Tea party in the forbidden library
更新が三日ぶり位になりました。
今回も引き続き書庫内での話です。
因みにタイトルは日本語で『禁書庫内でのお茶会』です。
「皆お待たせ!!」
ソフィを隠し部屋から連れてきた。
皆それぞれ、席で勉強してたり、喋っていた。その皆の姿勢が一斉に此方に集中する。
「ミレドとヒサカは知ってるだろうけど、ポーアとクーの為に改めて紹介する。彼女は此処の管理者兼、俺の相棒の『ソフィア』だ。
二人共、ソフィアと宜しくやってくれ。」
「‥‥ご紹介に上がりました。
書庫の管理を勤めております、ソフィアです。
以後は気軽に『ソフィ』とお呼びください。」
ソフィがスカートの裾を軽く両手でつまみ上げて会釈する。
「‥‥綺麗です。」
「まるで人形のよう、ですね。」
ポーアに同感。
―――もちろん、本音を話さなければ、である。
「大朏様何か考えましたか?」
「いえ何でも無いです‥‥。」
にこやかに微笑むソフィアだが、何故か『圧』を感じて全力で否定した。
「久しいのう、ソフ‥‥」
「姉様!!!!」
ミレドの挨拶が終わる前にヒサカが飛び出した。ソフィ目掛けてダイブ。
ガタンと座っていた椅子が倒れる。皆が危ないと言わんばかりにヒサカに吊られて椅子から立ち上がった。でもそんな心配は皆無である。
「『待て』」
ヒサカの体が急停止した。物理法則を無視した体勢を保ったまま微動打にしない。まあ、此処は書庫の中だからそういう物と思えばどうとも無い。要は(中の)ソフィアなら何でも出来る!!
「立ち話も何ですので椅子に座ってお話ししましょう、大朏様、皆様。」
「‥‥おうそうだな。」
「そうじゃの。」
「は、はい‥‥。」
「あ、あの。ひー様は‥‥?」
ソフィが席へ催促して皆を座らせようとする。
(ヒサカを除く)皆が席に付いたのを確認した後にーー
「『おすわり』」
次の号令を出すと時が動き出したように素早い動きで倒れた椅子を戻して着席した。
ヒサカの蔓の羽衣がゆらゆらと揺れる。不思議とその羽衣が犬の尻尾のように見える。
「良く出来ました。ヒサ。
ご褒美に撫でて差し上げましょう‥‥。」
「ありがとうございます!!」
ヒサカが舌を出してハアハアと言っている。もう、完全に飼い主に撫でられて喜ぶ犬だ‥‥。
でも、そんな二人の光景に心が和む。
丁寧に撫でるソフィア。撫でられて嬉しそうなヒサカキ。姉妹といえる二人だけの空間が広がる。
しばらく撫でたソフィアが、
「少々お待ち下さい。」
右手で指を鳴らす。
ボン!という煙が上がった後、カップが一式と。‥‥なんと、ケーキ(?)が現れた。
「何も出さずというのは失礼かと思いましたので、――紅茶とショートケーキを出しました。
どうぞ召し上がり下さい。大朏様もさあ‥‥」
ソフィアに施されるまま空いていた椅子に座る。目の前には皆と同様、紅茶にケーキと何だか貴族のお茶会のようである。席の順番は、俺、ソフィア、ヒサカキ、ポーア、クーシェ、そしてミレド。
この順番で大きく丸い形状の机を囲む。
再びソフィアが指を鳴らす。
すると、フォークにスプーン。
さらには、お好みでシロップとミルクが何も無い空間から出現。もう何でもアリな気がして来た。
「‥‥マジック?」
「いいえ、魔法ですよ。大朏様の記憶から再現させて頂きました。」
「え、それって‥‥」
「はい、記憶にある物でしたら、"何でも"出来ます。」
ソフィアのあり得ない力に驚愕。
記憶にある物なら何でも、という事は前世の料理も出せるという事だ。まさに、チート級。
流石に満腹にはならないと思うが味わいたい食べ物をもう一度食べれる事が出来るだけでも嬉しい。また今度お願いしてみよう。
