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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2.5章 様々な思惑、動き出した運命の歯車
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ディルとグラス

時系列的には前回の話と同時刻くらいですね。

その後の彼等(ディルとグラス)の話はしていなかったのでここいらでそろそろ入れておこうかと思います。

 

  ガン! ガン! ガン!ガン!


  石床を乱暴に歩きながら足早に急ぐ。


(あの傍観野郎どもがっ!!)


  いつもの薄着の服ではなく、見事な甲冑に身を包んだグラスが廊下の右手に設置された部屋を蹴破って中へと入る。


  そこには正装を着たポーアの兄、ディルが書類の山に囲まれた机の上で黙々と事後処理をしていた。


  「気が立っておるのか?グラスよ。」


  グラスを見ることなく、机と対峙したままディルはグラスと言い当てる。

  この二人は、歩き方だけで相手がお互いに分かり合える程それなりに長い付き合いをしている。


  机の前まで寄ってきたグラスが机に向かって両手を打ち付けた。

  振動で書類が宙に舞い、重ねられていた書類の山が崩れ落ちた。


「気が立つも無いでしょう!!

 "あの審判"には納得出来かねます!!」


  怒鳴り気味にグラスが訴えた。

 ディルが書類に走らせていたペンを止めグラスと向き合う。

「‥‥‥‥あの、とは種族会議の裁定か?」

「そうです!!それ以外無いでしょう!」


  一週間前に行われた種族会議、

 その最終査定は以下のようになった。


 一、内乱者、ナザラ・ツェリア・ペルメス以下、今回の内乱に準ずる者。彼らの権利、立場、財産。全てを国より没収、『政治犯罪者』とする。

 人権は犯罪奴隷とし、その一生に重労働を課す。


 二、ナザラ・ツェリア・ペルメスの血筋の者。

 その者達の政治上の権威を全て剥奪、外交取引は凍結とする。


 三、ペルメス王、ディル・ツェリア・ペルメスはその王座を国へ返還とする。その妹、ポーア・ツェリア・ペルメスは『永久国外追放』とする。


  このような最終査定であった。

 そして、この査定の結果、ディルはここに詰め込まれているのだ。ここは『種族会議』を行うために設置された建物の中である。

  ドルイドの管理地であるケシドより、西の森。その先はエルフが管理する森が広がる。そして、その更に西には森が拓け鉱山の山が連なっている。そこからはドワーフの管理する地。


  その昔、ドワーフとエルフが大喧嘩した。

 種族を挙げての喧嘩は度を超えて種と種の滅ぼし合いに発展しそうになった。

  そこでその他の種族が結束して彼らを止めるべくドワーフとエルフの境の地に大きな砦を作り上げた。それが此処、仲裁の地『グランメル』である。また、その争いが『種族会議』の始まりだとも言われている。

「ナザラの事は仕方がないでしょう。あれは自業自得です。ですが、ポーア様だけが国外追放の事は納得出来かねます。」


「‥‥我の事は心配せぬのだな。」

「貴方は監督不行き届きです。外交をナザラに任せるという時点で警戒すべき所です。それを怠った罰です。反省してください。」

「ううっ、それを言われては何も出ぬ。」


  子を叱るようなグラスとへこむディル。

 二人の関係は主従の関係を通り越し、端からみれば本当の親子のようである。

  それもその筈だ。ディルとグラスは、ディルが子供の頃からの付き合いなのだ。


 ―――元々、グラスはディルの父親「テル・ツェリア・ペルメス」の側近。

 その為、幼い頃より彼との付き合いは必然だったともいえる。ディルはグラスから剣術を教わった事もあり、彼等の仲は一重に『主従』と言える程浅くない。


「俺、裁長に直談判に行ってきます。」


  グラスが栽長の元へ向かうべく来た道を戻ろうとする。


「『待て』。それはならん!」


  ディルが言霊を発すると彼の蔓羽衣が大きく太く伸びドアの前にバリケードを作り上げグラスが行くのを塞ぐ。


「何故です!ポーア様の功績を考えればあのような不平極まる査定おかしいではないですか!!」


  グラスが怒鳴る。それも仕方が無いだろう。

 だが、あれで良いのだ。あれで‥‥。


「‥‥ここからはオフレコで頼む。『守れ』」


  再びディルが言霊を発すると薄い膜のような物に覆われた。この"言霊"という技は代々王として神木様に認められた者のみが使う事の出来る技。神木様から与えらた贈り物(ギフト)なのだ。

「こんな物まで使用して‥‥どういうつもりなのですか?」

「妹の、‥‥ポーアの国外追放を進言したのは"我"だ。」


「‥‥はっ?」


  それを聞いたグラスの周りの気温が恐ろしく低くなっていく。『圧』で窓がカタカタと音を鳴らして揺れ始める。


「‥‥説明をお願いします、ディル様。次第によっては‥‥。」


  背中に背負っている大きな大剣の柄へと右手を伸ばす。


「貴方を‥‥斬らせて頂きます。」


  グラスの濃厚な殺気。それは野生の猛獣をも射し殺せるのかと言える程の殺気であった。

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