ではオズミが為す術もなく立ち尽くしていた。恐怖に心を締め付けられ、頭の中は混乱していた。母に地下室へ閉じ込められてから、もう長い時間が経っていた。何度も何度も扉を開けようと試みたが、どうしても開かなかった。絶望が少しずつ彼の中に忍び寄ってきた。試みを重ねるたびに、取っ手を強く引く手が痛んだ。そして、あまりの絶望に打ちひしがれたその瞬間、手の傷口から血が流れ始めた。血が床に飛び散った、その刹那——奇妙なことが起きた。


見えるはずのない緑の光がぼんやりと灯った。それは幽かに揺らめく幻影のようで、次の瞬間、彼の目の前に一枚の巻物が忽然と現れた。そこに記された文字は判読できず、彼の知らぬ古い記号で満ちていた。だが、それ以上に彼を驚かせたのは、その巻物がまるで生きた腕輪のように、彼の左手首に貼りついたことだった。オズミは戦慄し、心臓が激しく脈打った。これが何を意味するのか彼にはわからなかったが、奇妙な力の感覚が体の中に満ちていくのを感じた。


その瞬間、オズミは押し寄せる恐怖と戦いながら扉へと駆け寄り、開けようと試みた。だが試みるたびに、無力感ばかりが募っていった。突然、目に見えぬ力が扉を吹き飛ばし、扉は彼の手から離れて宙を舞った。オズミは驚きに目を見開いたまま、一瞬立ち尽くした。それはまるで、すべてを飲み込む嵐のような、途方もない感覚だった。


驚愕と困惑の中、オズミの手首に浮かんだ紋様は再び黒く戻っていった。彼を捉えていた力が、静かに鎮まっていくかのようだった。だが、考えている余裕などなかった。もっと大事なことがあった。


オズミは地下室を出ると、その場に凍りついた。長年暮らしてきた家が、炎に飲み込まれていたのだ。炎は空高く舞い上がり、鮮やかな橙色の光が、衝撃を受けた若い顔を照らし出していた。彼が駆け出したのは、いっそう残酷さを増した現実から逃れようとする、ただの必死のあがきに過ぎなかった。


だが、少し前へ進んだとき、彼の目に映った光景は、これまで想像したどんなものよりも凄まじいものだった。両親が並んで倒れていた。血にまみれて。ナシとヒナ——彼の父と母——は、まるで死がその命を無情に奪い去ったかのように、同じ悲惨な姿で横たわっていた。


オズミは悲しみと怒りの入り混じった、深い叫び声を上げた。「嘘だ!嘘だ!」我を忘れて二人のもとへ駆け寄った。頭の中では「これは本当じゃない、こんなことがあるはずがない」と叫び続けていた。だが足元の地面は崩れ落ちるように感じられ、視界が揺らいだ。ついに、オズミはよろめき、意識を失って倒れ込んだ。


その瞬間、オズミが最後に見たのは、すべてを飲み込んでいく炎と、闇の中に消えていく両親の姿だった。そしてこの瞬間こそ、すべてが変わってしまった瞬間——オズミの運命が永遠に変わってしまった、その瞬間だった。


---


森は闇の中で静まり返っていた。太陽はすでに地平線から昇っていたが、この人里離れた場所には、まだ夜の影が居座っていた。老人は杖にすがりながら、ゆっくりと歩を進めていた。長い年月の重みを宿した白髪が、かすかな風に揺れていた。突然、遠くで炎が立ち上るのが見えた。空を照らすその光は、まるで何か重大な出来事を告げる合図のようだった。老人は胸の内に不安を抱えながら、好奇心に突き動かされるように、急いで火の方へと向かった。


燃え盛る場所にたどり着いた老人は、炎が上がっているにもかかわらず、ためらうことなく中へと足を踏み入れた。ここで何か尋常ならざることが起きているのだと、彼にはわかっていた。炎の合間を縫って進んだ先で、彼が目にしたのは、あまりに凄惨な光景だった。ヒナとナシが地面に倒れ、その亡骸は血に染まっていた。そして、その傍らにはオズミが意識を失って横たわり、その衣服も血で汚れていた。老人の胸は張り裂けそうになったが、その痛ましい光景を前にしても、まず何が起きたのかを確かめねばならないと感じていた。


老人はオズミの様子を確かめ、心の中で「まだ望みはあるはずだ」と叫んだ。頭を抱えるようにして、彼はすぐさま決断を下した。オズミの傷が深いことを考慮しながら、そっと彼を抱き上げ、すべてを飲み込もうとする炎から離れていった。森の中を長い道のりかけて歩き続け、ついに彼のささやかな小屋にたどり着いた。質素な小屋の中、彼はオズミを寝台に横たえ、憐れみと悲しみに満ちた眼差しで、その青白い顔をした若者を見つめ続けた。


翌朝、オズミは少しずつ意識を取り戻していった。頭には鈍い痛みが走り、その目は困惑と涙で満たされていた。頭の中では次々と考えが渦を巻き、彼はまだ、起きたことをうまく飲み込めずにいた。あたりを見回すと、見知らぬ場所にいる自分に気づいた。「ここはどこだ……」と、彼は小さく呟いた。あたりは静かで、少し肌寒く、そのせいでかすかなめまいを覚えた。


そして、突然、記憶が渦を巻くように蘇ってきた。火事、血、痛み、そして地面に倒れていた両親の姿——すべてが一気に押し寄せてきた。その衝撃に耐えきれず、オズミは声の限りに叫んだ。「僕は両親を失った!」その言葉はまるで刃のように彼の心を切り裂き、涙が止めどなく頬を伝った。オズミは完全に打ちひしがれていた。


老人は急いで彼のもとへ駆け寄り、その体を抱きしめ、なだめながら、長く続く彼の慟哭を受け止め続けた。時はゆっくりと過ぎ、オズミが泣き続けるほどに、老人の着物は涙で濡れていった。傷ついた若者を慰める言葉など持ち合わせてはいなかったが、この瞬間に必要なのは沈黙だけなのだと、老人にはわかっていた。二時間ばかり、涙の止まらぬ時間が続いたのち、ようやくオズミの涙も収まり始め、深い疲労が彼を襲った。呼吸が落ち着いてきた頃、老人は再び彼を寝台に横たえ、静かな声でこう囁いた。「失ったものは、もう戻らない。だが、お前は前へ進む道を、きっと見つけるだろう」


オズミは枕に頭を預け、深い眠りへと沈んでいった。泣き疲れた目は、今はもう乾いていた。だが、その心の奥底には、何か奇妙な感覚が芽生えていた。人生がもう二度と元には戻らないのだと、彼にはわかっていた。それでも、この悲しみに押しつぶされたままではいけないのだということも、彼は知っていた。彼の世界はすべて崩れ落ちてしまったのだから、もう一度生きていく術を、見つけ出さなければならなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。