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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
4章 奈落の底編
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ラプラスVSネスク その5

お待たせしました。更新します。

 黒い靄に覆われた巨体が大きな岩程の拳を振り上げた。


『警告、警告。 回避を推奨―――』


 警告音と通知が視界の端の半透明のプレートに現れる。

 嫌な気配と腐った物のような匂いで振り下ろされた拳を磁場を蹴って後退した。


『何だよあれ…………!』


 振り下ろされた拳の軌道から黒い靄が拡散する。

 大地を腐らせるそれは、かつての邪龍を彷彿とさせる。考えを察した書庫が解説を挟んでくれる。


『正確には邪龍とは異なりますが、触れた物体に変化を齎すという意味では同じ特性の霧です。』


『何か対処法は?』


『検索中…検索中………』


 ピコン ―と現れた検索結果に思わず、ネスクは顔を歪ませた。〈書庫〉は無理難題を言っている自覚はあるのだろうか?

 ズズズズ――と振動と共に黒い影が遮った。

 巨体のわりに俊敏に動く巨大な姿に変わったラプラスの赤く光る目が完全にネスクに標準固定(ターゲットロック)していた。


『コロス!!!!』


『そう簡単にやられてたまるか!』


 黒雷で霧を焼き払いながらラプラスの猛攻を防ぐ。

 避けるも、風圧と死の靄がやって来る二段構えの攻撃は、少しの油断が命取りになる。


『ツブレロッ!!』


 【威圧】による重圧で動きを止められ、左右から拳が迫る。


『まずっ!?』


 思いの外、計算されたような攻撃は我を忘れ、ただ暴れまわるだけの魔物よりもやり難い。


『【黒雷結界シュヴァルツ・グランド】!!』


 黒雷を付与した結界で攻撃をギリギリ阻むも、ギシギシと音を立てて今にも崩れそうだ。

 その間に退避した。退避と同タイミングで二方向からの拳で結界がぺしゃんこ。


『あんな物食らったさすがの俺も………』


『はい、間違いなく即死します。』


 そうこうしているうち長い何かが飛んできた。


『推奨、左へ回避。』


『いわれずとも!!』


 撓るような音。元いた場所を通り過ぎ地面へ叩きつけた。それは、正しく『触手』。


『推奨、回避してください。』


 休む間もなく次々飛んで来る触手を回避して行く。まるでタコのような触手を足元から生やした今のラプラスはクトゥルフ神話の怪物のようだ。


『コロス!!!』


『お前、言葉が退化してないか?』


 時折挟まれる元ラプラスの拳と触手攻撃は一度でもくらえば即死。手数で押されながらも何とか回避するも、攻撃出来る隙が一切ない。


(くそ、〈書庫〉何とかならないのか!?)

『案、更に【黒雷(ブラック・ボルト)】をかけ速度上昇、【黒雷迅(シュバルツバイバー)】による広範囲攻撃で触手に攻撃を与えて下さい。』

(【黒雷迅(シュバルツバイバー)】で触手をした所で、また生えて来ないか?)


 こういう触手系にありがちな無限再生能力。思わずネスクの顔が引きつった。


『おそらく、数分程度再生の妨害が可能。いかが致しますか?』


 今の所、書庫の提案以外にこの状況を打開できる気がしない。こうなれば、その案に乗るしかない。


『【黒雷(ブラック・ボルト)】解錠』


 絞っていた鍵穴をさらに緩めた。中に閉じ込めた禁断の力が溢れ出す。筋肉がぶちぶちと細胞が壊れる悲鳴と激痛が上がるが即座に青い炎が治して行く。

 破壊と再生の拮抗と黒い雷が溢れ出した。

 触手の薙ぎ払い攻撃が来る。ほんの一瞬の攻撃に集中力を高める。

 横へ薙ぎ払う触手の動きがスローモーションに移る。【黒雷(ブラック・ボルト)】で引き上げた速度で回避しながら、尾を払い小さな雷の針に変わった毛を飛ばす。

 次に、上下から迫る触手を躱す。次々に襲いかかる触手それぞれを回避し打ち込んでいく。

 合計10本。分厚い肉質の触手を断ち切るには恐らく火力が足らない。

――― なら、


『黒く輝くは蛇の如く 穿て穿て 楔を刻みし 尽く 全てを黒雷にて 焼き払え―――【黒雷迅(シュバルツバイバー)】!!!!』


 【黒雷(ブラック・ボルト)】の制限を緩めた事によって威力が増した上に完全詠唱の【黒雷迅(シュバルツバイバー)】が触手を焼き払い本体への道を作る。―――今だ。

 磁場で足場を生み出し宙を駆ける。

 焼き払った触手は〈書庫〉の予想通り再生が阻害され再生されない。

 問題が有るとすれば、あの黒い霧である。

 ここは、邪龍と相対した時のように黒い霧を相殺する。


『結界を生成。〈書庫〉!!』


『〈(セイクリッド)を付与。魔力を(ミスト)に変化させます。』


 黒い霧が結界に触れた瞬間、中に封じ込めた霧が中和をする。邪龍との戦闘で学んだコツを使い魔力の効率的な運用をする。

 結界を張ったのは霧が拡散して無駄な魔力を消費しない為だ。

 これなら近づける。


――――――Wohooooooo!!!!


 ラプラスの方向が大気を震わせた。 

 瞬間、ラプラスの巨体が掻き消えた。

 そして、結界がバリッとガラスが割れる音と、強烈な衝撃が体を襲った。


『ぐゎっ!!』


 衝撃でホームランを打つかのようにネスクは打ち上げられた。

 空中に磁場を生み出し、耐え忍ぶも、身体全体から青い炎が立ち登る。

 

『それ、その体でも出来るのな。』


 【解析】で得た情報から分かっていたが、実際に使われると、とても厄介極まりない。

 事象の改変。或いは時間の巻き戻しとも言うべきラプラスの能力である。

 ソフィアとグリモアを取り込んだ事で無限に使えるその手はまさにラプラスの最強の能力である。

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