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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2.5章 様々な思惑、動き出した運命の歯車
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他種族の少女達

二日ぶりの更新です。

「‥‥以上がネスク殿に起きた"悲劇"です。」

「はははははっ!!そ、それはおぬしが悪いわ!くくくくっ」


 ―――事の顛末。

 どうしてネスクがこんな姿になったのかを淡々とカレンが語った。


 全てを語り終えた頃、ミレドの笑いの壁が崩落を迎えた。ミレドがテーブルを叩く度に振動で揺れる。


「ネスク様大丈夫ですか?」

『‥‥‥‥いたい。』


  切実に思う。

 そして、こうも思う。


――以後、ポーアを怒らせるのはよそう。と、


「【治療ヒール】」


  全身に緑の光が灯る。

 赤くくっきりとした跡が元の肌へ治っていく。


「これで。大丈夫だと思いますが、どうですか?」


  体を少し動かす。

‥‥‥‥うん、大丈夫のようだ。

 最後に声も出るか確認する。


「あー、あー。‥‥うん、元通りだ。

 ありがとクー。」

「いえいえ。大したことありません。」


  初めて会った数ヶ月前よりクーシェの腕が上がったように思う。それは、あの内乱に関わった事で彼女の中の成長を促したのであろうな。

  皮肉なことに。


「いいですか、ネス様!以後、女性への接し方には気をつけて下さいね!ネス様も年頃の紳士なのですから!」


 不機嫌で喋らなかったポーアの声に思わず体がビクついた。


「ハイ、スイマセンデシタ。コンゴハキヲツケマス。」

  ネスクは死んだ魚のような目をして上がり下がりのない声で言う。

  よっぽど、ポーアの説教は堪えたのだ。

 まず、一階へ引きずられ連行された。

 その際階段の角など家のあちこちを殴打。

  一階に下りると、正座にさせられ、そのままキツく蔓羽衣で固定された。そして、正座の姿勢で延々とポーアの説教を聞かされる。

  鬼嫁ならぬ鬼乙女。


  赤い顔の鬼も真っ青になりそうな所業だ。


  「理解しておいででしたら、わたくしはこれ以上何も言いません。その、わたくしもやり過ぎました。ごめんなさい。」

「俺もちょっと気が回ってなかった。俺のほうこそ、ごめん。次からは気を付ける……。」


 ポーアと二人してお互いに頭を下げる。


「で、ではご飯にしましょう!私、お腹がペコペコです!ミレド様の訓練すると、とてもエネルギーを消費してしまいます!!」

「おお!そうじゃの。おぬしらはまだ若い。食える時に食え。腹が減ってはなんとやらじゃ!」


 そんな二人の様子を見兼ねてクーシェが話題を切り替えた。やはりミレドの訓練は身体が強いクーシェでも相当な物のようだ。


「ふふふ!何だかミレド様。村にいた頃に世話して下さった、おばあさんみたいですよ。」

「誰がババアじゃ!!妾はこれでもピチピチじゃ!!」


 ババアと言われた事にプンスカ怒りながら()ねた様子。そんな二人の会話で謝罪の場が一気に(なご)む。


「ふふふっ。」

「ははは。」


 思わずポーアと顔を見合ったあと笑いがこぼれた。さて、朝食の時間だ。


「あ、その前に……。クーシェ様、あの子達を連れてきていただけますか?」


 ポーアが朝食の前にクーシェに切り出した。

「そうですね。あの子達にネスク様を紹介しておかなければいけないですもんね。

 少々席を外します。」


 ―――そういえば、まだ連れてきた子達の事は知らないな。

 複数人を連れて来たと聞かされてはいるが、実際に合うのは避けていた事もあり知らない。


「いえ、ここは私が参りましょう。クーシェ殿はそのまま座っていてください。」

「あ、はい。ありがとうございます。あの子達をお願いします。」


 皿を運んでいたカレンがすたすたと二階へと上がって行った。

―――本当に、カレンさんは有能である。


 料理は卒なくこなすし、家事は粗方(あらかた)出来る。その上、見立て通り剣の腕もかなりの物。

