レッツ、ハンティング!!
更新します。
「さて、皆揃ったのう。」
午前中の仕事を終え、
ルリと昼飯を食べた直後に。
―――ルリと共にミレドに連行された。
「ミレド様。一体これから何をするのですか?」
クーシェが首を傾げて何をするするのか、と問う。ここには全員が集められている。
ポーア、クーシェ、俺、ミレド。
カレンさんにルリ、そして他の子達、五人。
総勢十一名の大所帯。
「うむ、これから皆で遊ぼうかと思うての!」
遊ぶ?いったい何して?
「冬籠りに重要な事が何か、分かるものおるかのう?」
「住家、暖房設備では‥‥?」
「ポーアの言う通りじゃ。じゃが、もっとも重要な物が‥‥‥‥」
その先を言うのを溜める。ドラムの音が聞こえそうである。それほど、重要な物なのだろう。
「―――『食料』じゃ。」
うん、確かに重要だね。
食料がなければ生きていけない。リスや熊のような山に住む動物も秋に実った食料をため込む習性を持っている。
―――けど、全員を集めてする事なのだろうか。
そんな疑問が頭の中をよぎる。
「失礼ですが、ミレド様。食料の調達に全員で取り掛かるのでしょうか?」
俺の考えていた事をそのままカレンさんが言ってくれた。
「たまにはその子達も外の自然の中で遊ばんと、な。
自然に触れる事がその子達の成長にも繋がろう。」
「なるほど。ミレド様の深い思慮に感服いたしました。」
カレンが胸に左手を置く。それは、敬意の証。軍の人間が自分より上の者にする動作である。
「さて、役割分担じゃ。妾、クーシェ、カレンは、主に『狩り』じゃ。これは修行も兼ねておるからのう。
それから、ポーアとネスクは、その子らを連れて山菜などの採取が主じゃ。ネスクは魔法の袋を持っておるし、ポーアは食せる植物に詳しいからのう。」
「はい、わかりました!
張り切って行きます!!」
いつになくクーシェが燃えている。本能が狩猟を欲しているのだろうか。
「ポーア様。この子達をよろしくお願いします。」
「ええ、わかってます。この子達の身の安全はおまかせ下さい。」
まるでカレンさん。
―――子を心配する母のようである。
あの子達の世話も主にカレンさんがしていると言っていた。子どもが好きなんだろうな。
さて、俺も何があるか分からないし、いちおう警戒はしておこう。
「日が暮れるまでには戻ってくるようにのう。では、解散!!」
ミレドとクーシェ、それにカレンさんが森の中へ駆け出していった。方角からして西の森。
西は東の森と違って穏やかな森が広がる。危険性も最大がC級並み。ベテランハンターであれば、余裕の域である。
魔法の袋からハニワさん『試作品1号』を出しておく。
何かあれば、遠隔自動操縦でハニワさんが勝手に起動するだろう。
「‥‥‥‥ネスク」
服の端を引かれて振り返ると、ルリがいた。
「‥‥‥‥いこ。」
「そうだな。」
ルリの言いたかった事がなんとなく、わかった。ポーア達が先に西の森の入口へ向かう姿が見えた。カレンさん同様、団子状態のポーア。
――近接戦闘になれば、
ポーアは動けないだろうな。いざというときは神器を起動すると思うが。
気を引き締めて行こう。
***
「ネスク。‥‥‥‥キノコ」
「おう。‥‥あ、それは食べたらダメな奴。」
「そう、なの?」
ルリが持ってきた真っ白なキノコ。食べたら腹を下すそのキノコはよく食用キノコの一種と見分けが付かずに間違えられる。食べて下痢が止まらなくなる者が後をたたないと書いていたな。
「見分け方があるんだ。ほら、傘の下。ここに丸い円があればダメな奴。で、こっちの。」
ネスクが取った同じような真っ白なキノコ。
そのキノコの裏には円がいくつも描かれている。
「円が何個も描いてる奴が食べれる覚えとけよ。」
「ネスク‥‥‥‥物知り、だね。」
「ポーアには負けるがな。」
ポーアの植物に関する知識は俺なんかと比べようがない。俺が見ても同じキノコにしか見えないキノコもポーアがみれば食用と毒の区別してしまう程博識だ。