フォークで目の前のショートケーキを一口台の大きさに切って口に入れる。
生クリームのなめらかな甘さ、そして、生地のスポンジの柔らかい感触が癖になる。甘みが口の中いっぱいに広がる。
記憶の中にあるショートケーキだ。
「‥‥美味しい。」
クーシェが一口。食べて驚いている。
他の皆も似たような反応。
「挨拶が‥‥途中に、なったのう、ソフィ。
久しぶりじゃのう、元気そうで何より!」
口いっぱいにショートケーキを詰め込んだミレドが続きの挨拶をする。口元にショートケーキのクリームが付いていて白髭のようになっている。
まだサンタクロースの時期にしては早いぞ。
「お久し振りです、ミレド様、そしてヒサカ。
二人との再会が叶った事に感謝します。」
「姉様!姉様!!」
「‥‥ヒサカはもう少し落ち着いて下さい。」
「えー、だって‥‥」
「ヒサカも立派な主がいらっしゃるのだから。その自覚を持ちなさい。主に恥を掻かせる訳には行かないでしょう‥‥。」
立派な事。は言っているのだが、ソフィアも妹世話を焼きながらでは人の事言えないと思う。
仲の良い姉妹という事が二人の様子からメチャクチャ伝わってくる。
「あ!そうでした。姉様、紹介します。私の主のポーちゃんです!」
「は、初めまして『ポーア』と申します。
以後お見知りおきを――。」
「はい、存じております。
ポーア様、―――宜しくお願いします。」
「こちらこそ。宜しくお願いします!」
二人が手を取り合う。ポーアとソフィア。
どうやら上手くやって行けそうで良かった。
次のショートケーキを一口食べる。今世では入手困難な代物。今の内に味わっておいた方が良い。思わず頬が弛むのが分かる。
ショートケーキはどちらかといえば《好きな分類》であるが、転生してからその美味しさが堅調に表れた気がする。
「こちら、クーシェ様です。」
流れるようにポーアがクーシェを紹介する。
「は、初めまして。」
「初めまして、炎狼の君クーシェ様。いつも大朏様がお世話になってます。」
ぺこりとソフィアがお辞儀する。それに吊られてクーシェもペコペコとお辞儀する。
性格は反対であるが、クーシェとソフィアその性根の部分は似ている。
――世話好きでおせっかい。
「お、オオヅキ、様?」
「わたくしも不思議に思っていました。そのオオヅキ様というのは『ネスク』様の事でしょうか?」
そういえばクーシェにもポーアにも言ってなかったっけ‥‥。―――ついでにヒサカも、か‥‥。
「失礼しました。『ネスク』様ですね。」
「あ!ネスク様の事でしたか。聞き馴染みが無いものでしたので‥‥。何故『オオヅキ』様なのですか?」
ソフィアが此方に言っても良いかというアイコンタクトを送ってくる。コクリと頷く。
説明はソフィアに任せよう。そっちの方が良いだろうな。
「主が話していないようですので私が話をさせていただきます。
主こと、ネスク様は《転生者》です。『大朏』という名は
――ネスク様がネスク様になる以前の名でございます。」
それを知らなかったクーシェ、ポーア、ヒサカが氷の彫像のように固まった。まあ、これが普通の反応である。(転生者を聞いて全く動じなかった人が一人だけいるが‥‥。)
ジト目で当の本人を見やる。
ショートケーキを一個、ぺろりと平らげた後、ソフィが出したショートケーキ(追加)を食べて、のんきにしている。
「はあ‥‥、大朏様。事前に皆様に自分の口からお話して戴きたかったです。」
「俺のせいかよっ!」
「はいそうです。」
ため息をこぼしたソフィアのナイフのように鋭い毒舌を受けて俺の心は軽く傷ついた。
姉に再会出来た事で暴走気味のヒサカキちゃん。姉妹の感動の再会、と思いきやの展開でした。