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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2.5章 様々な思惑、動き出した運命の歯車
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試作品故、改良余地アリ

一日空きました。

更新します。

 

  その日の深夜、


 ―――ウォーン! ウォーン!


  眠りに就いていたら、

 ハニワさんに取り付けた緊急音が鳴り出して、跳ね起きた。

 どうやら、魔物が結界を越えてこちらに近づいているようだ。


「【長距離探知(ロング・サーチ)】」


  頭の中に、

 自分の位置を中心にした魔力の波が円上に広がっていく。前世でいう『船乗りが使うレーダー』のような感じである。

  遠くの方で動き回る赤い点(魔物)が多数。

 その中の一つ。他とは比べ物にならない大きな点が一つだけ結界などお構い無しに突き進んで来ている。どうやら、ハニワさんのレーダーはこれをキャッチしたようだ。


「ネスク!」


  バタンと扉が大きく音を立てた後開かれたと思うとミレドが入ってきた。

  神妙な表情から、ミレドも気付いたようだ。


「魔物が一体か、それも<S>だな。この大きさ。」


  人の間で魔物の危険度は、F~SSと表現される。

  <F>はスライムのような危険度がそれほど無い魔物である。傷を負っても軽傷か、打撲といった傷程度。

 そして、<S>は上から<SS>に次ぐ最も危険な類いの魔物。人間の国ではその魔物達は国の討伐指定の魔物とされ、場合によっては国の《軍》が動く程の危険性を兼ね備えている。


「‥‥こっちに一直線じゃ。コイツ、相当の強さを持っておるようじゃ。」


  ミレドの結界は、生半可な魔物では太刀打ちできない強固さを持っている。この家に近づけば近づく程結界の強さがガチガチになる。


「丁度良い機会だ。いっちょ、ハニワさんの性能を試してみよう。」


  起き上がって寝間着を脱いで着替え始める。


「お、おぬし~!!」


 ‥‥あ、ミレドがいるの忘れてた。


 ****


  長袖の生地が伸び縮みする服に着替えて魔物がやって来る方へ向かいながら体を解す。


「妾一人でも良いのじゃが‥‥」

「もしもの事がある。まずはハニワさんの魔法を一発先に食らわせよう。」


  ミレドもいつでも戦闘できるように傍にいるようだ。そして、俺達の前にハニワさん。

  茶色の表面。そして、相変わらずの顔である。


「一応クーとポーア、それからカレンさんは家に結界を頼む。」

「承知しました。」

「分かりました、ネスク様!」

「ネス様もお怪我だけは‥‥!」



  背後の三人に声を掛けてから左手を挙げる。


「‥‥‥‥来るぞ。」


「ハニワさん、『魔力充填(マナ・チャージ)』」


  キィーンという甲高い音と同時に足元のハニワさんに高エネルギーの魔力が集まっていく。


  ざわざわと木が揺れて、木葉が舞う。


  辺りが静まり帰った。


 ドドドドドドドドドド


  対峙する向こうから得体の知れない音。そして、木が薙ぎ倒されて行く様子が此処からでも見てる。


 ‥‥‥‥‥‥‥‥来る。


  人の何倍もある影が猛スピードで突っ込んで来る。


「『ベヒーモス』じゃ!!」


  書庫で読んだ何かの書物にそんな名前が確か書かれていたな‥‥。


「撃て!!!」


  ハニワさんの砲撃が放たれる。

 高熱のエネルギー体がサイのような見た目の

『ベヒーモス』に直撃ーー。


 だが、


 直撃するも、

 その巨体は止まる事無く突っ込んで来る。


 ――――マズイ。


  このままの勢いで突っ込めば家に激突する。

 二人に結界を張って貰っているが、さすがにコイツ相手では紙に等しい。

 ―――何せ、ミレドの結界をもろともしない相手のだ。


  そして、家の中にはあの子達がいる。


「ハニワさん、『防御体勢』」


  掛け声でハニワさんの空洞の目から()い光が漏れ出る。ハニワさんの体が大きく広がり、土器の姿ではなく、壁のような分厚い土壁の姿に変わる。


  この姿になったハニワは先程より何倍も硬い。

 元々、攻撃へと回していた魔力を防御へ極振りした『防御体勢(シールド・フォーム)』は固さが何倍も強くなる。代わりに攻撃の一切が出来なくなるが、このような時には都合が良い。


  ドンッ!


