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聖女二人はサバサバ系  作者: 三輪 有利佳  (旧 美輪 伊織)


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20/20

白凱侍女たちの苦悩

 侍女の中でも圧倒的に信頼があり、仕事の早さを王家からも認められ、魔獣から自分の身を守れるように教育され、特務を任命されている。白凱討伐軍の侍女達は特別な存在だ。


 王家預かりの私達は侍女の中でもエリート中のエリート。

 私、エミリーと伯爵家次女のルーレン、そして子爵家出身のローズティアラは圧倒的な実力を見せ白凱でも一目置かれている。


 私たちの年齢は多少バラついているが、王宮でも重要な場所に配属されて経験を積んで来た。


 ある日、城の侍女やメイドで優秀だと名が挙がる二十名ほどが抜粋され集められた。

 どうやら聖女様のお世話をするために、教育を再度施すつもりらしい。半年間侍女長と王家の家庭教師達と、陛下、王妃に直々に指導を受けた。これは人生の奇跡だ。


 当然脱落者も数名いた。こればかりは爵位だの、育ちだのでは無く、適性で選ばれたと今ではわかる。


 結果として私たち三人は白凱の討伐軍に配属され、聖女様二人と行動を共にするようになった。


 間近で接する聖女様達は本当に素晴らしかった。多くの貴族女性を世話して来たがローズティアラは彼女達ほど高貴な人間を見たことがないと言う。


 まず、肌と髪が美しく整っている。これはかなりの手入れをされて来た証拠だとルーレンも言う。ユイナ様は太陽光を遮る努力を怠らない。そして美容法にも非常にこだわりがあった。

 これはかなりの使用人達が手を貸していた証拠であると侍女達は考えている。


「このオイルは洗髪の前に付けるわ。髪の毛を絡ませないし、汚れをブラッシングで浮かせましょう」

 討伐の野営の時であってもユイナ様は美を追求されていた。侍女としてこれほどの人に尽くせるのは幸せでしかない。

 

 とある日。食事に文句など言わないユイナ様が頭を下げた。

「ごめんね、この時間に柑橘類は食べないのよ。紫外線の影響を受けてしまいますから。でも後で食べるので気にしないでね」

 私は急いでその言葉をノートに書き記していた。(注;気遣いの言葉遣いまで素晴らしい)


 私はユイナ教があったら入信しようと思うほどに聖女に心酔した。


 セイナ様は朝夜は必ずテントの中で体を柔らかくする体操をされる。


「怪我をしないためにもここと、ここは必ず解した方が良いですよ」

 そう言ってローズティアラの肩周りをマッサージしてくれたこともあった。

 驚くほど深部に効いて思わず『はあぁ』と声が漏れてしまったほどだったそうだ。


 特殊侍女達が学んできた技術のさらに上を行くそれに思わず涙が溢れそうだった。

 神の国の技術を惜しみなく私たちに与えてくれる二人は神々しくもあり、尊敬に値する。

 聖女様達の美貌は私たちが命に替えても維持し続けます!そう宣言した日もあった。

 セイナ様は

「ありがとう。でも王宮と違って外だからやむを得ないことがあることも分かっているからね」と優しく言ってくださった。

 


 聖女様達は気持ちの良い、性格も最上級の方達であった。討伐隊をまとめ、任務の厳しさに文句も言わない。

『人のお姿はしているけれど、これほどまでに清らかな方を私は知らない』ルーレンも他の侍女達に話す言葉に熱が入る。それは自然な流れだった。


 侍女達はオスカー殿下とジェラルド様、パーカー様と聖女様達が縁付くように工夫しなさいと王家から密命を受けている。

 神の国に戻りたいと言い続けるお二人をどうにかこの国に引き留めていかねばならないと私たちは必死になった。



 テントを任されている私たちは聖女様たちにお声をかける。

「本当にジェラルド様は高貴なお生まれですのに気さくで優しいですわ」

「ええ、気が利いていらっしゃって思いやりに溢れていらっしゃるのがわかります」

「聖女様だからお優しくされるのではなくて、お二人の人柄に触れているからあのように気にかけていらっしゃるのですわ」ルーレンが言うとローズティアラが

「あら(笑)確かにそうですわね。じゃなきゃ手を握ることは流石にしませんわよね」と大人の余裕でほんの少し揶揄う。

「オホホホホ」

「ウフフフフ」

 テントの中でも、密命を受けているローズティアラの手は怯まない。

 聖女に微笑みかけると二人は耳元を赤くして

「免疫ないですよ〜」と照れている。

「ユイナに笑いかけていたよね?」とセイナ様はいたずらっ子のように言いながら、その言葉掛けに対しても恥ずかしいのかモジモジしている。


 私たちは『まぁ〜』と言いながら確信した。

(お二人ともとても純粋で可愛らしいお方たち。清らかであるが故に三人の男性にかかれば赤子のようなものですわね。それを側で見ている私たちも眼福ですわ。本当に美男子たちの本気って怖いわ)


