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迎合

十月も半ばを迎えようとしていた頃、竹田は前下から一つの連絡をもらった。ある掲示板に正義のヒーローを名乗る者が現れたことを。そいつが今回の警官襲撃を起こした犯人である可能性が高いということであった。


「義光帰ったぞ」


「父さん。久しぶりだね」


竹田の父は単身赴任中であり、久しぶりの帰宅であった。


「いつまでこっちにいるの?」


「そうだな、、この休みが終わったらかな」


「なんだ。ならまたすぐじゃないか」


「そういうな。今は新規プロジェクトの立ち上げで忙しいんだ」


竹田は父の仕事をよく知らなかった。だが、忙しい人というのは知っていた。日本中の各地へ赴き、飛び回っているのだ。


夕食の際に三人が集まるのは珍しかった。久しぶりの迎合に三人の会話は弾んでいった。


「そう言えば義光。最近この辺りで事件があったそうじゃないか」


「そうなのよ。あの犯人まだ捕まってなくて」


「全く、下らんことをする奴もいるもんだ。義光、そういう奴には関わるなよ」


「そうだね」


そんな話の最中に、父の電話が鳴り響いた。少し画面を確認すると父は席を立った。


「少し仕事の電話が入ってね。少し出てくるよ」


「なら俺もトイレ」


竹田は用を足し、部屋から出ると父が電話をしていた。


「わかってる、すぐ帰るから。こっちだって早く会いたいんだ」


父の会話は一部しか聞こえなかった。だがその一部で十分であった。竹田にとってそれが何を意味しているのかははっきりと理解できたからである。


食事を終えると竹田は自身の部屋へと向かった。パソコンを開き、例の掲示板に入る。自身の偽者を見つける上で一番手っ取り早い方法があった。


竹田は前下に電話をかけ、その方法を持ちかける。


「模倣犯を見つけるにはこの方法しかないと思うんだ」


「ですが、それでは竹田さんも危険なのでは?警察も重々承知しているでしょうし」


「だから、そいつを倒すんだ。俺はそいつを悪だと思ってるし」


掲示板を見張っているとある一つのログに辿り着いた。IDは全くの別物であるものの、口調や書き方などは全く同じ者を見つけたのである。それは今日の夜に実行すると書かれていた。


それは波田相見。この近くの吉俣発電所の局長であった。彼がこのように言われているのは一つの事件があったからである。


彼、波田局長は沖川流域にある発電所において、発電の際に出る薬品の排出液を処理せず川に流した疑いがあったのだ。国の監修の元調査が行われたが、異常は見られなかった。


だが、先日の沖川増水の一件から、河川の色が変だった、泡立っていたなどの目撃情報もあったことから、国家の隠蔽であるなどの噂が沸きだったのである。


これが偽者の可能性も考えたが、後悔しては遅い。竹田は準備を整えて、その情報の場所へと向かうことにした。


時を同じくして、小形もこの情報を掴んでいた。


「よし、今夜吉俣発電所に向かうぞ」


「小形、今回も罠じゃないのか?」


「なぁ、渡邉。これが罠だとしてもそのまま放っておくのか?どうせあいつらの事だ。今回もまたカメラを当てにはできん」


「なら、さっさとその波田にでも連絡しろ。今回は前回の五倍、、いや十倍で包囲しておく」


「いや、波田には言わん。それと行くのは二人だけだ」


「おいおい、民間人を巻き込むつもりか?お前それどうやって報告書書くつもりだ」


「そんなことはどうでもいい。今は犯人逮捕に注力する」


「なぁ小形、お前死ぬつもりだろ」


渡邉のその一言に小形は黙ってしまう。だが、少し顔を顰めた後、渡邉の肩に手を置く。


「いや、これは高山の敵討ちだ。そんなつもりは全くない。ほら行くぞ」


小形、竹田は吉俣発電所へと向かう。その場所は地獄への道標となっているのだろうか。

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