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君だけが俺をユイと呼ぶ  作者: shiyushiyu


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第29話 吐露

「ゆかりちゃ~ん! どうしたらいいと思うー?」

「待って待ってかおるちゃん。最近ちょっとキャラが違うと思ってたけど、こっちが本当のかおるちゃん?」

「そんなことどうでもいいよー」

「いやいやいやいや! 良くないからね?」

「いいから聞いて! こんなこと今までになかったの!」

「んもー。好きな人の話しでしょ?」

「うー。ユイが他の女子と話してるだけで気になっちゃうよ~」

「そのユイってのが誰なのか知らないけど、そんなに好きならもっとアタックすればいいじゃん」

「できないよー。ゆかりちゃんだってアタックしてないじゃんー」

「う。私の場合は遠距離だし好きだけど憧れに近いから」

「一途だよね。好きになってもう1年以上じゃない?」

「中学の時に好きになった人だからねー」

「夢を追いかけてる人だっけ?」

「たまにしか連絡取ってないし、返事は返って来ないから脈なしなんだけど、それでも諦められないんだよね」

「こんなにも一途なんだから実って貰わないと!」

「お互い頑張ろうね! あ。うるさいのが来たよ」


 ●


「おはよーさん! 何話してたんだ?」


「おはよう落合。何でもないよ。ほら、あそこにさくいるでしょ? 今日もさくは可愛いねって話してたのよ」

「塩田? 何で白石と佐々木の会話で塩田が? まぁ確かに最近雰囲気変わったけども」


「……へー。やっぱり落合ってちゃんと見てるんだねー」

「なんのこっちゃ」


「さくみが可愛くなったの、ゆかりちゃんの影響な気がするんだよねー」

「何で?」

「なんかさくみ、ゆかりちゃんのことよく見てる気がするから」

「いや。それは2人のことを見てるだろ」

「「え?」」


「何でもねー。朝倉来たから行くわ」


 ●


 学校が憂鬱だと思うのは久しぶりだ。


 ずっと夏休みだったら良かったのに。

 なんてありきたりな気持ちが溢れてくるな。


「何ダルそうな顔してるんだ?」

 落合が話しかけてきた。

 休み明けの朝だというのに、元気だな。


「休み明けって憂鬱にならん?」

「俺はむしろ、みんなに会えるから楽しみだな」

「見解の相違だな」

「何を難しい言葉を使ってんだよ」

 笑いながら背中を叩かれた。


「いやだってこれから休み明けテストがあったり、宿題回収されたりするんだぜ?」

「んなもんみんなで終わらせただろ?」

 確かに落合の言う通り、宿題は同好会のみんなで集まって終わらせたが、テスト勉強をした記憶はない。



「テストなんて、授業聞いてれば問題ないだろ」

「いやそれは特殊なやつじゃねーの?」

「え? 朝倉って授業聞いててもテスト勉強しないと点数取れないタイプ?」

「明らかにバカにしたよな?」

 俺の言葉を聞くと落合が爆笑した。


「それで?」

 唐突に落合が聞いてくる。


「あぁ。どうやら俺は佐々木のことが気になっているようだ」

「だろうな」

「だろうなって。気づいてたのかよ」

「分かりやすすぎだろ」

 笑いながら落合が言うが、それって佐々木にもバレてるってことじゃないのか?


「ま。安心しろよ。俺くらいしか気づいてないから」

 落合のこの言葉は、俺の顔色を見ての言葉だろうな。


「今度、デートに誘おうと思ってるんだけど、どう思う?」

「どうって。まぁ誘うのはいいと思うぞ?」

 そう言って落合は言葉を区切った。

「ただ。今までの話しを聞く限り普通に誘ってもダメなんじゃないか?」

「だよなー」

 俺が頭を抱えると、落合は笑ってその悩みを払拭した。

「相談すりゃいいじゃねーか」

「相談?」

「自分の過去のことで悩んでるんだろ? そのことを素直に相談してみ? それだけでデートになるしうまくいけば、朝倉と佐々木の仲が深まるかもしれないだろ?」


 落合は時折、こういう突拍子もない計画を打ち立てる。

 ホントにすごい。

 こんなにいいやつが彼女すらいないなんて考えられない。


「そういう落合はどうなんだよ」

「何が?」

 これだよ。

 いつも落合はとぼける。


「好きな人の1人や2人いるだろ?」

 その言葉を聞いた落合は一瞬目を伏せた。

「さぁな」

 その言葉だけで、もうこれ以上この会話を広げてはいけないのは分かる。


 だが……


「これだけ俺のことを分かってるんだ。自分のことだって分かるだろ?」


「分かってるからだよ」

 いつもよりも暗い言い方だ。


「落合?」

「何でもねーよ」


 頭の後ろで手を組んで自分の席に戻る落合を見て俺は思った。


 ――落合って、周りの人のことを気遣ってばかりなんじゃないか?


 ●


 久しぶりにあの頭痛がした。


「どうした?」

 落合はいつも俺の変化にすぐ気づく。

 もう隠しておく訳にはいかないだろう……


「実はな。最近落合といると頭が痛くなるんだ」

「なるほどな。アレルギーだったか」

「真面目な話しだぞ?」

「悪い悪い。んで?」


 今度こそ落合は真剣に話しを聞いてくれた。


「あぁ。俺は小学生くらいの頃の記憶がないんだ。っつても丸っきりないわけじゃなくて、一部だけ抜け落ちてるような感じだ」

「あぁ。時折朝倉が遠くを見てる感じになるのはそのせいか」

「佐々木にも言われたけど。たぶん昔を思い出してるからだ」

「それと頭痛と俺にどんな関係があるんだ?」

「わからないんだ」


 気まずい沈黙が流れた。


「考えられるのは」

 落合が口を開く。

「思い出したくない記憶だな。俺に似た知り合いが居て、例えばそいつにいじめられてたとか」


「逆にいじめてたとか?」


 思わず口にしていた。

 今まで抑え込んでいた気持ちだ。


「なんだそれ? いじめていたのが思い出したくない記憶?」

 落合が困惑する。

 もう――

 心に嘘はつけなかった。

 本当は気づいていた。

 思い出そうとすると、頭が痛くなる。そしてそれは思い出したくない記憶ならば……


「俺がその子を殺している。とか……」


 空気が凍った。

 落合も何て言っていいのか分からないようだ。


「ねぇよそんなこと」

「なんでそんなこと分かるんだよ!」

 きっぱりと言われて腹が立った。

「朝倉に人を殺せるとは思えん」

「そんなのわかんねぇだろ?」

「分かるよ」


 そう言って落合が俺の目を真っすぐ見てきた。


「親友だからな」


 幼い頃。

 言われた言葉だ。


 俺たちは親友だぜ!

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