 王家の命令でもあるが、一番は私たちが聖女様にこの国に留まって頂きたいという気持ちがどんどん膨らむ。

 その溢れんばかりの愛をいつも邪魔するのが『赤凱』の小汚い兵士たちだ。


『王宮侍女って大変だな〜毛布にそんなリボンや刺繍つけてたら荷物が重くなるぞ』と揶揄ってきたり

『そんなあっという間に割れそうなティーカップ持ち歩くのはやめた方がいいぞ。サッと拭けて洗いやすいエビア木の食器を次は揃えた方が荷造りが楽になるよ』などと下品な事ばかり言う。


 すると聖女様たちも『あら、そっちの方がいいと思うわ。そうしましょう』などと言い出すのだ。

 王子達が野営といえど、美しい料理でもてなそうと工夫してくださっているのを知っているのに……

 これでは聖女様達を、オスカー殿下たちが作り上げるロマンチックな雰囲気に持っていけない!とルーレンなど青筋を立てて彼らの妨害を怒っている。


 お菓子ひとつにしても野蛮な彼らはパクリと味見をして

『甘すぎるぞ!!これ貴族ってこんな頭が痛くなるほどの砂糖食べるのか?』などと王宮からの砂糖細工をバカにする。

 ローズティアラは『価値を知らないって怖いことよね。彼らとは一生分かり合えないわ』と溢していた。


 ドレスを持ち込んでも赤凱兵士が『わ!ギラギラしてますね』などと褒め言葉にならないような頓珍漢な感想を言うからセイナ様も『討伐中は控えませんか』などと言う。


 ジェラルド様やパーカー様も距離が近い彼らとの生活で思うように『行動』できないと頭を抱えていらっしゃる。


「この遠征中にどうにか距離を縮めたいんだ。君たち協力を頼むよ」

 討伐が一年過ぎたころ、オスカー殿下が直々にローズティアラを呼び出した事もあった。

 私もルーレンも彼らの焦れている気持ちを察し気を引き締めていかねばと決意を新たにした。


 だがそんな中、聖女様達の行動で私たちの心にふわりとした違和感が生まれるようになった。


 私たちは最初こそ彼らを見下して遠ざけようとしていたが赤凱の仕事内容を見ていると白凱の兵士たちがサボっている……いや、効率の悪い分担をしているような気がして来たのだ。


「エミリー、残務処理って言葉を私は良いと思わないわ。彼らは白凱の兵士が嫌がる仕事を淡々と熟しているの。小さいからと言って魔獣が残っていたらこの農地はどうなるかわかるでしょう?」

「はい、きっと今は量が少ない魔素でも、やがて影響が出てきます」


 大型魔獣をオスカー殿下達がバッサリと討伐した後、赤凱は周辺を片付けたり、小物の魔獣を全て処理していく。それらは赤凱の仕事であり、貴族たる白凱の兵士たちには関係のない仕事だ。

 小魔獣は農民でも倒すことが出来るんだから赤凱は大した仕事をしていないんだ……王宮ではそれが常識だった。


 だが、ユイナ様はそれを大切な仕事だと言った。

「そうよね。だから赤凱のみんなは、丁寧に仕事を仕上げるのよ」

「王宮の仕事に似ていませんか?大枠は宰相や大臣の皆様が仕上げてくれる……でも細部は侍女の皆さん、ランドリーメイドや、掃除婦たちが主要な場所を磨き上げていくから夜会や、国賓をお招きできる場所がいつも整えられている。そして、お腹を空かせている人たちに食堂の女性達が食事を十五時間以上作り続けているから執務室や仕事を回している皆が絶え間なく仕事を回していける」

 ルーレンがハッとした顔をする。

 

