悪役令嬢が多すぎる件
新連載です。温めてきたのでそろそろ出しておかないと・・・
【あらすじ、聖女が二人は→聖女二人は】 二人の日本人の少女が王宮の通路を歩いていると豪奢なドレスを着た少女たちが急に十人ほど現れた。
そもそも王宮を日本人が歩いていること自体が違和感であるが、この二人は『救国の聖女』と呼ばれるウランバルブ王国で今、最も尊い存在である。
黒髪に切長の瞳、小柄な方がユイナ。
少し明るい髪色にすっきりとした体型で身長が高い方がセイナ。二人は突如王国の神殿にある中庭に現れたのだ。
魔獣は恐ろしく、人間の力だけでは倒しきれず、ウランバルブ王国は徐々に国力を削っていたところであった。
そして魔物に襲われ町も村も壊滅的な状態であった国をこの二年間で見事に復興していった立役者が二人に聖女である。
彼女たちは東南の地域の討伐を終え、三日前に王宮に戻ったばかり。
王や宰相、貴族院に報告をして先ほどやっと解放されたばかりであった。
貴族の令嬢たちは二人の方ににじり寄ってきたので、ユイナとセイナは立ち止まると儀礼的にお辞儀をし、そのまま立ち去ろうとした。
「ユイナ様、ちょっとお待ちください」
サッと移動しようとする二人を引き止めようと金髪に大きなリボンで髪を束ねた令嬢が結菜の腕をつかむ。
他の令嬢はその乱暴な態度を咎めることなく厳しい表情で二人を見つめている。
「お引き止めしてすみません。でも貴女たちに言っておかなきゃいけないことがあるんですの」
「そう。私たち、聖女様たちにこの国のルールをお伝えしないといけないって思い、馳せ参じましたの」
「だって、あまりにこの国のことを知らなすぎて、その上自分たちのことも分からなすぎてお可哀想ですから」
令嬢たちは綺麗に化粧しているが腹の中は真っ黒です!と言わんばかりの意地悪な雰囲気を醸し出した。
ユイナとセイナは顔を見合わせる。
「そうですか。それはご親切にありがとうございます。それはどのような内容でしょう?」ユイナがにっこり微笑み金髪の令嬢と栗毛の令嬢に笑いかけた。
すると彼女たちは顎をあげ、ムッとした表情を隠しもしないで喋り出した。
「実はお二人が来られるまでオスカー殿下の婚約者はこちらにいらっしゃるメイナード侯爵令嬢でしたのよ。勿論我が国に貢献してくれたことは私たちも認めてます。でもメイナード様の婚約者のオスカー様に手を出すのってどうなんでしょう?」
そういうと令嬢たちの中心にいる銀髪の美少女が辛そうに俯いた。
彼女がどうやらメイナード侯爵令嬢らしい。
「貴女が気軽に呼び出しているジェラルド様だってショーレイヤ公爵家のご嫡男様なの。本当は平民出身の貴女たちが気軽に話せるような相手ではないってわかっていただけるかしら?」
「討伐のお役目はもう終わったのでしょう?父が後は残骸を片付けているだけって言ってましたわ。だったら、彼らに気安くするってなんだかイヤらしいわ」栗毛の令嬢が大袈裟に嘆いて見せる。
「それにね、ここにいらっしゃるビビアン様は本当はパーカー様が唯一結婚を約束していらっしゃった方なの。ビビアン様の可憐なお姿を見たら聖女様達も流石に代わりになってやろうなんて思えないと思うわ」
後ろの方から一人の華奢な令嬢が現れた。その姿はまさしく人形のように手足が細く小柄だ。
王国は平均身長が高めで肉付きも良いためその赤毛の令嬢はまさしく妖精もかくやと言ったところだ。
「まあ、私と同じような体型の方もいらっしゃるのね。ちょっと嬉しいわ」
ユイナが聖女のゆったりしたローブを腕まくりしながらビビアンに近づくと確かにユイナの方が少し小柄で細かった。
日本人の骨格はどうも彼らと比べてひと回り小さいようだ。
