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封神千希「俺は新人対魔剣士」  作者: アリエス
一章

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四、参-中「真ん中」

重い。想定よりも、一段強い。


腕の中で暴れるようにうねる力。押し返す間もなく、

ジンの体ごと後ろへ押し込まれていく。


その先——通りの端では、見物に来ていた若いニ人組の女性が、完全に足を止めていた。

「え……ちょっと、こっち来るんだけど!?」

「嘘、止まってない……! 兵士さん何してんの!?」


そのとき——


(そこで止めろ!それ以上いかせるな!)


ツカサの声が、ジンの意識に鋭く入る。


(い、いや、こ、この力!)


抑えるだけで限界だった。

攻撃に回す余裕などない。両腕、身体へと伝わる圧が、骨の奥まで軋ませる。


獣魔じゅうまが暴れるたび、足がずるりと後ろへ滑る。


「きゃっ——!」

二人組の一人が腰を抜かし、その場へ尻もちをつく。


「ちょっと、立って! 早く!」


もう一人が、半ば叫ぶように振り返る。


誰もが距離を取ったまま、息を呑み、目の前の暴れる黒い巨体を見ているだけだった。

兵士たちも、踏み込む隙を掴めない。


「ぐっ……!!」


ジンは踏みとどまりながら、獣魔じゅまの首元へ左腕を深く押し込み、

そのまま体を密着させるように組みついた。


暴れる頭を押さえ込みながら、獣魔じゅうまの体に沿うようにさらに踏み込む。

重心ごと強引に押しつけ、抱え込むように拘束したまま、右手の対魔剣を引き絞った。

刃先を、獣魔じゅうまの胴へ向けようとする。


(な、なんとかっ……!)


獣魔じゅうまが低く唸り、全身を激しく震わせる。

暴れる力がさらにもう一段、膨れ上がった。

組みついたジンの腕を引き剥がそうとするように、巨体が荒々しく暴れる。


黒い気が毛並みの隙間から噴き出すように立ち込め、周囲の空気を重く濁らせた。

押さえ込んでいるジンの体が、今にも弾き飛ばされそうになる。


周囲では、兵士たちが一歩引きながらも、辛うじて陣形を維持していた。

「お、おい……今なら後ろからやれるんじゃないか?」


張り詰めた声が漏れる。


「そ、そうだな……お前が行ってくれ……」

「い、いや、お前が……」


獣魔じゅうまから溢れる気に押され、誰も不用意に踏み込めない。


だが視線だけは、全員が一点、黒い巨体へ食らいつくように抑え込む、ジン達へ集中していた。


周りの市民も、息を呑んだまま距離を保ち、ざわめきだけが広がる。


少し離れた所で、ツカサは腕を組んだまま、一歩も動かない。

視線だけを、まっすぐジンに向けている。


ジンと獣魔じゅうまのすぐそばで、先ほど腰を抜かしたその一人が、まだ地面に座り込んでいた。


「む、無理……立てない……っ」


「いいから行くよ! 早く!」

もう一人が必死に腕を引き、半ば引きずるようにしてその場から離れようとしている。


ジンはなおも、獣魔じゅうまに押し込まれていた。

左腕で首元を抑え込み、体を密着させている。だが、暴れる力が強すぎる。

右手の対魔剣に力を込めようとするが、うまく入らない。


(く、くそっ、限界だ……)


感覚が薄い。


腕も、足も、もう自分のものではないようだった。

汗が顎を伝い、地面へと落ちる。


獣魔じゅうまの唸り声が、耳、体の奥まで響く。

そのとき——


(ジン!下に回り込め!)


ツカサの心念しねんが、ジンに飛び込んできた。


(し、下!?……)


ジンは、獣魔じゅうまと自分の入り込んでいる位置関係をちらりと見る。


(た、確かにいけそうか!?......)


(縦横の模様が交わる、胸の真ん中!)


(えっ、も、模様……!?)


(速攻だ)


一瞬、意味が分からない。

だが考える余裕もない。

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