「テントでゆっくりしている白凱のみんなが協力してくれたらきっともっと早く王宮に帰れるのに、手伝ってくれないのって寂しいね」

 そう言うとセイナ様が徐に立ち上がってズボンに履き替え始めた。


「だからこっそり手伝って終わらせちゃわない?」ユイナ様がいたずらっ子のように微笑む。とても可愛い…………いや!そんな場合ではない。

「そんな!!外はまだ危ないですよ」ルーレンが慌てて引き止めようとするけれどセイナ様は

「早く帰って、ローズティアラのお父上にお見舞いに行ってあげましょう。王都から入院の知らせがあったんでしょう?ここの場所を明日に持ち越さなければ三日で目処がつくよ」と笑って出ていった。


 ユイナ様は『私はここで武具に聖力を注ぐわ。赤凱のマルコを呼んで』とローズティアラに声をかけた。

 私達は聖女様達の行動を咎めなければと思うが、その言葉の意味も理解していく。


 特殊侍女は頭も良いから配属されているのだ……そう。バカではない、自分で考える頭を持っているからこそ聖女様達の考えがよく分かる。

 王子達率いる白凱兵士たちはその場所の大きな魔獣を倒し『華やかな大きな仕事』をしているが、それは聖女様達に『カッコイイところを見せる』の比重が大き過ぎじゃないだろうか?

 国が建て直しを図っているときなんだから、もっと積極的に仕事を進めて行くべきなんじゃ……そんな考えが過ぎる。ローズティアラも同じように考えているのか押し黙っている。


 ルーレンがやがて

「私は聖女様達の全てに従うって決めていますから」と手を動かし始めた。


 そうだ。王家に雇われているとはいえ、主人は私にとってユイナ様とセイナ様だ。


 そう思うと気持ちが軽くなった。



 

 討伐は進み、私たちと聖女様の心の距離はすごく近くなってきたと思っている。最近ではユイナ様の考えていることや、セイナ様の行動パターンも読めてきた。

 変わらず尊敬に値することばかりだし、一生ついていきたい気持ちも変わらない。


 

 オスカー様がユイナ様とデートをしたいと言っていたことを思い出し、私は殿下のテントに向かった。

「このようにユイナ様はバターがたっぷり使われたお食事より、お野菜を多めにされた煮物や、川で釣ったばかりの魚料理を好まれますので」とそこまで言った時オスカー様は苛立たしげに机をバン!と叩いた。


「そんな情報どうでもいい!ユイナの関心をどうやったら引けるんだよ!うちの婆様達が好むようなしょぼくれたディナーで何を盛り上がれって言うんだ。彼女が好きな芝居の傾向や好きなドレスのカラーとか!もっと身のある報告をくれ」


 私はテントを出た後オスカー様の剣幕に流石に怒りが込み上げた。


「結局オスカー様は自分の好みとおんなじ物を好む女性を連れて来いって言ってるのと一緒じゃない。女性を喜ばせるって視点に立てないのかしら!」


 すると木の陰に赤凱のウィリアム副司令官が立っていた。


「やっと気がついたか?そうだよな。ユイナ殿が喜ぶのは味が薄く、神の国に近い食べ物だ。盛り上がりたいならそれを準備すべきだよ。たとえ殿下の好みに合わなくても」

 珍しく彼が賛同してくれたことで私もつい言葉が飛び出てくる。

 

「そうですよね。わたくしもそう思います!ユイナ様は甘すぎるお菓子よりお餅?という味の殆どない薄皮にほんのり甘い豆を潰した物を包んだ食べ物を好まれていました。ドレスもお好きでは無いのです。軽くて品の良いシルエットの綺麗な物を揃えましょうと何度言っても、『流行が違う!もっと隣国で流行っている赤紫を使え!』だの『そんな飾りじゃ足りない。フリルをふんだんに使え!』と言うんです」


 ウィリアム副司令官はその私の言葉にクククと悪い笑みを浮かべた。

「エミリー、君はよくやっているよ。本当に。だから全く気にしなくていいと思うぞ」


 そう言って立ち去って行きました。

 

 

 

 

 

 

結菜

「異世界って言っても、日焼けするから紫外線は本当に敵だよね」

聖奈

「健康的な肌も嫌いじゃないけどね」

結菜

「肌が復活する年齢ならね。私は嫌だから……」

聖奈

「なんかごめん」



9歳のギャップで軽く揉める聖女達に侍女たちはドキドキするのでした。

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