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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2.5章 様々な思惑、動き出した運命の歯車
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昔の思い出とカレーライス

二日ぶりに更新します。

「マリ、鍋をコンロに掛けて!」


 とんとん―――と包丁をリズム良く切る音。

その音がまな板の上から響く。


「了解。って、これどうやって火を付けるの?」


 マリアが水の張った鍋をコンロの上に置いて

掛け方がわからず、困っている。


「左手のひねりを回すだけ」

「……あ、付いた。サンキュー」


 火の起こし方を伝えながら、慎重に野菜を切っていく。

 あまり料理はしないが、今日は母さんが夜勤で帰って来ないため自炊をするしかない。


 やる時はやる。それが私である。



 玉ねぎ、じゃがいも、人参



 皮を剥いた野菜をそれぞれ切る。


   チーン


 電子レンジが鳴る音。

 どうやら解凍が済んだようだ。


「……出来た。さよお肉置いておくよ~」


「サンキュー、

………ごめんね。手伝わせちゃって。」


「いいよ。私もご相伴にあやかれるからね♪

―――野菜入れとくね!」


 マリアがじゃがいもを鍋の中に投入。

手際のよさに感服する。

 彼女、弁当を自分で作っていると言っていた。普段から料理をしているのは傍で見てても分かる。

 私は、その間に解凍した牛肉をパックから取り出して一口サイズになるように千切っていく。



 三人が御線香を炊いている間に私達は、今日の夕食を作っていく。


 今日のメニューは、




――――カレーライス


 昔はよく、母さんが作ったカレーライスを

皆で一緒に食べたっけ……。


何かあれば『カレー』


 母さんの昔からの口癖。

 めんどくさがりの母さんは、

スーパーに行くことをめんどくさがる。

それが冷蔵庫から食材が不足する一歩手前で

あったとしても。



 だから。昔はよく、カレーに入れない物まで入っていた事を今も覚えている。


ちくわやこんにゃくなどの具材であったり、


ピーマンやナスなどポピュラーな具材。世間で言う『闇鍋』ならぬ『闇カレー』である。


 まずい時もあれば、美味しい時もある。


「よし、後はルーを入れて」



 ぼたぼたと市販のルーを入れる。


 お玉でかき混ぜながら、小皿に少しすくって味見。―――ピリッとした香辛料の味が舌の上で

踊り出す。


(………こんなもんか。)



 味付けは母さんの見よう見まね、

分量など測らない。いわゆる適当である。


 母の遺伝子を受け継いでいるのだと改めて思う。


「米洗ったから炊飯器に入れとくね~」

「了解」


 マリアが手伝ってくれたおかげで思いの外

夕食の準備はすぐ終わった。


 鍋に蓋をして、ご飯のスイッチを入れる。




「ナナミン!もう時間も遅いからご飯食べていってよ!って、―――どうしたの?」


 夕飯の準備が整ったから仏壇のある部屋に呼びに来たのだが、


 三人が倒れてうずくまっていた。




「ごめんね。さよちゃん、足が……」


「あああ!足、いて~!!」


「俺達、最近正座なんてしたことなかったからな~」




 足の痺れに悶絶していた。




****



――― チリーン




 おりんの鳴る音が響く。


 仏壇の前で座り込んだ三人は無言で合掌をする。お経は知らない。




 だけど、会いに来たことだけは伝えられる。




(久しぶり、大朏君……)




 ゆっくり目を開けると、




仏壇の上。


 箱に入るくらい小さくなってしまった幼馴染が目に入る。その横に生前の遺影?とおもわれる写真が添えられている。




 にっこりと笑っている小さい頃の昔の写真。




 大朏の住んでいた家は全焼した聞く。

ということは、この写真は、小夜の家に残っていた写真なのだと分かる。


 大朏が亡くなってからの一年。

 その一年間の出来事を報告する。


 孝希に告白された事、学校行事、等々。

時間はあっという間。

今年で高校も卒業となる。


(私、大学に進学するんだよ……。)


