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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2.5章 様々な思惑、動き出した運命の歯車
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最強警備員、誕生

一日空きましたが更新します。

お知らせ)序章、一章の初めの方を少し見直しています。基本の流れは同じですが文章体、誤字等の確認をしています。


 

「これで‥‥‥‥よし!」


       カチャリ。


  最後の部品が窪みへ綺麗に填まる。

 大きすぎず、小さすぎない丁度良かった穴の大きさのようだ。


「ネスク様!いらっしゃいますか?」

「ネス様!」

「ネスク!おらぬのか?」


 ドアの向こうから皆の声がする。

 ―― 丁度良い時間のようだ。

  今出来た()()を掴んで立ち上がる。


 ****


「終わったか?」

「うむ、終わったのじゃ!それより、何じゃそれ。」

「人形、ですか?」

「愛くるしいですね!」


  クーシェ、ミレド、ポーア。皆の視線が手元のそれに注がれる。まあ、当たり前か。

  手元のコレはこの世界には恐らくない筈だ。

 これは前の世界にあった物をモチーフにして作った物なのだから。


「これからはコイツが聖域(ここ)の警備をする。

『ハニワ・試作1号』だ。」


  手に持つソレを地面に置く。


  空洞の丸い口と目。鼻と耳は無い。

 ツルッとした頭に(頭と)判別出来ない胴体が繋がっている。そして、『胴体』とおぼしき部分に紫の魔結晶が埋め込まれている。

  足はなく、地面に置けるように平らにしてある。そして、指の無い体とは不釣り合いな小さな腕が上下に上げ下げしたポーズ。


 ―――『ハニワ』だ。


  前世の大昔。人が古墳と呼ばれる王様のデカイ墓を作っていた時、古墳時代だ。土で一から形作り、素焼きにして焼かれた物。


  それをモチーフにして再現した物が今、此処にある。


「あのー、こちらが警備?ですか?」

「可愛らしいのですが、頼り無いですね。」

「確かにのう‥‥」


  三人がじっくりとハニワさんを見つめる。

 三人の意見には同意。しかし、

 このハニワさん。実は只のハニワさんではない。


「ちょっと失敬……。」


  少し前を失礼して、最後の仕上げだ。埋め込まれた魔結晶(ラクリマ)に魔力を注ぐ。魔結晶が紫に淡く光る。


「ミレド、これ殴ってみてくれないか?」

「‥‥良いのか?せっかく作ったのじゃろう?」

「まあ、やってみれば分かる。」

「おぬしが良いなら‥‥。」


  ミレドが拳を握って魔力を込める。

 そして、


「はっ!!」


  思いっきり拳をハニワさんにぶつける。

 ハニワは跡形も無く消し飛んだ。

 まあ、当たり前だ。


「ネスク、本当にこれで良かったのか?」

「ネス様?」

「もっと見ていたかった、です‥‥。」


  肩を落として落ち込むクーシェ。そして、不思議そうに首を傾げるポーアとミレド。


「ほら、見てみろ‥‥」


「「「えっ?」」」


  三人が同じように驚くそれもその筈だ。

 先程塵も残さず破壊されたハニワさんが

 何も無かったようにそこにいる。


 そして―――


 ピクッと手が少し動いたかと思うと、


 コトン コトン


 地面を跳ねて動き始めた。


「「「えええー!!!」」」


  小さな腕を横に伸ばしていきなり体をほぐし始めた。まるで人間のように‥‥。


「うん、うん。成功だな!」


 ―――計画通りである。

 あとはコイツの攻撃が上手く作動してくれれば、このまま使える。


「ネスク!どういう事か説明せい!!」

「あわわ、どうなっているのですか?!」


  詰め寄るミレドに口に手を当ててあたふたするクーシェ。驚き過ぎて言葉が出ない様子のポーア。


「まあまあ、落ち着け。とりあえず戻ろう。

 いざ、我が家へ‥‥!」


  皆を落ち着かせながら、ミレド達の方の家へと向かう。

 これからの生活拠点はまた元のように、

 ミレド達の方の家になる。


  日ももうすぐ暮れる。


 皆が此処にいるのも、

 ―――俺を呼びに来たためである。


  あの『約束』を交わした日から二日後、

 元の家へ戻る準備とこれからの警備の為に東の小屋へと一時戻った。



 それからは、

 この通称"ハニワさん"を急ピッチで仕上げた。もちろん、まだ試作段階だ。

  数日前、皆で書庫を訪れた際も

 ハニワさんを作って警備をさせてみた。

  警備自体は上手くいったが、動きがぎこちない感じがした為。材質を木彫りから土器へと切り替えた。

  ハニワさんの仕組みは『ゴーレム』と酷似している。

 ―――『ゴーレム』―――

  (コア)が岩、鉱石、泥といった物を吸収して動く魔物。ゲームなどに登場する"動く石像"といわれる物である。

  核<コア>が無事であれば何度も甦るその魔物。

 それを参考にした物がこのハニワさんだ。


  魔結晶(ラクリマ)を《記憶媒体》にして形を維持しつつ、魔結晶(ラクリマ)に宿る魔力を利用して動かす。

  破壊されても元に戻る。その形が細かいくらい粉々になっても‥‥。

 ―――完全破壊されても復活可能。これが敵であればチートに近い物を作り出してしまった。

  しかし、唯一の弱点である"魔力"は一定の間隔で補充する必要がある。


 ****


「‥‥という訳だ。」


  形をハニワにした理由。それは簡単だ。

 作りやすくて造形しやすい物。特に泥で‥‥。

  泥で思い浮かべるものは『土器』。そこで思い浮かんだのが授業で習った『ハニワ』。

 という連鎖想像である。


「‥‥‥はあ、まーた。妙な物を作りおったわ‥‥。」

「完全復活が可能‥‥そのハニワさん?

 ‥‥最強の警備兵ですね」

「凄いです!ハニワさん!!」


  歩きながら、ハニワさんの説明を全部終えた後の三人の感想で作って良かったと思う。

  呆れつつも理解してくれたミレド。鋭い目付きをしたかと思うと褒めてくれるポーア。無邪気に喜んでくれるクーシェ。


  後ろからハニワさんが動くコツンコツンという音がする。付いてきているようだ。


「お帰りなさいませ、皆様」


  森が拓けて一人の女性が我が家を前に待っていた。―――カレンさんだ。

  今は甲冑を着ておらず私服とおもわれる姿である。ドルイド独特の民族衣装。

  茶色をベースにしたフリルのあるドレスのような服である。髪はポニーテールのままで腰には一応剣を帯刀している。

  甲冑を外したのはポーアに言われたからなのだろうな。ここでは戦闘は滅多に起きない筈だ。

 となれば、甲冑を着る理由もなくなる。


「‥‥後の事は家で話そう、ネスク。

 ‥‥‥おかえり。」

「「おかえりなさい!!」」


  恥ずかしそうにそっぽを向いて言うミレド。

 そして、ポーアとクーシェが後に続く。


 ――ああ、おかえりと言ってもらえる事が

 こんなに嬉しいとは……。


「ただいま。」


  暗闇に染まる前に家に入る。

 ネスク、ミレド、ポーア、クーシェ。四人を見つめる小さな警備員がいた。


 そして、コトン コトン という音をしながら、地面を跳ねて付いていく。自身を生み出した者に指示を仰ぐ為に―――。

ハニワを警備員として登場されば面白そうと思い書いてみました。

次回、ハニワさんの新価が発揮!!

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