届いた通知
更新します。
「サヨは昼どうするの?」
マリアが席に座った状態で上体だけを後ろへ向ける。なんだその体の柔らかさは…!
「一応、弁当だよ?」
「一応って何??」
鞄の中から弁当を取り出す。
まあ、見れば分かると思う。
弁当袋から長方形の一段弁当を取り出して
開けて見せる。
中には、
――白いご飯に梅干しが一つ。
そして、具材は………
「サヨって、昭和の人?」
朝の続きだろうか。
「だから現代人だって!」
「なら、どうして『日の丸弁当』なのよ!」
具材は、――なし。
梅干しに白ご飯という、
今時の女子高生にしてはシンプル過ぎる弁当内容
であった。
これには色々事情があるのだが。
一番の理由は、昨日が兄さんの命日だった。ということが大きい。
普段は、冷凍食品や昨日の残り物を一緒に持ってくるのだが。
我が家は、
―――誰かの命日の際は贅沢はせず、
質素な物をその日だけ食べる。
という謎の家訓がある。
昨日は、ご飯とスーパーで買ってきた具材であった。それも、消費期限が昨日の安売り品。
そのせいで今日は、昨日のおかずがない。
そして、冷凍食品の方も冷蔵庫からキレイさっぱりと使い切られていて、
今朝覗けば、何もなかった。
母さんは、朝の早い時間から仕事。
スーパーは早朝からは空いていない。
こんなことなら、昨日の段階で冷凍食品を何か買っておけば良かった。
そんなしょうもない理由で
日の丸弁当持参になってしまったのだ。
「ぷ。あはははは!
サヨってたま~に、抜けてる所あるよね!」
「めんどくさい事はしない。
これ、私のモットー。
予定に無いことはしたくないのっ。」
ケラケラとマリアが笑う。
そんなマリアを他所に、ぱくりと一口。
今は昼休み。
既に四限目まで終了し、ただ今食事中。
ヴヴー ヴヴー
スマホの通知音。
カバンの中に入れているスマホに
着信があったようだ。
カバンの中を手探りで探して取り出す。
電源ボタンを押して通知バーを表示する。
『LIME』に通知が届いていた。
―――『LIME』
登録した相手といつでも話をする事ができるアプリ。私もマリアやクラス用のグループを登録してある。
顔を見ずにトーク出来るため、
最近は、友達のなりすましが頻繁に起こっているというニュースをよく見かける。
私も気を付けないと……
ピコン!
また通知が来た。
それを見た時、驚きのあまりに白ご飯を噛んでいた口が硬直してしまった。
「ひゃっ!!?」
頬に、――冷たい衝撃が走った。
「おっ、今の反応いただき!
かわいい反応をありがとう♪」
「もう!マ〜リ〜!!!」
振り返るとマリアが私の頬に冷たい飲み物をくっつけていた。
イタズラ好きな表情を浮かべるマリア。
そんなマリアの脇腹をポカポカと軽く叩く。
「あはは、ごめんって。
―――はい、例のブツだよ〜♪これで許して♪」
「‥‥わかった。」
素直に差し出された『苺ミルク』を受け取り、
ストローを刺して、チュ――――ッと。
口の中いっぱいに苺ミルクの味が広がる。
「ありがとう♪サヨだーいすき!!」
「うぐっ!?ゲホッ、ゲホッ!」
急に抱きつかれて苺ミルクが器官に入って反射的にむせた。
マリアは少々、スキンシップが激しい時がある。
「だいじょうぶ?」
………むせた原因が心配そうな顔を向けてこないでほしい。
「だ、ダイジョブ」
息しづらいが、少しすれば戻る筈。
「サヨ。今日、サヨの家行ってもいい?」
購買で買ってきたパンを頬張りながらマリアが言う。
――喋るか、食べるかどっちかにした方が良い。
行儀が悪い。
「今日は、ムリ。兄さんの昔の友達が来るから……」
「へぇ、サヨ。お兄さんが居たんだ。」
「うん、『いた』。けど、‥‥‥一年前に。」
「あ、なんか……ごめん」
何かを察したマリアが謝る。
マリアは普段はスキンシップが多かったり、イタズラ好きな所が多く見受けられるが、
こういう。何かを察する事には長けている。
―――他人を思いやる事に長けている
とも、言うのだろうか。
そこが彼女の魅力でもあると、近くで見ていて思うことがよくある。
「別にいいよ。気にしてないから。そういうわけだから、また今度にでも…ね。」
「………」
黙々と昼ご飯を食べていく。
もうすぐチャイムが鳴る。
「……ごちそうさま。」
両手を合わせたあと、片付けて行く。
箸をケースに戻してから、空になった弁当箱を閉じる。
――梅干しだけ、では少々味に飽きが生じるため、少量だが塩もまぶしておいて正解。
ほどよく塩辛さが加わったご飯は冷めても塩の旨みで美味しかった。
「……決めた」
それまで黙っていたマリアが急に声を出す。
「何が?」
弁当箱を元の袋に戻した所で手が止まった。
「私もサヨの家にやっぱり行く!絶対に!」
「……はい?」
思わず呆けた回答をしてしまった。
急にどうしたというのであろうか。
「サヨその来る人、紹介してよ!
サヨの家に来るって事は
――それなりに親しい間柄なんでしょ?」
修正の合間を縫って書いています。
不定期になってしまいますが、今の所。
83部までは修正済みとなります。
よければ、のぞいてみて下さい。
前よりは、読みやすくなったと思いますので。