 こんな有能な人をこちらに寄越して本当に良かったのだろうか。



「大丈夫ですよ。ここには誰もあなた達をいじめる人はいませんから。だから、そう。ゆっくりで良いですよ……。」


 カレンの優しい声音で語り掛けながら階段から下りてくる。

  その彼女の周りには子どもが六人しがみついていた。移動しにくいだろうに―――。

  カレンは彼女達を邪険にせず、彼女達の移動速度に合わせて、ゆっくり、ゆっくりと階段を一段ずつ下りてくる。


―――ドルイドの子、獣人族の子。

 種族名は分からないが、

 背中に翼を生やした子、頭に一本の角を生やした子、魚のヒレのようなひらひらした耳を持つ子。そして、今朝のエルフ族の子。

 確か『ルリ』と言ってたっけ。


 まるで冬にする押し蔵まんじゅうのようにカレンさんにしがみついて離れない。


「だいじょうぶですよ。だいじょうぶ。」


 まるでみんなの母親のように優しく温かみを与えるように、カレンがそう呟く。


 どの子もルリと同じくらい年端もいかない。

 ナザラという男の趣味がよく分かった。

 

―――間違いなくロリコン野郎だ。


 こんな子達を奴隷としていたとポーアから聞いた。そして、拷問をしていたとも。


(まだ生きているのなら、全身の(魔力)回路を根こそぎ引きちぎってから魔物の棲む森にぶち込んでやる。)


「ネスクー、落ち着け。よく分からぬが魔力が漏れ出ておるぞ。あと、そのどす黒い物を引っ込めよ。」


 おっと、いけない。いけない。


 あの男は『種族会議』に懸けられたあと、『重労働』の犯罪奴隷に落とされたと聞く。彼女達の苦しみを嫌と思うくらい今頃堪能しているだろう。


「それでは、私から紹介しますね。」

「ああクー頼む。」

「はい!ネスク様も分かる通り。

 ポーア様と同じドルイド族の『フィアール』さん、先ほどネスク様がケガを治したエルフ族の『ルリ』さん。」


 ルリがこちらに気づいてなぜかジーと見て来た。先ほどの事を考えているのだろうか。

 しばらく、こちらを見たあと再びカレンの体に体をうずめた。

 さっきのは一体何だったのだろうか。


「えーと、ここからはネスク様がご存知ないかと思います。黒い翼を持った子が≪(カラス)人≫の『ネラ』さん。

  茶色の(けもの)耳を持った子が≪キツネ人族≫の『マロン』さん。

 角を持った子が≪一角馬(ユニコーン)族≫の『フルール』さん。

  そして、ヒレを持った子が≪魚人(マーメイド)族≫の『パルメルス』さんです。」


  ≪カラス人族≫に≪ユニコーン族≫そして、≪マーメイド族≫に≪キツネ人族≫。


  一部の名称は、前世でも聞き覚えがある。


―――だが、それはゲームに登場する魔物や聖獣などの伝説としてである。決して、『ヒト』としてではない。

  座っていた椅子から立ち上がりカレンとその子達へと近付いていく。

  膝を曲げて彼女達とは同じ目線にする。子どもには上からではなく、下からか同じ目線の方が良い。

 ―――上からでは、大きくて怖い人と印象づけてしまうため、この場合は最も不適正。


「みんな、はじめまして。

 おれは『ネスク』。これからよろしく…。」


  怯えさせないようになるべく優しく。けれど、はっきりと聞こえるように言う。

  彼女達の視線が自身へと注がれた。


 ―――やはり、どの子も。怯えたような目の色をしている。


  朝のアレは、悪印象(マイナス)に繋がってしまったようだ。これは仲良くなるのに。

 相当な時間が掛かりそうだ。


  「さて、お互い紹介をし終えたのじゃ。飯にするぞ。そら、ネスク!机を並べるのじゃから手伝え。」


  屈んだ視線から首根っこを掴んで引きずられて行く。まるで子猫が親猫に運ばれていくようである。

  しがみついた子どもがネスクの引きずられる様子を怯えた目で見つめる。そんな中、ルリのみが別の眼差しで見つめていた。

他種族の六人。(一人は前回でてきていますね。)その五人の名前を考えるのに苦戦。

あれこれとウェブサイトを覗いて女の子らしい名前を考えました。大変な作業でした。(汗)


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