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君だけが俺をユイと呼ぶ  作者: shiyushiyu


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第19話 友達の定義

 俺は塩田が人とすんなり話せるようになるための練習台となった。


 その場所は人目につかない場所ということで、美術準備室になった。


「塩田が美術部に所属してたなんて知らなかったなー」


「といっても、私1人だけだし来年部員が誰も入って来なければ同好会に格下げされちゃうんだけどね」


 どうりで塩田は絵が上手いわけだ。


 昨日の風景画も先生に褒められていたしな。


 後は白石のアサガオの絵も褒められていたな。


「私ね。朝倉くんが白石さんのこと廊下に呼び出した時、私が美術準備室にいることをバラしたのかと思ったの……」

「あぁ。それはもちろん言ってないけど。何で内緒にしていたいんだ?」

 ちょっとした素朴な疑問だった。

 別にそんなの隠す程のことでもないと俺は思った。


「たった1人の美術部って、それだけでインパクトあるでしょ? 人が集まって来たら嫌だったの」


「なるほどな……確かにその気持ちはよく分かる」

 俺もみんなから視線を集めるのは嫌いだ。


「朝倉くんは結構目立ってるけど、恥ずかしいとかそういう気持ちないの?」

 あぁ。なるほどね。

 確かに俺は白石との関係で、目立ってはいる。

 だがよくよく考えたら、そこは恥ずかしいとか嫌とかいう気持ちはないな……


「不思議なんだが」

 そう口にして、塩田の目を真っすぐ見る。


「人目を気にしてるはずなのに、なぜか嫌とか恥ずかしいとか思わなくなっている」

「そうなんだ? 慣れてきたとかそういう感じ?」

「何だろうな。好奇の目で見られるのは嫌だったはずなのにな……」

 改めて言われると理由は分からない。

 確かに慣れてきたのもあるのだろうが、

 それ以外の理由がきっとある……

「そういうのに気にならなくなるくらい、気を許せる仲間がいるからかも……」

 口にして確信した。

 絶対にそうだ。

 俺が周りにどう見られても、落合と佐々木は俺のことをそういう目で見ない自信があった。


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「親友ってやつだね……」

 羨ましい。と最後に塩田が付け足す。


 その塩田の表情を見て、俺は思った。

 塩田は人とすんなり話せるようになりたいと俺に言った。

 そのために俺は練習台になると。

 だが、友人を作った方が速い気がした。


 塩田と目が合う。

 きっと塩田も同じことを思っているのだろう……


 けど……

 俺にはどうやって落合と友達になったのかが分からなかった。


 分からない以上、塩田と友達になれるとは思えなかった。


 上辺だけの友達なんて信頼できないしな。


 そういえば俺は、幼い頃に親友と呼べる友人がいたような気がする。


 一瞬。頭が痛んだ……


 ●


「大丈夫?」


 声にハッとした。

 今日は白石と共同発表の調べ物をしていたんだった。


「ずっと上の空だねぇ」


 昨日のことがあって、今日は何も集中できそうにない。

 素直にそう、白石に明かすことにした。


「実は昨日。友達の定義について考える機会があったんだ」

「唐突だねぇ」

 ニヤっと白石が笑って椅子に腰かける。


「それで?」

 俺を目の前に座るように促してくる。


 時折不思議だが、白石にはこういうところがある。


 普段は自分の思うように進まないと不機嫌になる癖に、本当に稀に自分の思うように進まないことを楽しむ節がある。


 今も正にそうだ。


「あぁ。俺も気づかなかったんだが。どうやら俺は落合と友達だったようなんだ」

「気づかなかったってどういうこと?」

 クスリと笑いながら白石が先を促す。


「俺は友達がどういう存在か分からなかったんだけどさ、ある人の言葉で落合のことを信用していることに気づいたんだ」

「それって友達だろ?」

「友達だね」


 俺の言葉に白石が頷く。


「そこから、友達の定義が分からなくなって上の空なのかな?」


「そうなんだよ。すまん」


 素直に頭を下げる。


「それはいいんだけど。確かに難しいね」

「え?」

「友達の定義だよ。私も友達は少ないから改めて聞かれたらよく分かんないかも」


 確かに白石もキャラ的に友達は多くない……


「キミの友達に聞いてみるのはどう?」


 という白石の提案を受け入れ、月曜日に落合に聞いてみることになった。


 ●


「友達の定義ねぇ」

「どったの?」


 落合が難しい顔をしていると、横から佐々木が顔を覗かせた。


「珍しく朝倉が俺に問題を出してきたんだよ」

 落合がわざと困った顔をする。

「ほぉ? それは困ったねぇー。お姉さんにも詳しく聞かせてごらん?」

 佐々木まで悪ノリしている。


 だが、この様子を見て唐突に理解する。


「これが友達だよな」

 思わず口にする程に。

 そしてまた、頭が痛んだ。

 一瞬、あの草原の光景まで見える。


「昨日の話し?」

 突然会話に白石が入ってきた。

 さっきの光景も頭痛もしなくなった。

 俺はぼーっと白石のことを見ていた。

「朝倉くんが言ってたやつ?」

 何を考えるわけでもなく。

「ちょっと聞いてる?」

「だめだ。たまにあるやつだ」

 佐々木と落合の言葉で我に返った。

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