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君だけが俺をユイと呼ぶ  作者: shiyushiyu


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50/54

第50話 アサガオ

 タイムカプセルを埋めてからは、季節が進むスピードがとても速く感じた。

 私は夜の寝る前にベッドで、その日起きたことを思い出すのが日課になってきた。


 今日は試験の後にみんなが私の誕生日を祝ってくれた。

 試験があったから誕生日のことなんてすっかり忘れてたし、みんなもそんな素振り見せていなかった。

 きっとサプライズだったんだろうね。

 本当にびっくりしちゃった。



「誕生日おめでとうー!」

 急に美術準備室で、言われた。

「……あ。ありがとう……」

 今までユイとさくみの誕生日をお祝いしてたんだから、自分の時も祝われるだろうとは予想していたけど、こんなに急にくると言葉が出ない。

 そもそも私は今まではずっと、ユイと二人きりで誕生日をお祝いしてた。

 誕生日は2人だけのものだった。

「ほれ」

 落合くんがプレゼントをくれた。

 無造作にくれるあたり落合くんらしい。

 みんなに気を使ってるのが分かる。

 今回は、私とユイに気を使ってあえてこういう態度を取ってるんだろうな。

 あとは、さくみに気を使ってるね。

 落合くんのプレゼントはクマのぬいぐるみだった。

 私の普段のキャラってクマのぬいぐるみっぽくないと思うんだけど……

「白石は多分可愛い物が好きだろうからさ」

 とか言ってくるけど、ホントよく人のこと見てるねー。

「はい! かおるちゃん」

 ゆかりちゃんは勉強セット一式だ……

「ちょっとゆかりちゃん?」

「クラス一優等生のかおるちゃんはきっとお勉強が大好きだと思って」

 にやっと笑ってくる。

 ちゃんとその後に、お部屋の芳香剤をくれるあたりゆかりちゃんらしい。

「どうぞ」

 さくみがくれた物は、映画のチケットだった。

「朝倉くんと行ってきな?」

 驚いた。さくみがそんな気を回すなんて。

 というか、こういうことには興味もなければ疎いと思っていたから。

「私からはこれよ」

 鬱陶しい。

 どうやって作ったのか、ユイの巨大抱き枕を押しつけてきたのは吉岡さん。

「ま。私が持っている方がもう1回りでかいけどね」

「誰か俺に肖像権というもの与えてくれ」

 嘆くユイが私にくれたのは、アサガオの髪飾りだった。

「? 何でアサガオなんだ?」

「だって白石。好きだよな? アサガオ」

「それにしたって季節ってものがあるだろ?」

「なんだよー。探すの苦労したんだぜ?」

 落合くんと言い合うユイが私を見る。

「嬉しい。ありがと」

 幼い頃に私がユイにあげてたプレゼントはその辺に生えてたお花だった。

 そして――

 私が描いた絵はアサガオ。

 ユイはちゃんと見ててくれてたんだね。

 でもね。ユイ……

 私が授業で描いた絵はアサガオの絵じゃなくて、アサガオの近くに居たユイの絵なんだよ。


 ●


「ごめんね。急に呼び出しちゃって」

 さくみが私を呼び出すなんて珍しい。

「ううん。何?」

「あのね。白石さんって、朝倉くんのこと好きだよね?」

 風が私の髪を撫でる。

 ヒュオという風の音が、外を走る車の音が、歩く人達の声が雑音じゃなくて効果音みたいに聞こえる。

「私も朝倉くんのことが好きだった。ううん。今も好き。でも朝倉くんの矢印は私に向いてないの……分かるよね?」

「ユイはまだ過去に縛られてるの……」

「そうかもね。でも、その過去に縛られてるってことで逃げ続けてる白石さんも結局は、過去に囚われて続けてるんじゃない?」

 そう。

 分かってる。

 私は、ユイの過去に縛られてるのを言い訳にして自分の気持ちに蓋をしてただけ。

「私。朝倉くんのこと諦めたから」

「え? さくみ?」

 さくみは泣いている。

 私が泣かした。

 また。私は人を傷つけ――

「傷ついてないから」

 さくみが私の心を見透かしたかのように言う。

「驚いたなー。あのアサガオの髪留めを見た時。朝倉くんの目にはずっと白石さんしかいないんだなって思った。私なんかが入り込む余地もない……」

 さくみが目の端を拭う。

「白石さん。ちゃんと二人で過去を清算してね?」

 さくみの笑顔が眩しすぎる。

 ホントにいい子で健気な子。

「さくみ。1つ聞いていい?」

「なに?」

「私ってそんなに分かりやすかった?」

「そりゃあ、白石さんの気持ちに気づいていないの朝倉くんくらいじゃない?」

 笑顔で言われた。

 そうなんだ。

 私的には隠せてるつもりだったし、ユイの方が分かりやすかったと思ってたのに。

 私もユイも分かりやすかったのか……



 ならもう。

 隠す必要なんてないよね。


「さくみ。もう少し付き合ってよ。私とユイの想い出の場所教えるから」

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