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正義の伝達師 プワコ

彼、竹田義光は悲惨な人生であった。顔は自虐することが出来ない中途半端なブスであり、スポーツも音痴というほど出来ないこともなかった。その他諸々、なにもかも中途半端な男であった。


彼には友人がいない。だからといってクラスで孤立しているわけでもない。順風満帆とは言えない、味のしない高校生活を送っていた。


だが、帰り道は彼にとって至高の一品であった。途中にあるパン屋にある、クリームパンがとても絶品なのである。彼はそれを買い家で食べるのがいつもの日課であった。


彼はパン屋に入り迷わずそれを購入する。店員に顔を覚えられているのか、最近は店に入っただけで既にパンが袋に詰められる段階まで通った。彼はそれが唯一の自慢であった。


「今日はこれが最後なんですよ」


パン屋のおじさんにそう言われて、彼はハイとただ一つ返事をした。


いつもと同じ帰り道、ただ今日だけはいつもと違っていた。路地裏から何か動物の鳴き声が聞こえてきたのである。普段なら足早にその場所から去っていったのだが、今日この時だけは、何故かその場所に足を踏み入れたのである。


「犬、、、?」


ダンボールには、一品の白い犬が居たのである。クゥーンと鳴くその姿を見てるとほっておく訳にはいかなかった。


「けど、ドックフードなんて家にもないしなぁ」


彼の家はペット禁止を貫く一般家庭であった。父が猫アレルギー、母が犬アレルギーだから仕方ながないのではあるのだが、彼はペット飼うということに密かに憧れを抱いていたのである。


彼は一つの決心をした。彼が今持っている食料はこのクリームパン。クリームの部分を与えるのは不味そうだったので、パンの部分を少し千切り、犬に分け与えた。


犬はガツガツとその少しのパンを食べている。よっぽどお腹が空いていたのか、すぐに食べ終わった。その犬は彼をじっと見つめ、物欲しそうにこちらを見ていた。


彼は、はぁと一つ溜息をつき、犬に再び千切ったパンをあげようとした。その時犬は左手に持っていた残りのクリームパンにかぶりつき、むしゃむしゃと食べ尽くした。


あまりにも一瞬だったため、彼は呆気に取られていたものの、すぐに目の前の現実を理解した。彼は今日のご褒美を今取り上げられたのである。


「おい!何してんだよ」


犬にそういっても理解していない。悪びれもなく舌を出してこちらを見ている。犬に八つ当たりしても仕方がないとは思っているものの、どこかやるせない気持ちになっていた。


「さっきのなんなんだったプワ?」


彼の目の前ではあり得ないことが起きていた。彼の脳内ではそのことを理解することを拒んだ。犬が喋ったのである。


彼は一歩ずつ後ろに後退りする。だが、路地裏ではそんな余裕はない。後ろのパイプに手をつき、腰をストンと下ろすことになった。


犬はそんな竹田をみて、背中から小さな羽を広げ、彼の側まで寄ってきた。この時点で彼の脳内には、様々な憶測が通過していった。だが、通過しただけで脳内に停車することはなかった。


「君の名前は何というプワ?」


「竹田、、、義光、、、です、、、」


彼は咄嗟にそう答えた。言わない方がいいとそう判断する余裕なんてものは存在しなかった。


「タケッチ。さっきのはなんなんだったプワ?」


「クリーム、、、パンです、、、」


「クリームパンって言うプワ!?また食べたいプワ〜〜」


「もうないよ、、、さっきのパン屋の人もそう言ってたし、、、」


「もうないプワ?それは残念プワ。けど、タケッチ助けてくれてありがとうプワ」


その犬とも言えない、もはや地球の生き物とは思えないこの生物は、一体何者であるのだろうか。


「えっと、、、なんで犬が空を飛んで喋ってるの?」


「犬じゃないプワ!プワプワ星から来たプワコプワ!」


「そ、そうなんだ。」


竹田は比較的冷静であった。もしかしたら、この生物を捕まえることが出来たのなら、この噛み飽きたガムのようなこの人生に、味を戻せるかもしれないと。


「タケッチは優しいプワ!きっとこれを有効活用してくれるプワ」


プワコと名乗るこの生物は謎の仮面、、いやお面を渡してきた。まるでお祭りクオリティのお面に彼は面を食らってしまった。


「これは一体?」


「正義の仮面。僕たちプワプワ星の住民は、宇宙に正義を広めるためにやってきたプワ」


竹田は突然の正義という言葉に戸惑いを覚えていた。正義なんて考えたこともなく、ただ自分の赴くままに行動していた彼にとっては、言葉の重みがよくわからなかったからだ。


「タケッチは難しく考えなくていいプワ。タケッチは優しいから、タケッチの悪は正義ではないプワ。まずは、その仮面をつけてみるプワ」


促されるままに竹田は仮面をつける。お面のような視界不良はなく、まるでつけてないような感覚だった。


「これは、一体何が違うの?」


「これを付けている間は力が強くなってるプワ。さぁ、タケッチ早速悪を探しにいくプワ」


「けど、こんなの付けていて恥ずかしくない?」


「大丈夫プワ。力を使ってない間は、いつものタケッチになってるプワ」


「そ、そうなら良いんだけど」


こうして、竹田とプワコの奇妙な正義のヒーローが誕生したのであった。

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