出てきた腕の細さに全員がグッと押し黙る。セイナは(そこにマウント取るからだよ……)と呆れた。
「と、とにかく私たちは聖女様達とお友達になって、たくさんのことを教えて差し上げたいのよ」
「そうよ!この国に二年いてもアタクシ達のことがお分かりにならないのはお気の毒ですもの」
そうよそうよ!と騒ぎ出したところでバタバタと背後から足音が聞こえた。
「おい!君たち何をしてるんだ!」
ジェラルド公爵令息が聖女が囲まれていると知らせを受けたのかもしれない。
慌てた様子で走ってきた。
それを見て数人の令嬢は頬を初めて思わず彼に見惚れている。そして数人は蒼い顔で口を引き結んでいる。
「何をしているんだと聞いているんだ」
珍しくジェラルドの表情は硬く険しい。
セイナがフフフと笑いながら令嬢達を見つめながら言う。
「私たちジェラルド様たちが素敵すぎてヤキモチ焼かれちゃったんですよ」
図星だったのか、令嬢達がキッとセイナを睨みつける。
「セイナ意地悪だわ。彼女達は私たちが不慣れだから社交界の色々を教えてくれようとわざわざきてくださったのよ?」と言いながらユイナが吹き出した。
明らかに少しだけ小馬鹿にしている様子がわかる。
ジェラルドはそれを見てフーッと荒く息を吐いた。
「君たち……どの家も名家と言われている人たちなのに今の態度はまるで悪役令嬢だぞ」
その発言に令嬢達みんながピシリと固まった。
「え……そんなつもりは」
「つもりがなくっても、王宮でこんな風に女性を取り囲んで意地の悪いことを言ったら《悪役》と言われても仕方ないだろう」
ジェラルドは眉間のしわを指で揉みほぐしながら令嬢達の後列にいる金髪の美女に向かって大きく溜息を吐いた。
「キャロライン嬢……君までいるなんて……え?メイナード嬢までいるのか?ビビ嬢も?」
そう言うと令嬢達の中でも際立って美しい三人の名前を呼んだ。
三人はオドオドすることなく無言で俯いている。
その様子を見ていたユイナがまあまあ、と手をあげた。
「いくらなんでも悪役令嬢が多すぎますわ、ジェラルド様。私たちはなんとも思っていませんから」
そう言うとセイナの方に目配せをする。
「そうですよ。たまたまバッタリあったからちょっと話していただけです」
ユイナ達はその場を収めようと平然とした態度をアピールした。
令嬢達も聖女二人が庇ってくれていることに便乗する。
「そうなんです!私たちただ聖女様をお茶に誘いたかっただけです!」
「そうなんです!偶々お会いできたのでちょっと興奮して話してしまっただけで!」
そういうとユイナがフーンと頷いた。
「そうですか。嬉しいですね。だったらお茶会私たちで開いてみようかしら?」
『え?』令嬢達が驚いた表情をする。
「前から気にはなっていたんです。気持ちの籠った(意地悪な)お手紙を頂戴したり、侍女達に伝言(嫌味)を頼まれたりされていらっしゃったようなので一度話してみたくて」
「そうですね。討伐もかなり落ち着いてきましたから次の出発前までに一度ご都合が合うのであれば、私たちもお友達が欲しいですよね」
それを聞いて侍女達は目を見開いた。
その令嬢達は聖女様達に嫉妬していらっしゃるんです!お分かりにならないのですか?王子殿下や、公爵令息様達と結婚したくて聖女様達から彼らを奪いにきた《悪役令嬢》たちですよ!正気ですか!?と声をあげたい。
だが聖女二人はニッコリと微笑み
「決まり次第お手紙差し上げますわ。では失礼します」
とローブを翻し廊下を進んで行ってしまった。
王宮で聖女達を待ち構えていた悪役令嬢(?)達は呆気に取られたままそこに立ち尽くしていた。
聖女が二人は結構仲良し