 それは、一年前から考えていた。

進学して、もっと勉強をして人の役に立つ職業。医者や国会議員みたいに大きな職業でなくても良い。


 ボランティアのような小さな事でも良い。

 困っている人を助けられる職業に。





「……さて、そろそろお邪魔しよう。」


 孝希の掛け声で瞑っていた目を再び開けて立ち上がろうとした時、


「ひぎっ!」「うっ!」「つっ!」


 全員が足全体に電流が流れたような痺れる激痛が走って堪まらず再び座り込んでしまった。


****


「……美味しい」


 カレーを一口食べた恵がそう呟く。


「本当?なら良かった。」


 作った物を美味しいと言ってくれる。

こんなに嬉しく思えるとは、今まで感じたことはなかった。


「へえ、これは旨い。

昔は卵焼きすら、黒焦げにしてたのに。

人間やればなんでも出来るもんだね~」


「ちょっと鷹野先輩!いつの話しているのですか!もう。」


 好太郎の意地悪な言い方に小夜がプンスカ腹を立てて頬を膨らませる。


「まあまあ、小夜ちゃん。

好太郎も悪気が合ってじゃないから。

でも本当に旨いよこのカレー。

………小夜ちゃんが作ったのか?」


 そんな小夜を宥めながら孝希が小夜に聞く。


「マリアも手伝ってくれたんだ♪

あ、二人には、紹介してなかったよね。

こちら、私のクラスメートで親友のマリア。」


 隣でカレーを食べていたマリアを紹介する。


「は、はじめまして。浅川 真理亜です。

サヨとは一年の時から同じクラスで親友、です。」


 緊張しているのか、マリアは三人の前では

いつもの元気な彼女、ではなく、遠慮がちな感じがする。まあ、それも仕方ないと、思う。


 顔面だけなら、目の前の男二人は、それなりに

良い顔だと私も思う。それは否定しない。


「初めまして、浅川さん。

―――私は、七草 恵。サヨちゃんからは、

聞いての通り『ナナミン』て呼ばれてるから、

できれば、気軽に『ナナミン』って呼んでほしいかな。」


 はにかんだような笑顔を恵が浮かべる。


「では、ナナミン先輩で……。

私の事は、マリで、良いです。

 サヨからもそう呼ばれていますので、

そっちの方がしっくりきます。」


 その表情で少し、緊張がほぐれたマリアが言いたい事を言う。強ばったような固い表情も少し緩んだ気がする。


「マリって結構、ナナミンと似てるよね。

学校の人気者だけど、

人前では小っちゃくなっちゃう所とか~」


「ちょ、サヨ!?」


 彼女がいつもの元気な姿を見せるのは、

私がいる時限定。

 他の人の前では、今の強張った彼女になってしまう。



 高嶺の花ともいうのであろうか。


 白百合のようにキレイなオーラを放っているように見える彼女。聖母様と呼ばれるのも

あながち間違っていないのかも知れない。


―――キレイで神聖な方。


 そんな雰囲気を纏っている。


「そろそろ俺らの番行ってもいいか?」


 あ、この二人のこと。完全に忘れてた。


 考えこんでいたため、思考外に

置いていた二人を完全に外してしまっていた。


「俺は、高原 孝希。よろしくな。

で、こっちが鷹野 好太郎」


「どうも~♪」


 隣を指した孝希先輩が好太郎先輩を軽~い

紹介をする。好太郎先輩が右をひらひらと上げて振る。………好太郎先輩はマリに近づけては、いけない気がする。


『ピッピ~♪お風呂が沸きました。』


・・・・・・・・・・・。


 カレーの前に軽く風呂場を掃除して、

水を張ったのだが、

――――なんか変なタイミングで風呂コールが掛かった。


「もう遅いし、皆泊まっていってよ。

明日は、土曜。何だしさ。」


 今の時間は、八時前。

 終電には、間に合いそうな時間だけど、

どうせなら。

 久しぶりにこうして、集まれた事もあるのだし、もっと皆とも話したいから。

恵の進路話も織り混ぜてみました。

他にも織り混ぜたい所ですが、文章量が多くなってしまうので、ここいらにしておきます。


次回、小夜の話を終わらせるつもり?です。


まだ予定なので、どうなるか分かりませんが。

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