 ベヒーモスの巨体が壁になったハニワさんに衝突した後、弾かれた。ハニワの表面も大きく凹むが直ぐに直るため実質無傷。


  ぶつかった衝撃で地面が揺れた。


「ハニワさん『攻撃体勢(アタック・フォーム)』」


  ()い光が壁となったハニワの目から漏れ出た後、次は先程とは反対に縮んでいく。

  そして、元の『攻撃体勢』である埴輪の姿へと戻った。


「ハニワさん『光線(マティ・アクテイナ)』」


  ハニワさんの目が光る。


  先程のハニワさんの砲撃とは打って変わった光線が目から放たれた。充填(チャージ)時間も短い。

  一発目の魔力砲とは違い極密にエネルギーを集中させた光線はベヒーモスの硬い皮膚に穴を空けた。


 ―――ベヒーモスの皮膚はどんなをも刃を通さない。防刃・防弾に長けたその皮膚。


  そして、巨体から繰り出されるタックルは凄まじい。トラックに突撃されるされるような物だ。 ベヒーモスの獰猛で、手に追えないその攻撃。

 ‥‥‥‥これが、<S>までベヒーモスの危険性がはね上がった理由だろう。


  ベヒーモスの巨体が地面に沈む。


  痙攣を起こした後、動かなくなった。


「終わったの、か?」

「‥‥ああ、危なかった。」


 握っていた拳の中は手汗でぐっしょり。

 最初の砲撃が通用しなかった時は‥‥

 正直、冷や汗モノであった。

  試作品だけあってまだまだ改良の余地がありそうだ。


「‥‥ベヒーモスをああも容易く‥‥。

 人の軍司令官がおれば喉から手が出そうな物を作ったのう。」

「改良余地はあるな。」

「おぬし、このハニワさんとやら、まだ強化するつもりか?」

「とことんまでするさ。何せ前回の事もあるからな。」


  前回、それは数ヶ月前の盗賊の奇襲の事だ。無事だったとはいえ一度攻められたのだ。

  このまま放って置くわけにもいかない。自らの身の安全の為なのだから。ハニワさん(警備)は必要だろう。今回のベヒーモスのような魔物が他にもいる可能性も捨てられない。


「‥‥はあ、おぬしがそこまで考えておるのなら口出しはせぬが‥‥‥‥良かろう、妾も手伝おう。」

「ミレドも?珍しいな、お前が手伝うなんて……。」

「先程の感じじゃと、恐らく魔力伝達に問題があるのじゃろう。魔力量の割に総合的攻撃力が釣り合っておらぬ。どこかで漏れておるか、はたまた何かムダな部分があるかじゃのう。」


  なるほどな。流石、ミレド。

  魔法に関する知識の深さは俺なんかより深い。


「おぬし、まだ魔法は使えぬのじゃろ?

 ならば序でじゃ、全体を見直そう。」


  コトン コトン


  ハニワさんが寄って来る。


 コトン コテン


  ハニワさんが転けた。

 そして、じたばたしている。一人では起き上がれないようだ。

 ‥‥その部分も見直した方がよさそうだ。


  今回のベヒーモス戦で隠れていた問題点が浮き彫りになっていく。明日からまたハニワさんの事で忙しくなりそうだ。

可愛らしいフォルムのハニワさん。

その見た目とは裏腹に強すぎる力。だけど、まだ未完成。

完成した際の強さは一体、いか程に‥‥。(苦笑)


さて、次回の基本題目は‥‥‥‥


『ネスクと連れてきた子達』

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