「それでも、凄い‥‥と思う。」
「そ、あんがと。」
ひととおりキノコを取り終わって場所を移動する。俺の後をルリも付いてくる。
なんか、ルリに凄いなつかれた気がする。
顔合わせして初日の筈なのだが。
「ネス様!!」
ポーアに呼ばれた。
ポーアの両手には先ほど俺が取ったキノコなど小さくみえるくらい大量のキノコや山菜、更には何かの木の実を抱えて持っていた。
「凄い量だな。」
「はい!聖域の森はやはり、素晴らしいです!ドルイドの森にも生えている山菜でもここではその倍に成長してます。あまり取り過ぎるのは自然に生きる獣達に悪いので一部だけを少し貰っているのですが、やはり素晴らしいです。」
それで一部なのか……。
いつになく興奮したポーア。山菜採取で彼女のスイッチが入ったようだ。
魔法の袋の口を広げると吸い込まれるようにポーアが持ってた食料が収納された。
「で、あの子達の様子は?」
団子状態では無くなったポーアの様子から少しは進歩している様子が伺えるがやはり直接接したポーアに聞いた方が良い。
「ミレド様の指示は効果てきめんなようです。部屋では暗い表情しか、しなかったあの子達なのですが、ほら‥‥。」
ポーアの視線の先に少女達がいる。
興味深いのか色んな花や木の実などを観察したり木の枝でつついたりしている。
少女達の目からは怯えの色は伺えない。
好奇心で目がキラキラと輝いている。
「一歩前進、だな。」
「‥‥はい。」
子どもは好奇心の塊。元気なことが子どもの取り柄といっても過言ではない。
そんな子ども達が暗い表情をしている姿は見たくない。ミレドの考えたこのイベントは、少女達の良い刺激になっているようだ。
「ポーアも、大丈夫か?あれから結構経ってはいるが。」
ポーアが追放されてまだ数日。彼女の心にしこりを残しているのではなかろうかと思いたまに心配になってしまう。
この間のミレドの件もある。
「わたくしは、大丈夫ですよ。たまに夢に出てきますが、今わたくしには―――皆様がいらっしゃいますから。」
「そっか。」
枯れた木の葉が地面に落ちてゆく。
ひらひら、ひらひら。
緑のカーテンの時期も当に過ぎ、実りを宿す時期も終わりを告げようとしている。
肌寒さが一段と増し、段々と秋空から冬空へと変わりつつある。
「‥‥ネスク、取れた。」
「ん?ああ、今あけ、る‥‥」
ルリの掴むソレを見た時戦慄した。
ぶよぶよとした生き物。まるで手の平サイズのナメクジのようである。
「ネスク‥‥‥はい。」
ルリがソレを渡そうとしてくる。
自身の顔から熱が引いていくのがわかる。
「ルリよ、‥‥今すぐ元の場所に戻してきなさい。」
「‥‥‥‥なん、で?」
純粋な瞳で不思議そうにルリが首を傾げる。
普通にしていれば、可愛らしいのだが手に持つソレがその可愛さを台無しにする。
「それは食べれません。食べられない物は森に還しましょう。」
「‥‥‥‥分かった。」
ルリがそれを戻すために茂みの中へと戻って行った。
「驚きました。ネス様もう、ルリちゃんと仲良くなっていらしたのですね。」
驚いた様子のポーア。
そこまでの事なのだろか。確かに一日で仲良くなるのは尋常じゃ無い速さなのだろうが。
「んー、なんかなつかれた。」
「‥‥ルリちゃんは猫ではありませんよ?
まさか餌付けしたのですか?」
「ポーア、自分で猫じゃないって言って、餌付けって‥‥。まあいい、別に普通に話しただけ。それ以外は変わったことはしていない。」
朝の抱え上げ。あれはノーカウント。
ワタシ、ナニモシテナイ。
朝の事が軽くトラウマになっている。
ちょっとした事が大惨事に繋がった。そら思い出したくも無くなる。
「ルリちゃん、あの子達の中で一番重傷だったのですが‥‥。ネス様はやはり凄い方ですね。」
ポーアの呟きは今のネスクには聞こえない。
朝の事を考えたせいで、思考が遮断しているからだ。
ルリとネスク。
二人の会話は書いていて楽しいです。
早く、他の子達も書きたいですが、まだ時間が必要そうです。